05


頭がぼうっとしてきた。酸素を求める喉がヒクヒクと痙攣する。
僅かに離れた隙間から息を吸うことも許されず、離れたと思えばすぐにぴったりと塞がれて身体中が酸欠状態だ。
口内を縦横に蠢く舌が逃げる己の舌を引き出しからめ取る。甘噛む様に軽く歯をたてられたそこからジンと甘い疼きが酸欠状態の脳を刺激し、つま先まで広がってゆく様だ。
押し返そうとしていたはずの指先は、すがるようにシャンクスのシャツをきゅっと掴んでいた。しかしそこからも力が抜けてだらりと垂れ下がる。目の奥でチカチカと白いランプが点滅して、ふわりと頭が、身体が軽くなったような気がした。
身体も頭もどこか別の所を漂っているようで気持ちがいい。くちゅくちゅと響く水音もどこか遠くから聞こえてくる音の様で。
そうっと閉じていた瞼が持ち上がり、ぼんやりとした視線のすぐ目の前にシャンクスの赤い瞳が見えた。
視線が重なった刹那、その瞳がすっと姿を替え、見下ろす瞳に捕らえられドクリと身体の中が動き出す。

「ん、んんっ、ンァ」

離れたい。でも離れたくない。
そんな風に思うのは、きっと酸欠で頭がおかしくなったからだ。
口内を貪られるこの行為が気持ち悪く無いのも、たぶん。

ヒュっと喉を鳴らしてシャンクスが息を飲んだ。ワザと卑猥な音を立てながら離れた唇の間に銀糸が光り、それが垂れてバギーの顎を濡らす。
解放されてもなお息をするのを忘れたかの様にトロンと瞳を潤ませてぼんやりとシャンクスを見遣るバギーの鼻先に口付け、シャツの間から手を滑り込ませた。かぷりと鼻先に歯をたてるとそれが気付けとなったのかバギーがパチパチと瞼を瞬かせる。目の前のシャンクスを認識した瞳にあっという間に生気が戻った。

「テメェ俺を殺す気かっ」
「そんな事ないけど?」
「ってどこ触ってんだコラ」
「ん?バギーの腰と脇腹」

ニコリ極上の笑みを浮かべながらするすると手を滑らせて素肌を軽くくすぐる。キスだけで上気した肌は手に吸い付く様で、触れるだけでもバギーは息を飲んだ。

「触るなっ」
「嫌だね」

するり胸元を掠めた指先が顎を掴み顔を上げさせる。

「次はちゃんと鼻で息しろよ?」

赤く濡れた唇を撫で、もう一度己のそれで蓋をして。
ちゃんと忠告しても息を潜め身体を硬くさせるバギーに内心で笑むとすぐに顔を離した。虚を衝かれた様にきょとんとするバギーをがっしりと抱え込むと鼻先が触れる程の距離まで顔を詰める。

「どうする?」
「イヤ、だ」

顔を逸らし、押し返そうとするバギーの力は、シャンクスにとって微々たるもので。

「なら、ちゃんと抵抗してみろよ」

そうじゃなきゃ、止めない。
意地の悪い笑顔を浮かべ、シャンクスは再度バギーの唇に喰らいついた。



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5.本気で嫌がらねぇと、やめないぜ?と抱き締めて離してくれない


本気で嫌がってもやめないくせに…