Merry Mary 1///

曇り空。
灰色の空はどんよりと、今にも落ちそうなほどに重苦しい。
太陽の明るさは姿を隠しているためか、館内はどことなく薄暗く思えた。

ワイズ・ゲルテナ。
とある芸術家の名だ。
全ての人が名を聞いたことがあるほどに有名なわけではない。
しかし、その個性的で独特な作品群は熱狂的なファンを作り出し、
今なおその人気が衰えることはない。

この小さくひっそりとした美術館で、そのワイズ・ゲルテナ展が開催されている。

追い続けている熱狂的なファン。
偶然しってどことなく魅了されてしまった人たち。
ただぼんやりとこの展覧会を訪れた者。

それぞれが思い思いにここへと足を運んでいた。

白にも見える銀色の、少しばかり長めの髪がゆれる。
黒の上質なロングコートは一見すれば貴族かなにかを彷彿とさせる。
ともすれば少々古風にしか見えない格好だが、美術館でその姿を気にするものは誰もいない。

この男もまた、縁あってこの美術館へと訪れたのだった。

それが自身の運命に大きくかかわるなどと微塵もしらぬまま…





mae  tugi
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