Merry Mary 4///

「なぁんもないね。」
「あぁ、ないなぁ」

廊下にはぽつりと絵画。
少し行った先には花瓶。
ただそれだけがある紫の廊下。
なにかを探すといっても、探すなにかもない。

「んーあっちのほう、行ってみよう?」
「あぁ、そうだな」

そうして進んだ先の扉には無情にも鍵がかかっていた。
自分たちでは進むことができない。
こじ開けることもできそうになく、唯一残った扉へと歩を進めた。

メアリーが少しばかり早足で進む。
もうすぐ手が届くところまで扉に近づいたそのときだった。

「わっ!?」
「おっと…」

扉が開き、その先から出てきた誰かとメアリーがぶつかった。
メアリーがよろけ、その背後にいた揚羽がそれを支える。
対してもう一人のぶつかったほうへと視線を向けた。
全体として、赤色を彷彿とさせる少女がきょとりと目を丸くしている。
その少女はメアリーと同じように青を彷彿とさせる青年に支えられた。

「大丈夫かい、メアリー」
「う、うん」
「…よかった。イヴも大丈夫?」
「うん」


イヴと呼ばれた少女がこくりと頷いた。
くるりと揚羽の背後に隠れたメアリーがそろりと二人を伺った。
蒼い青年がはっと、こちらを向き、声を上げた。

「あ…ねぇ、アナタたち…もしかして、美術館にいた人かしら?」
「あ……!」
「ん…?ということは君たちもか」
「やっぱり……アタシはギャリー。こっちの子はイヴっていうの」

その顔を幾分か明るくさせて、蒼い彼はギャリーと名乗る。
その背後にいた少女…イヴもギャリーの横に並んだ。
ギャリーは嬉しそうにしているが、メアリーは一瞬、なにか考えるように視線を彷徨わせる。
メアリーを後ろにしている揚羽は当然、他の二人もその様子を見ることはできなかったが。

「アタシたちも美術館にいたのに、気がついたらワケのわかんない場所に迷い込んじゃってて…」
「そうか…君もか…私も似たようなものだ。あぁ、私は揚羽だ。」
「オッケー、揚羽ね。よろしく。それで、なんとか二人で出口を探してる訳なんだけど…あなたたちも?」
「あぁ。この子…メアリーと少し前に会ってね。」
「わ…わたしも、探してたの……外に出たくて…それで…」

名前の服をつかみながら、メアリーは少し悲しいような怯えるような表情でそういった。
その言葉にギャリーはといえば、ますます笑顔を深める。

「あぁ、やっぱり!ねぇ、よかったら…一緒に行かない?」
「ふむ…」
「ここ、変な生き物とか結構いるみたいで…」
「変な生き物?」
「えぇ。揚羽は会わなかった?」
「いや…まだ何も遭遇していないな」
「そう……ま、まぁ、そういうことだから…一緒に行きましょ?みんなでいたほうが心強いし」
「…まぁ、それもそうだな。」
「うん、行く…!」

#name2#がちらりと背後にいるメアリーを見れば、にこりと笑う彼女が見えた。
ギャリーもじゃあ決まりね!と嬉しそうに手を叩いた。
改めてよろしく、と揚羽が答えた。

「えーと、揚羽と…メアリーよね?よろしくね」
「あぁ、よろしく」
「うん!」

そっとメアリーが揚羽の服から手を離し、とてとてとイヴの前へと移動する。
おどおどとどこか緊張した面持ちで、メアリーがよろしく、と言い、イヴもそれに答えるように微笑んだ。

「よーし、それじゃあ仲間も増えたことだし…はりきって行くわよ!」
「おー!」

ギャリーとメアリーの明るい声が紫の廊下に響く。
二人のその様子に揚羽はほっと息をついた。


(辛くなったらすぐ言うんだぞ)
(はーい)
(ギャリー、お前もな)
(えっ……は、はぁーい)
(揚羽もね!)
(そうよ!年長なんだから!)
(…歳と言いたいのかお前ら…)
(え、えーっと…)


mae  tugi
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