恋色糸電話 衣織→ゆま

久しぶりに、虹を見たその日の夕方。
俺は中学の同級生だった、高見里に電話をした。
そいつは変わった女子だが、俺の悩みを解決出来るだろうと思ったからだ。

『もしもし、高見里です』
「あ、俺。衣織」
『あら、久し振りですね』
最初は堅かった高見里の口調が、少しほぐれた。
『珍しいですね、君が電話なんて。どうしたんです?』
「いや、ちょっと相談」
『私でいいんですか?』
「うん。……ていうか、お前じゃないと無理かも」
『ならいいですが。で、その相談とは』
俺はすごく躊躇いながら、まず確認した。
「……お前、その、腐女子ってやつなんだよな?」
『そうですよ。それが何か?』
「いや、確認……」
やっぱり電話しなければよかった、とか思いながら俺は話すことにした。

「あのさ……俺、男に告られた……んだけど」
『すぐ了承の返事をしなさい』
「即答かよ」

…………。
予想通り、俺の心を叩き割る回答だった。
『冗談ですよ。でも、私に助言を求めるということは、もう返事は決まっているのでしょう?』
「……う」
図星だった。
変な所で勘が良いのだ、高見里という女は。
『君はその後どうすれば良いか、が聞きたいのでしょう』
「……そうです」
携帯の向こう側で、高見里の笑い声が聞こえた。
よく分からないけど、何か恥ずかしい。
顔が赤くなってきた。
『何も聞くようなことは無いでしょう。恋人なのだから』
「え、いや、あの」
『愛を語らい、キスをすればいいのです。愛に性別など関係ありません。世間一般に認知されている理想の恋人になるべく、日々を過ごせば良いだけでしょう』
「そ、そういうのと、違くて」
恋人って。
俺達はそう見られてるんでしょうか。
ていうか、将来的には俺達もそんなことするんでしょうか。
『赤面している場合ではないですよ』
「してねえよっ!!」
本当はしてたけど。
『まあ、詭弁はこれくらいにしましょうか』
「詭弁だったのかよ……」
淡々と俺の心にダメージを与えてくる。
絶対わざとだ。

『結局のところ、沖島衣織、君次第なのですよ』
「え?」

うふふ、という妖しい笑いを残して高見里は勝手に電話を切った。
通話が終了したことを告げる電子音が虚しく響く。
ため息。
「俺次第……ねえ」
その理論で行くと、今まで通りでいいってことかな。
少し安心した俺は、そのままベッドの上で眠りに落ちた。






----------------------------------
旧拍手ログ
突然変異ラヴァーズの番外編です




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -