04


「で、ドコ行くつもりだ?」

ニコリ綺麗に微笑んだシャンクスがバギーを抱きあげた。身体を回して向かい合わせに膝の上に座らせる。

「ドコって」

そりゃお前の手の届かない所に決まってるだろう。
と言いたいところだが、広い様で狭い船の上じゃ逃げるのもタカが知れている。が、逃げない事には話しにならない。
どうにか逃げ道は無いものかと考えるものの、やはり腰にがっしりと巻き付いた腕が邪魔だった。それにバラバラになっての逃走も今し方無理だったことが実証されてしまったワケだし。
それにしても、コイツの執着には正直頭が下がる。何が楽しいのか今も気を抜くと腰の手がするすると脇腹を撫でようとするからそれをぴしゃりと叩いた。

「つーかさ、お前。そのワガママ何とかしろよ」

俺はお前のものになったつもりは無い。好きなようにする。
そう宣言するも、シャンクスはふぅんと鼻を鳴らして目を細めただけだ。
その人を繰った様な態度に無性に腹が立つ。
カッとして、力任せにシャンクスを押し返した。自分を支える腕が緩んだ隙に立ち上がり、走り去ろうとしたのだけれど。
それくらいで逃げ出せるならば、とっくに逃げられていた事くらい、分かっている。
と、あえなくシャンクスの膝の上に戻った挙句、腕を引かれたためにうっかりシャンクスの胸に顔をうずめてしまったバギーが舌を打った。
まったくもって腹が立つ。いい加減腹が立ちすぎて顔を上げたバギーは唇をへの字に曲げ、それでもまだシャンクスから逃げようとシャンクスの胸に手を付き押し返そうとしていて。

「分かってないな、バギー」

やれやれと肩をすくめたシャンクスの手がするりと背筋を撫で首の後ろを掴んだ。

「お前は、俺のなんだよ」

二ヤリと目の前でシャンクスの唇が形を変え、反論しようとした言葉がその唇に飲み込まれる。
慌てて塞ごうともその隙間から差し込まれる舌に蹂躙され、声も出なければ息も出来ない。

「ん、っンン」

後頭部を押さえ込まれた頭は動かす事も出来ず、寸分の隙もないくらいにぴったりと合わさったシャンクスの唇が吐息さえも飲み込んで。
ヒク付いていたたバギーの喉がしばらくしてコクリと上下する様を、シャンクスは目を細めて眺めていた。



→05

→main top


4.反論はさせねぇよ、と口を塞がれ息もできない


反論なんて出来るわけない…