足跡二つ続く小道///


旦那、と舌っ足らずな猫が呼ぶ。

「にゃんでリカルドのだんにゃ、こんな辺鄙な村に来たにゃ?」
「それはお前もだろうが。」
「僕はいいにゃ。元々こっちに用があったんだにゃ」
「俺のオトモになることか?」
「それもあるにゃ」
「も?」
「…ひ、秘密だにゃー」
「そうかいそうかい」

久方ぶりにリカルドが外に出てきたと、その日は朝からもちきりだった。
当の本人は素知らぬ顔で村近くに作ってある畑へと足を運ぶ。早朝からリカルド待ちをしていたハンがその後ろをついて歩いていた。
近くといっても、暫くは歩く。針葉樹が青がかった鋭い葉を茂らせている小道を一人と一匹が歩きながらの何気ない会話だった。

「あ、そ、それで…だんにゃは?」
「…あー…ハンターがいなし、仕事があるって聞いてな」
「にゃ?」
「それでかな」

ゆらりと視線を泳がせたことをハンは見逃さなかった。嘘ではないが、それだけでないとわかってしまったが、それを追求するほどの勇気はない。ただ、ふと湧き上がった疑問を投げかけるにとどめた。

「リカルドのだんにゃほどのハンターでも、仕事なくなるものなのにゃ?」
「…うっせー猫助。」

道中の会話はそれっきりだった。




畑はそこそこ立派で、撓わというほどではないがある程度の植物が冬だというのに健気に育っていた。周囲には寒さにも負けずいくらかの昆虫が飛び交っており、ハンは何気なくそんな虫を目で追っていた。リカルドがそんなハンに目もくれず、黙々と薬草の採取を続けながら言った。

「遊んでる暇があるなら手伝ってくれや」
「…ただ働きはしない主義なんだにゃー」

ぴょん、と軽い動作で立ち上がり、ハンはリカルドのすぐそばまで走り寄る。畑の、他の花を踏まないように気をつけながら器用に避けながら。それから、腰を伸ばすように大きく体を動かすリカルドに多少の期待をこめて見上げれば、舌打ちをされる。

「めしくらいなら食わせてやるって」
「仕方ないにゃー…薬草集めるにゃ?」
「根は残して毟れよ」
「任せるにゃー」

まずはこれでもいいかと器用に薬草をちぎりとりながら、ハンは思ったのだった。


mae  tugi
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