小心者の絶対強者///


その時のトトの心境といったら、そこの君ちょっと落ち着いてと言わざるを得ないほどだったことだろう。
言葉でのコミュニケーションにどれだけ依存していたかとしみじみと痛感しながら、どうにかこうにか目標を達成できたその喜びに、トトはいっそ浮かれていた。
尻尾をぶんぶんと振り回しながら(当然のように周囲のランポスにヒットし、盛大に宙を舞っていた)スキップでもするかのような軽やかな足取りで(ただし足音はひどく重たく軽やかさの欠片もない)見たこともない森林帯を闊歩していた。
鼻歌(本人が思っているだけで、周りからすれば恐ろしい咆哮にも聞こえるが)まで歌い始める始末で、その目標に彼女がどれほどの価値を見出していたかは言うまでもない様子だ。

偶然たどり着いた水辺で、思い出したように喉を潤す。
先にそこにいたケルビは恐れをなして素早く逃げていってしまった。
その怯えた表情を見てしまい、不意に少し前のことを思い出す。唐突に思いこされた不安と恐怖で体が芯まで凍ったかのような感覚に襲われた。
と、同時にやはり安堵も湧き上がる。
確かにあのアイルーたちは、今しがた逃げおおせたケルビの様に恐怖を前面に押し出していた。だが、勇敢にも立ち向かおうとしていた。その寸前まで不穏な空気を醸していたのはなんだったのかと言いたい気持ちもあったが、トトはあの時、まさしく美しき友情と心でつぶやいていたのだった。
そして、彼らは確かに恐怖に打ち勝っていたのだ。

足早にトトが立ち去ったのは、何もこのように浮かれていたことばかりが理由ではない。本人的には空気を読んだだけでもあり、そして、やはり恐れがあったのだ。
見たくないものを見る必要もないし、見ないためにも、ただ気分が良かったと言い訳をしたに過ぎないことに、冷えた頭はたどり着いてしまい、深いため息が周囲の空気を揺らした。

最初は感謝と恩返しのつもりが、今ではどうか。
ただのお節介と反省に苛まれているその姿はどう見ても絶対強者あるまじき様子だったと、もしも誰かが見ていたならば後に語ることだろう。


mae  tugi
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