雪山の女王///


「ぐる…」

寒さ厳しい雪山。あたり一面は白一色だ。
ただ、唯一、彼女を除いて。

「がるる…」

彼女はトト。
ある日牛乳風呂に溺れ、気がついたらこの世界に誕生していた。
そんな経歴を持つ雪山の王者たる轟竜、ティガレックスである。

「がふ…」

そして彼女、トトは現在、足元を見て困惑している真っ最中であった。
腹を空かせた彼女のその視線の先には…半分ほど雪に埋れた何かが横たわっていた。
軽く軽く、力を加減してその逞しい腕でつつく。…反応は無い。

「がるる…(困ったなぁ…)」

指先から微かに温かさが伝わる。
まだ生きてはいるようだ。
とはいえ、ここは寒く厳しい、雪山。
放っておけばやがては凍死することだろう。
それが例え、人よりは温かな毛皮を纏うアイルーであっても、だ。
そうでなくとも、食べるものに乏しいここでは、遠くから様子を伺っているあのドスギアノスたちの餌になるだろう。

「ぎゃあ」

視線に気がついたのか、ドスギアノスが一声。トトは無視して、アイルーを傷つけないように、鋭く強靭な口先に咥えた。
うっかりと噛み潰さないように、なるべく身につけている物を引っ掛けるようにしながら。
それから、勢いよく空へと飛び上がる。
飛ぶのはあまり得意ではないが、まぁ、住み着いている洞穴まではこれが早い。
振動では未だ、アイルーは目を覚まさない。
背後からはドスギアノスの悔しそうな声が聞こえた。




mae  tugi
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