うだるような暑さ。
後二日で夏休み。

「……っだあああああ!」


さあ、帰ろう。
友人の南とそんな話をしていたその時。
突然、光が長めの茶髪を掻きむしりながらあたしの所に来た。
右耳のピアスがしゃらりと揺れる。
「うっせえよ光!!」
「いや、お前がうるさい」
隣で南が叫ぶ。声がでかい。
……黙ってれば美人なのに、南は口が悪い。
「何でそんな騒いでんだよお前」
「うううぅ……数学と化学と古典赤点だった」
「ぶははは、ざまあ」
「いや、笑って済ませちゃ駄目でしょ!そこは!」

光は授業中にカブトムシで遊んでるからそんなことになるんだよ!
今時小学生もそんなことしないよ!

しかし、リアルに泣きそうな光を見て、
「馬鹿だなー、お前。あたしみたいに、ちゃんとべんきょーすりゃいいんだよ」
と、南が笑った。

いや、南も言うほど成績良くないし!
あと一歩であんたも赤点だったから!
あたしは勿論学年一位だったけど!

「おーい、みんなー」
「お、ゆゆ」

あたしがそろそろツッコミ疲れたその時、友人その二・ゆゆが手を振りながら走ってきた。
可愛いふわふわセミロングが風になびく。だが、男だ。

「ねぇねぇ、良いお知らせがあるんだー」
「何だよ」
「留年決定しましたー!」

…………。

「何でだよばかああぁっ!」
「早すぎるだろおおぉ」
「ぶっはははははは!!」

早いにも程があるだろ!
何で夏休み前に留年決まるんだよ!

「でもさ、一年多く学校にいられるんだよ?何か楽しいじゃん」
「あーなるほど」
「留年にはそういう利点がある訳だ」

デメリットの方がでかいだろ!よく考えろお馬鹿共!

……なにこれ。
あたしの周り馬鹿ばっかり。
真面目にやってるあたしが一番馬鹿じゃん。

「……あああああぁぁ!!」

何か腹立ってきた!
あたしだって馬鹿やりたいのに!

駆け出したら止まらなかった。
気付いたら近くの水道にあったホースを皆の方に向けていた。
そして、蛇口を目一杯捻る。

「うわあっ!冷てー!」
「おいっ、いきなり何すんだ馬鹿っ!」
「りこちゃんどうしちゃったの!」
「うっせー!あたしだって馬鹿やりたいんじゃー!」

そんなこんなで結局みんなびしょ濡れになり、思いっきり転んだせいであたしの眼鏡のレンズが抜け、先生に見つかり二時間説教された。

「お前がこんなことするとは思わなかったよ」
とか言われたけど、あたし的には結果オーライ。
いい子でいるより、お馬鹿な方が楽しいじゃん?

青春ってやつはさ。


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0806 輝夜さまへ





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