色鮮やかな邂逅///


「…お、オリー…」
「ギル!お前のことにゃからと思って来てみれば!やっぱりだにゃー!」

さぁっと顔を青くしたハンを庇うように、ギルがオリーの前に立つ。
じとりとギルより少しだけ小さいオリーが睨みあげた。
オリーの背後からは数匹、昨日も見かけたアイルーたちが姿を現す。
その誰もが、ハンに対して冷たい言葉を投げかけたアイルーだった。

「…ギル、そこをどくにゃぁ。俺たちの縄張りにのうのうと居座るよそ者を追い返さないといけないにゃ」

オリーのその言葉と、手にしているナイフに気がつきハンはますます顔を青くし、地面に置いた荷物もそのままに後ずさる。しかし、後ろは滔々と川が流れている。深くはないが、あまり泳ぎに自身がないハンは立ち止まるを得なかった。
何より、自分のために立ちふさがってくれているギルバートを見捨てるわけにはいかなかった。

「ハンは昨日まで、仲間だったにゃぁ」
「仲間?そのゴクツブシがかにゃ!?」

だからやめろ、と言いたげなギルバートの言葉をオリーは笑い飛ばすように声を荒げる。

「ギルは優しいにゃ……そうにゃ、ハン、お前のせいでそのギルが怪我をしたんだにゃぁ。」

ぎろりと睨む標的をハンに変える。鋭い眼光に、ぎくりと冷や汗が流れる。
後ろに控えていたアイルーたちも各々が手に武器を持って、立っていた。
そうだそうだと頷く彼らに、ギルはハンを振り向いた。

「…ハン」
「にゃ…ギル、いいにゃ…十分だにゃ…」

これ以上はかばえないと、ギルバートは視線を落とした。
これ以上自分に味方してはいけないと、ハンは力なく首を振った。

「い、いますぐ出てくにゃ。だから、見逃して欲しいにゃ」
「だめにゃ。」
「…にゃ、にゃんで…」
「見逃して欲しかったら、かわりに荷物を全部おいていくにゃぁ。もともと、お前のものじゃないにゃ!集めたのも作ったのも、俺たちにゃ!それを持ってこうだにゃんて、図々しいにゃ!!」
「っ…」
「いうことが聞けにゃいなら…どうにゃるかわかってるにゃ?」

じりじりと詰め寄るオリーたちに、ハンは抵抗する術を持たなかった。
なけなしの持ち物を全てオリーに差し出した。
流石にそれは、とギルが止めようとしたのを、ハンは目で断った。
釈然としない面持ちのギルに対して、オリーはひどく満足げな表情だった。

「にゃ。さっさと消えるにゃ。」

吐き捨てるようにそういって、オリーたちは森へと戻っていく。
ギルバートがためらいがちに、その列に続いて、立ち尽くすハンを振り返った。

「…!!…は、ハン!!!」
「にゃ?」

声に弾かれるように顔をあげたハンは、ぎょっと目を見開いたギルバートを見た。
ギルバートの声につられて、帰ろうとしていたアイルーたちも振り返る。
その誰もが息を呑み、驚愕に目を丸くした。



ぶわりと強い風が吹く。

唐突に自分の頭上が暗く陰り、太陽の熱が遮られた。

ずん、と重い揺れとともに、ばしゃんと激しい水音が背後から聞こえた。

振り返れば、緑と青、それから橙のコントラストに目が眩んだ。



mae  tugi
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