ここにはだれもいない///


夢を見た。鮮やかな日差しの眩しい夢だった。
まどろんでいる私の頭を、無骨で不慣れで、それでいて暖かい手が優しく撫でる。
そんなところで寝てると風邪をひくぞ。
またまたご冗談。この私が風邪をひくなんてことはないのです。
低くて耳に良く馴染むその声にまどろんだままふふふっと笑っていると、ぽすりとお腹のあたりに感触が。
ゆるゆると触れればそれは柔らかくて暖かい塊。
ご主人が風邪をひかないようにあっためるにゃー。
ああ、そりゃいいな。じゃあちょっくら俺も。
おやめくださいおやめください、あなたは彼より大きいのだから、あーあー、おもいおもい。

おもいおもい。
でも、なんてあたたかい。







目が覚めると同時、目から雫がこぼれた。

「…… 」

暖かさも賑やかさも、なにもない。
ただ風の冷たさと森の静けさだけ。
なんて非情でなんて暖かい夢だったろうか。

ここにはだれもいない。


遠く、駆ける音がした気がして、トトは飛び出したのだった。

mae  tugi
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