それをいつも探していた///

 ごろりと寝そべったのは崖の上。眼下には切り立ったがけと… その崖にそって続く、細い道があった。

 がらがらがらと荷台が音を立てて走り去っていくのを見下ろしながら、トトは陽を浴びる。その姿を見つけた人々は怯えたが、先導するリカルドが大丈夫だというので皆こわごわとした様子ではあったがその下を通り抜けていった。



「ま、またいるぞあそこ…」
「やだな、襲われたら」

 がらがらがら。荷台に座る男たちの声もはっきりと聞こえる。すんと鼻を掠めた匂いから、その荷台に食料品が乗っているのは間違いがなかった。
 あまり驚かせるのも得策ではないとわかっているので、トトは身動ぎ一つせずにその姿が小さくなるのを眺めていた。ポポは少し、早足だった。

 今日もなにもなく、この険しい道を彼らは通っていった。

 レタラ村に続く数少ない通りが、ちょうど彼女が見ていた場所である。あの食料品が届かないと、村の人々はたちまちに苦労を強いられることとなる。リカルドがふと、そこを見張っておいてくれと言われてからすでに数日が経過していた。




 村は賑わっていた。やってきた荷物が無事だったことに息をつきながら、村人たちへと食料を届ける。今日はあれが新鮮だ、だとか。そんなことを話しながら。

「ああ、ハンターさん。」

 やってきたリカルドに荷を運んだ男が声をかけた。おお、と手を挙げたリカルドに「よければ」とあまり多くはない荷物を差し出した。せっかくだからと彼がそれを買ったのを見てから、そういえば、ともうひとりの男が渋い声を上げる。

「あの通り、どうにかならないのか。」
「どうにかって?」
「…あれだよ、あれ。ティガレックスさ。」
「あぁ。首にでっかい傷のあるティガレックス。 …通るたびにいて、ハラハラする。」

 間違いようもなく見知ったティガレックス… トトのことだとリカルドとハンはぴんとくる。その通りにいるように言ったのは自分であったし、それに、首周りにひどい傷があるようなティガレックスはそうそう多くないだろう。

「襲われでもしたか?」
「いや、何もしてこなかったよ。」
「じゃあほっといてやれ。あいつは… あいつはそんなに凶暴じゃあない。」

 だが、と渋る男たちにリカルドがぽんと肩を叩く。

「何度かここいらでうろついてるとあいつにあったよ。首に傷のある。」
「じゃあここらに住んでるのか、あれ。」
「ああ。 他のティガレックスと違ってやけに大人しくてな。多分、お前たちが何もしなきゃ近寄っても襲ってこないぜ。変わった奴だからな。むしろ餌でもやったほうが喜んだりして、な。」
「おいおい、ハンターさん、そうは言ってもありゃティガレックスだぜ?」

 ちょいとでも機嫌を損ねれば、こちらの命が危うい。

「…ま、それもそうだな。だがそんなに気にするなって。なんかあれば俺が行くよ。」
「ああ、そうしてくれ。」

 肩をすくめたリカルドに男たちは頼りにしてるよ、と言った。彼らは時折街に行くから、このリカルドという一見いい加減で頼りなく思える男のことを多少なりと知っていたのだ。村の人々は「そんな男にそんな活躍が出来るとは思わんけどね」とからからと笑う。あまりに可笑しそうに笑うものだから、リカルドも「つめてーなぁ」とからりと声を上げて笑った。




 トトはすこし離れた丘の上から、そんな声を聞いて微睡んでいるのだった。



mae  tugi
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