■ ◆ドリーム・ワールド

なんか目が覚めたらイケメンになっていた。



・・・は?と思った事だろう。誰でもそう思う。俺でもそう思う。
だが、夜起きて顔を洗って、鏡を見たら「はいこんにちは」とイケメン顔がコチラを向いていたのだ。正直、自分の顔なのに見てられなかった。だってこれキモチワルイ・・・イケメンも一回りしたらイケメンじゃない。どういう事かというと、首が360度回転して前を向いていても、向いている方向は同じだけど首はねじれてるから普通に前を向いているのと同じじゃない。むしろキモチワルイ、みたいな事と同じだ。・・・いや、同じじゃないかもしれないけど、気分としてはそんな感じ。どうやら俺は存外自分の普通の顔を気に入っていたらしい・・・などと思いながら、俺は大きなため息をはいた。

どうしてこうなった・・・。



□■□



驚く事に、俺のこの顔を見ても誰も違和感を感じていないようだった。そして何故か皆の態度が冷たかった。どうやら冷たいのがデフォらしい。どういう事だろう・・新手のスタンド攻撃だろうか・・・とグヌヌと頭を抱えていたら、向こうから走ってくる黒髪の小さい男の子がいた。子供らしい無邪気な笑顔で、ほっぺを薔薇色にさせたハルノが、こちらに向かって飛んで・・・飛んで?!



「ぱぱーーーーッ!!!」
「ぐふっ」



超笑顔で俺のゆるっゆるの腹に渾身のタックルをかましたハルノさん(3)は、白目をむいているであろう俺の背中に手を回して更にぎゅうぎゅうくっついてきた。元気があるのはいいことだね!でも・・・すごく・・・いたかったです、とここまで考えて俺は「痛い?」と疑問に思った。こんなことを言っては何だが、俺は俺のスタンド能力によって物理的な痛みには疎いはずだ。こんな衝撃、すぐゲル化する筈なのに、なぜ痛いのだろう・・・と思っていたら、向こうの方から俺の知らない女の人が来た。・・・誰だろう、この人は。今日は不思議な事だらけだ。



「ああ!探したのですよジョルノ」
「ぼくの名前はジョルノじゃあない!」
「今はね」



そう言ってふふ、と笑った彼女。正直かわいい。かわいいけど、ハルノが嫌がっているからどうかジョルノと呼ぶのをやめてあげてくれないだろうか。てかジョルノって誰だ。この人の生き別れた弟とか、子供とかの名前だろうか・・・。



「ねえそんな事より、ぱぱ、僕と遊ぼう?」



「もちろんいいよ」と言いながら、内心ハルノまじ天使!!!と悶え苦しんでいたら、パッと腰が引っ張られる感覚がして、思わず変な声が出た。よく見ればその女の人がハルノの腰を掴んで引っ張っている。そしてハルノは俺の腰に手を回したまんまそれに抗っている。そして俺はただの電柱と化している。ん?!



「そんなスタンドもまともに使えないような顔だけの男とジョルノが釣り合う訳ないでしょう?私と遊びましょう?」
「いや・・・顔も(本来)モブなんで・・・」
「い や で す !僕はあなたなんかとは遊ばない!」



って痛い痛い!てかここでの俺はまさかのスタンド使いじゃないの?!いやまともに使えないだけか・・・?だからみんなの態度が冷たいのか納得。でもなんか本当に状況よく分からない。訳が分からないよ・・・。話も勝手に進んでいくよ・・・。



「そんなこと言わないで?私の方がスタンド使いとして優秀だし、きっとジョルノを満足させてあげられる」
「スタンドってなんですか!だから僕はジョルノじゃあないです!それにあなたがパパを語らないで下さい!あなたに何がわかるんですか!」
「私と同じ存在って事だけは分かってる」
「あなたなんかとパパを一緒にしないでください!」
「訳がわからないよ・・・」



もう思ってる事も口から出てしまって収拾がつかない・・・。いやほんと何なの・・・、この人と同じ存在宣言されちゃったよ・・・何なんだよ、と思いつつも、何とかスタンドを使ってハルノを奪取させて頂いた。なんだ、ちゃんと使えるじゃないか、俺。でも頭抱えたい。本当に訳が分からない・・・。



「とりあえず俺に状況を整理する時間をください・・・」
「そんな時間必要ないです!てれんすー!ヴァニラー!ここですここ!」
「なんだ、こんな所にいたのですかハルノ様・・・と影崎様」



ひょこっとどこからともなく現れたテレンスに、何故かにっこり笑顔のハルノ。
何やら謎のやりとりが行われていそうな雰囲気に、俺の顔は思わず引きつった。あれ?こんなにハルノって凄味が迸りまくってたっけ?!泥の底から這いあがったような凄味を感じる。なんかギャングスターにでもなれそうな雰囲気だ。・・・いや俺の知ってるハルノに限ってそんなことは・・・!しかもテレンス、様って何。

とかなんか思っていたら、何やら「流石ジョルノ様・・・」と感動していた女の人がハルノに冷たい目を向けられて喜んでいた。そして撃退されるように、どこかへ連れていかれてしまった。けれど彼女はどこか嬉しそうだ・・・ああ・・・なんだ、彼女・・・ただのMか・・・かわいいのに・・・とても残念だ・・・。テレンスに罵られて頬染めてる残念な人だ・・・。きっとDIOにも罵ってと言い寄ってるような人だ・・・と悟って俺は、はらりと落ちて来た自分の髪の毛をかきあげて溜め息をはいた。本当にこの館はブルマ然りJガイルしかり変態が多い・・・。



「絵になるってこういう事を言うんですね」
「・・・はい?」
「あ、パパは別にそのままでいいです。むしろそのまま悩ましげにしててください」



という言葉を最後に俺は、寝汗ぐっしょりで飛び起きた。
ぜーぜーという荒い呼吸を落ち着かせた後、急いで鏡を見に洗面所に急ぐ。

そこには何も変わらないいつも通りの自分の顔があって、俺はほっと胸をなで下ろしたのは言うまでもない。



ドリーム・ワールド



(意外ッ!それは夢落ちッ!)

ライダー様リクエストありがとうございました!

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