次の晴天を待ちわびる///

レタラ村からそう遠くない、或いはレタラ村をも含めた一帯の些細な話。
相変わらず厳しい冬が終りを見せるどころか、その勢いを強めるころ。
ちょうどレタラ村では何度となく猫が戸を叩きだすより少し前の時期のことだった。

奇妙に静かで、逸そ静寂が響いているかのような山のこと。
あちらもこちらも同じ色ばかりで、ともすれば距離感はおろか、自身の居場所さえ見失いそうなその場所において、今日ばかりはその様子が違ったのだ。
その日、偶然にも軽装備だったことが運の尽きかとため息をつきながらも、彼はその異変を追い続けた。点々と浮かぶかのような赤色は、どこまでもどこまでも続いており、まるで道しるべのごとくだったのだ。

印の横に並ぶようにして足跡を残しながら歩き進めて、やがて遠くの洞穴が目に入る。誘い込まれるようにして暗がりへと息を殺して足を踏み入れる。漆黒の奥底から緩やかに頬を撫でる風に、冷たさ以外のなにかを感じ、鳥肌が立つのを感じた。

そのまま手探りに足を動かし、やがて、息をのんだ。




はっと目を覚ます。

締め切った窓の隙間からうっすらと光が入り込んでいる。
いつの間にか蝋燭の火は沈黙していた。
ぼんやりと薄暗い天井の木目へと視線を這わせる。
それから、すっと息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。
どんどんどん、と激しくドアが叩かれ、情けないことに肩がぎくりと揺れる。
外から聞こえてきた声にやれやれ今日も来たのかとリカルドは立ち上がり、扉を開けた。




雪山。暗い洞穴の最奥。
手負いの巨体が、身じろぐこともなくこちらを見ていた。
敵意がまったくないその姿の珍しさと、視線に感じた曖昧な意図に釣られるようにして、近づいた。怪我に触れないように気を使いながら冷たい鱗をなぞる様に頭を撫でる。
一瞬、目を丸くし、ゆっくりと体の緊張を解したのが指先から伝わる。細まった、まるで笑っているかのような目がやけに人らしく感じ、直ぐにポーチから薬をいくつか取り出した。
怪我が多く、納品するはずだった材料も注ぎ込んでしまったが……ハンターには微塵の後悔もなく。やがて眠り込んでしまったティガレックスの頭をもう一度撫でて立ち去ったのだった。




mae  tugi
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