03


はむ、と耳たぶを食まれる柔らかな感触にひゃぁと変な声が出た。
視界はまだ塞がれたままで、見えないからこそ変にそこに意識が集中してしまう。
軽く掠める様に耳たぶに触れるのはヤツの乾いた唇だろう。腰を抱く腕も先程より力が入っているのかぴったりと抱き寄せられ、背中にシャンクスを感じる。せめて視界を遮る手だけでもと両手で押しのけようとするのだが、それもなかなか上手くいかない。当然頭を振ったり身体を揺すったりしたくらいではシャンクスの腕は緩まる筈もなく、更にぎゅうと抱き寄せられてしまう。
っていうか。
ここに居ろとか自分だけ見ろとか、何でそんな事言われなきゃならないんだ。自分はしたい様にする。シャンクスに命令されるのは胸くそ悪くてしょうがない。

「テメェいいかげんにしろ」

いい加減放せアホバカふざけるな。
思いつく限りの悪態を吐きそう叫んだところで素直に聞くようなシャンクスでは無く、むしろ嫌がるバギーを楽しげに見ている風でもある。
甲板には他に何人もが日光浴をしていたはずなのに、誰もバギーを助けようとする者はない様で、バギーひとりが抱きすくめられてジタバタと手足を動かしている様子は端から見れば滑稽でしかない。
暴れるからムキになって抱き止めるのだとバギーも分かっているのだが、大人しくされるがままというのもどうかと思うし、それに、ここで止めなければ何時この腰に回った手が不穏な動きをするか分かったものじゃない。

「シャンクス」

滅多に呼ばない名前を呼んで身体を捩る。
すると何を勘違いしたのか何かを含ませるような低い声で「どうした?」と返したシャンクスがまたぱくりと耳たぶを食み、ついでにするりと首筋にそれが落ちてきた。

「って何しとんじゃコラっ」

ちゅうと首筋を吸われる感触に肩が震える。それを肯定としか捕らえられない目出度い頭のシャンクスが、この後何をしようとするのか、それを考えると恐ろしい。
こうなれば。

「バラバラ…」
「ダメだ」

ズキリ、肩口に走る痛み。赤く歯型が付いたであろうそこに、追い討ちをかける様にぬるりとした感触。
かろうじて切り離せた腕は、数十センチも飛ばないで捕らえられた様だ。
そのおかげで視界は戻ったのだけれど。

そろり。眼球だけを動かして背後を伺えば、ドコに行くつもりだ、とシャンクスが至極綺麗な笑顔で聞いてきた。



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3.誰が帰っていいと言った?と腕を掴まれ阻止される


腕っちゅーか身体ごとっちゅーか…