むしゃむしゃ、ごくん
「好きが、止まらないの」
ああ、今までもそうだった。
好きになってしまったらもう止まらなくて、もっともっと好きになる。
でも。
「食べたいのも止まらないの」
私にとって恋は食欲だった。
この人を頭のてっぺんから爪の先まで食べてみたい。
血の通った肉も、温かな内臓も、硬い骨までみんな私の胃の中に入れてみたい。
そう思いながら恋をした。
皮肉なことに、今まで好きになった男たちは皆死にたがりやで、出会っても一年足らずで自殺した。
彼らは皆、僕を食べて、と遺言を残して逝った。
だから私は、まだ温かい彼らの体を鋸とナイフで切り取って、美味しくなるように料理して、涙を流して貪った。
殺してはいない。
ただ食べただけ。
体を重ねるのよりも近く私達は交わっているのに、何も満たされない。
食欲も、この心も。
私が己の虚無を嘆いているのに、また男は死んでしまった。
大好きだったのに。
君でもう、六人目。
とても悲しい。寂しい。切ない。
まるでこの身が引き裂かれるくらい、心が痛い。
だけどね。
何もかも食欲に勝てるものはないのよ。
「いただきます」
彼の肉は温かい。
彼の血は芳しい。
彼の骨は美しい。
私の胃の中に、これらを入れられることが何よりも幸福。
言葉通り、私は彼らを平らげた。
恍惚と嫌悪と、悲しみの涙を流している、惨めな私。
いつでも口は血で汚れているの。
ねえ、誰か罪だと言ってよ。
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