■ 06.Her favorite food is a

「影崎、私日本食が食べたいわ」
「・・・汐華様、そういう事はテレンスに言ってください。俺、食事係じゃないんですよ」
「いい?私は影崎の日本食が食べたいの!和食よ和食!テレンスは日本食がヘタだから食べたくない。論外ィ」
「あのお、俺これから仕事あるんで・・・」
「貴方の仕事は私のいいなりになることでしょ!ほらさっさと作りなさい!!」





言いなりじゃなくてお世話係なんですが。それにヴァニラに押し付けられた仕事がほんとにあるんですが。
まあごもっともだから作ったけどさと、ぶつぶつ言いながらホカホカの魚の煮つけ定食を片手に俺は我儘っ子の部屋に入る。
俺がいるから米を大量輸入したわけではなく、彼女がいるからこのDIOの館には米があるのか・・・まあそりゃあたかが一スタンド使いの為にあんな量用意しないよな。おかげで毎日ご飯生活だよ。ありがたい。
と、ひとりごちた俺は身重の彼女の目の前にソレを置いた。ちなみにご飯に大量にかけといた小魚は彼女の為を思ってだ。
けっしてイライラはカルシウム不足だとかそんな理由でかけたんじゃないだからね!とツンデレ風に言ってみたが、こういうのは野郎じゃなくてもっと可愛い女の子とか美人な女の子がやるからいいわけであって、まあつまるところ、今の俺は癒しに飢えている。そりゃもう切実に。
いや、さ?せめてDIOが女だったらまだよかったわけだよ。誰が好き好んで野郎の部下やるか。死の危機回避するためだけの生活とはいえ潤いは必要だと思うんだ俺は。
このまま死んだら死んでも死にきれないというか。




「という訳で俺に癒しを下さい」
「は?ちょっと・・・やだぁ・・・私はDIO様一筋よ」
「何勘違いしてんですか?そんな事じゃなくて俺が言ってるのは何か可愛いペットとか飼ってないんですかってことでギャッ」
「そんな事ってなによ!!あんたってホントに失礼ね!!」






グーパンをもろに食らってガッツポーズをした俺。決してマゾなんかじゃないぞ!!
俺がガッツポーズをしたのは今まで無意識に働いていたスタンドパワーを操作出来たガッツポーズであって、痛みによるガッツポーズなんかではない決してない。俺の命にかけて誓うから頼むからさそんな目でこっち見ないでください汐華様。ドン引きしないで汐華様。






「アンタってこの館一変態だったのね・・・」
「ご、誤解ですよ汐華様。それにマッチョブルマより変態だなんてそんな馬鹿な」
「どうやら貴様は一回死にたいらしいな、影崎?」






ギギギ、とそんな音が鳴りそうなほどぎこちなく首を動かせば、そこにはピチピチブルマがにっこりとほほ笑みながら立っていた。もちろん背後にクリーム付き。
やっべー、俺の能力とクリームの能力って相性最悪なんだよねー!簡単に死んじゃうんだよねー!
となると残された道は逃げるしかないですね。わかります。





「ヴァニラに頼まれてた資料なら下の部屋にあるからソレジャマタネ」
「行かせると思うか影崎ッ!!」
「まさか!戦闘経験皆無の俺にそんなこと出来る筈ないよ。行くのはヴァニラの方」
「何を、」






ヴァニラを中心にして半径一メートルをゲル化させれば、あとは俺が何もしなくてもヴァニラは彼自身の重みで資料がある下の部屋へと真っ逆さまだ。ふっふっふ。ない頭を働かせて頑張って考えた作戦。別名蟻地獄作戦。もがけばもがくほどドツボにはまります。

案の定、俺の作戦にハマってくれたヴァニラさんがものすごい顔で俺を見ていたよ怖いよヴァニラさん。





「後で覚えていろ・・・・・」
「そういえばDIO様がヴァニラに会いたがってたなあ」






が、そんなときは鶴の一声ならぬDIO様の一声。
俺がこんな行動をとるときは決まってDIO様の一声を隠し持っているときに限る。
じゃないといくら俺でも物理攻撃タイプじゃないヴァニラは相手にしませんできません。
ただ単に実践する相手がいなかったともいうけども。




「何よ・・・今の」
「ああ、気にしないでください。今のはただのDIO様の部下ですから」
「そうじゃなくて、床が・・・」
「これはこの部屋の特別な仕掛けでして。他にも急に壁に穴が開いたり、水がひとりでに動いたりしますよ。ああ、ご心配なさらず。貴女様には危害は加えないよう仕組まれておりますので」
「あら・・・・・・そう、なの」
「ええ」





ちなみに水が動く云々は俺が偶然壁と同化してた時に目撃。以来、スタンド使いの情報を集めれば集めるほど俺の命の危機を回避できると思って壁と同化する頻度が増えたのはここだけの話。たまに攻撃されるけど。ンドゥールさんには攻撃されたけども。もうこの館の人達こわい。気配とかなんなの。なんで分かんだよ。人間じゃないのか君ら。

そう思いながら我ながら胡散臭い笑みを顔に張り付けてやり過ごせば、なにやら諦めてくれたらしい。
そういうところは好きだなと思いつつ、食事に手を付け始めた彼女のそばに控えていると、血色の良くなった顔がクルリとこちらを向いた。





「影崎、デザート」
「よしきた」





デザート作りは別腹だぜと意気込んだ俺は、この後告げられた彼女のリクエスト内容に頭を悩ませることになるのだが、それはもうあと数分後の話だった。




彼女は葛餅がお好き。


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