閑話:誰かの旅行記///

なんと広いことかとつくづく思いました。
なんと自身の小さなことかと思いました。

草原を立ち去り、新緑深い森を横切りました。
桃色の牙獣を見るのは初めてで、少し遊んでしまいましたが…二度とあれにちょっかいをかけることはありません。
あんな気分が悪くなる思いは懲り懲りです。小さいのも大きいのも、色違いも嫌いです。
体を洗うために飛び込んだ川の水はなんとも心地よいものでした。
何となくその川沿いに移動すると赤と緑の番いが仲睦まじく湖で遊んでおりました。
あまり夫婦の邪魔をしては悪いとそっと通り抜けたのですが…生憎と目立つ巨体なもので驚かせてしまいました。
突然火球を飛ばされるのは勘弁願いたいですね。
あちこちに燃え移ったりと、周囲が少しばかり賑わいでいました。

足早に抜け、山を超えると、徐々に緑が減っていくのです。
段々と気温が熱くなってきて、やがて周りが砂だらけで、太陽がかんかんと照りつける。
今までが正反対とも言うべき極寒の山にいましたから、急激な気温変化に体がついていけるものかという心配もありましたが。
しかし、大きな一角やら二角やらに追いかけられて…その時に杞憂だったとわかりました。
存外この体は無駄に大きいばかりでもないようです。こうして冬から夏へと走り抜けても、多少の体調不良さえないのですから。
一角やら二角やら、砂を泳ぐ魚やらから逃げ込んだ洞窟の湖でも、これまた大きい鮫のような魚が泳いでますし。
当面こちらの方に来る気力はないというものです。
ああ、でも。
ぽつんと咲いている花を見つけたときは、少し嬉しくなりました。あの子にも見せてあげたかった。

巨大な砂丘をいくつか乗り越えても、まだまだ余裕がありました。
やがて足元の柔らかな砂がごつごつとした硬い地面へと変わっていきました。
周囲は照りつける太陽よりも熱く、一瞬、太陽そのものが近くにあるのかと思うほどでした。
足元の黒々とした岩に幾千もの赤い筋が走っているのです。崩壊した岩が煌々と熱を発する溶岩へと溶け込んでいくのがなんとも…恐ろしかったですね。
あれに落ちてはさすがの私でもひとたまりもありませんから。
遠くに黒い同胞を見ました。しかし、まだ私のほうが背が高かったですね。
そんな同胞も、この環境に最適な巨大な岩の如き竜に蹴散らかされていましたが。
全く、ビームを打てるなんて反則です。

喉も乾いてきたので、早々に灼熱の山を降りました。
水辺で潤してから、その水辺から鬱蒼とした森へと続く道があると気がつきました。
次はそちらへと足を運びことにしたのでした。



mae  tugi
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