Merry Mary 7///

 揚羽とギャリーがイヴとメアリーを待つが、二人が戻ってくることはない。何かあったのではないかと心配と焦燥をにじませながら、手をキツく握り締めた。

「やっぱり二人だけで行かせるんじゃなかった…!」

 ギャリーの声だけが薄暗い廊下に響く。目の前の障害は相変わらずそびえ立ったままであった。このまま、イヴたちを待っていても帰ってこないだろうと判断を下した揚羽は茨に背を向ける。

「……もう一度、部屋を見てくる。」
「え? ……そう、ね……なにか手がかりでもあればいいけど……。」

 できれば行きたくないわね、とギャリーが言う。揚羽も苦々しい表情で、そうだな、と小さく返事をした。



 二人は渋々と、少し前にも入った部屋へと入っていく。
 正面に飾られている絵も、周囲に並んでいる人形も、天井から吊り下げられてる人形も。どれもこれも不気味としかいいようがなかった。
 青い人形の赤い目が、常にこちらを見ている。そんな錯覚に囚われながら、二人は室内を捜索していく。

「なにかあった?」
「いいや、本がいくらかあるだけだ。」
「そうよねぇ……ん?」
「どうした。」

 本棚の本をぺらぺらとめくっていた揚羽にギャリーが問いかけるが、首を振るだけであった。
 ふと、ギャリーが声を上げる。揚羽がつられるようにそちらを見ると、ギャリーの見ていた本棚がするすると動いていったではないか。
 二人が驚きで目を見合わせているあいだに、本棚はすっかりと横へと移動しており、目の前にはぽっかりと穴があいていた。

「……なんでさっき気がつかなかったのかしら?」

 揚羽はつい、「気がつかないようにされていたんじゃないか」と言いたくなってしまった。しかし根拠のないセリフを吐いて、互いを混乱させるような馬鹿な真似をするような人間でもない。こくりとその言葉を飲み込み、その先に進もうとギャリーへ近寄った。

「まぁいいわね。」
「あぁ。」

 壁に空いた穴を男二人がくぐり抜ける。抜けた先には広い部屋が待ち受けていた。



mae  tugi
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