孤独の安息地///


 森の奥深くへと足を踏み入れた調査兵団は天井を見上げていた。
 そこに作られてる小さな生活空間に気がつき、リヴァイたちはさっと装置を機動させた。一瞬で巨木のてっぺん付近まで飛び上がり、入口らしき場所からそろそろと中を伺う。

「……誰もいねぇな。」
「ここに住んでたんだろうね。でも、どこに行ったんだろう?」

 無遠慮に室内を捜索するハンジをリヴァイは後ろからみているだけであった。細いがしなやかな木を組み合わせた床は、粗末なものだが、安全の面でいえばこれ以上のものはない。
 しかしあまり大人数がここに乗ることは想定されていないだろうと判断し、リヴァイとハンジ以外は周囲の警戒へと移っていた。

「何かめぼしいものはあったかい。」
「ないね。最低限の生活ができるだけの家って感じだ。でも、最良の選択をしてるよ。」

 やってきたエルヴィンにハンジが答えた。

「この高さなら並みの巨人は登っても来れない。大型の巨人は木が邪魔で多くは入ってこない。木を登ってくる巨人がいれば話は別だけど、今のところ確認されてないから…… 危険は限りなく低いと考えていいだろうね。」
「だろうね…… しかし、こんなところにどうして……。」
「おい、エルヴィン、ハンジ。」

 リヴァイが部屋の片隅へと歩を進める。部屋の角は大木と繋がっている。そして大木には虚があり、その空洞部分が何者かの寝床になっているのは明白であった。

「手馴れてるな。」
「野宿に? なかなかいないよ、そんな人。」
「干し草をひいて、ありあませの布を乗せてるのか。ここで一人ふたりが生活する分には十分だろうな…… まて、この布……。」
「あぁ、荷馬車用の丈夫なやつだ。だが盗まれたものじゃねぇ。この汚れ、血だ。」

 こくりとハンジがつばを飲む。そんな彼(あるいは彼女)の様子など気にすることもなく、リヴァイは奥にひっそりと置かれている小物を手にする。

「あったぜ、立体機動装置だ。」
「間違いないな…… 悪魔の噂は本物だ。」
「他にも数台。個数は一致するな?」
「あぁ。」

 エルヴィンが狭そうに虚の奥を覗き込む。ひとつ、ふたつ。殆ど壊れている立体機動装置を数えていく。みっつ、よっつ。殆ど原型を残していないものもあったが、見慣れた彼らには大した問題ではなかった。いつつ、むっつ……。

「悪魔の正体みたり、ってね。あとはここの住民が……いまはどこにいるかだね。」

 ハンジが言う。

「遠くにゃ行ってないだろう。だが、なぜいない?」

 外は太陽が降り注いでいる。まだ昼間なのだ。巨人の活動時間で、こんな安全圏に居住を構えている存在が容易く降りるとは彼らには考えられなかった。

 彼らは知らない。ここに住んでいる存在が、少しばかり事情の異なるものであることを。

 外がざわめく。大きな足音。悲鳴が彼らの耳に届いた。

mae  tugi
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