■ ◇チェンジオーバー

その日の寝起きは最悪の一言に尽きた。



「(まじか・・・)」



ズキズキと痛む頭はまるで二日酔いの症状によく似ていて、・・・あれ?昨日そんなに飲んだっけ、と昨日の事を思い出そうとしてもまるで記憶がないため思い出せない。いや、そもそも俺はハルノが生まれてから二日酔いになるまで飲む事は控えていた筈だ。が、現状は完全二日酔いの症状なわけで。
っべー、まじか。まじか。とさっきから同じ言葉しか繰り返していない俺は取り敢えずやけに寝心地の良いところから起き上がろうとしたのだが。なぜか。



「ーーーっッてぇ」



盛大に頭をぶつけました。ちょっとよく分からないですね・・・ガツンっていったよガツンって。なんでベットの天井がこんなに低いんだよ、と痛みとか眠さとかを拭って目をうっすら開けてみると、目の前15cm程の所に天井があった。いや違う。こいつ・・・・・動くぞ・・・。と内心ド真面目に呟きつつ、天井のようなものを持ち上げると、ぱっと広がった視界から豪華絢爛な部屋の様子が飛び込んできた。おい。夢にしても意味不明すぎる、と呆れたところで、改めて違和感に気がつく。
なんで俺、棺桶の中で寝てんの。それに何でこんなDIOみたいな露出度高すぎる服着てんの!!!


「こ、この格好は恥ずかしすぎて外に出られないッ!!!・・・って、こえが・・・」



なんでこんなイケボイスなの俺。生まれてこの方こんなこんな声出たことないよ、と色々おかしすぎるこの状況で頭を抱えようとした俺はふと目の前の鏡に映った自分の姿を見て愕然とした。は、ははは、どうやらこれらの違和感は俺が奇妙すぎる出来事に巻き込まれてしまったせいらしい・・・。



「なんてこった・・・」



今、誰かが俺のいる部屋に来たとしよう。そいつはきっと威厳も魅力もへったくれもない頭を抱えたDIOの姿を見る事が出来るだろう。どうしてこうなった・・・教えてジョナペディア。



■□■



○ジョナサンが来ました。



「ま、まさかディオがカーテンにくるまってる姿を見る事ができるとは思わなかったよ・・・っ」



肩をプルプル震わせながら、今にも吹き出しそうなのを耐えようとしているジョナサンの今の言葉をネットスラングを使って書くときっとこうだ。「ディwwwディオがwカーテンにくるまってるwwwwwwwwブフォwwwww」だ。間違いない。ジョナサンは紳士だからこんな事言う筈もないが現代日本人の感性で変換すると間違いなくこうなる。ニュアンス的には多分100点満点。さすが俺、と遠い目をしている今の俺の格好はジョナサンの言う通り、すごくカーテン野郎です。なぜなら着れる服がなかったからです。全部が全部露出度高い上に・・・上に・・・。



「なんで服という服が全部社会の窓全開なデザインなんだよ・・・ッ!!!」



力いっぱい叫んだ俺(DIOの姿です)はクッ、と真紅のカーテンにくるまりながら更に涙を呑む。
首元からつま先までがっちりガードしてくれるカーテンがなかったら、間違いなく今の俺は羞恥でぶっ倒れていただろう。今でも若干恥ずかしくて顔が熱いくらいだ。そしてジョナサンがいてくれてよかった。何でここに存在できるのかはさっぱり分からいけれどもそれはきっと気にしちゃ駄目な奴なので放置しておく。



「ディオから溢れる庶民オーラってある意味貴重だね・・・っ、」
「相変わらず肩震わせながら言わないでくれよジョナサン・・・わかってるから・・・」
「フン、まったくもって俺の身体を持て余しているようだなァ、影崎・・・」
「こ、この妙に凡人っぽい一般人のデフォルトみたいな声は・・・ッ!!」
「・・・貴様、自分で言ってて虚しくはないのか・・・?」



ええいうるさい。と、振り向くと何だかラスボス感漂う俺がいた。間違いなく中身DIOの外身俺ですね!なにこの中身の違いから出るオーラの差。圧倒的な存在感に、これはラスボスですわ・・・と分かる感じの笑い方に更にプラスしてちょっと妖艶さまで出ているその様子は外見が自分なだけにドン引きする。うわあ・・・。



「てか何で半裸なの・・・」
「フン、随分と貧弱な身体だが、きっちり着込むのはこのDIOは好まぬ。貴様こそなんだそのカーテンはッ!!まるでムシケラのようではないかッ!!」
「ムシケラというかミノムシみたいだよね」
「うるさいぞジョジョォ・・・」



あはははーと、曖昧に笑って適当に誤魔化しておく。流石に面と向かってDIOのファッションにケチをつける勇気はない。そして義兄弟の会話が何気に和むけどそこはかとないシュールさがあるのは今の彼の姿がDIOの姿じゃなくて俺の姿(上半身裸)だからかもしれない。だから服着ろ。




チェンジオーバー



(次の日ちゃんと元に戻りました)

ルイ様リクエストありがとうございました!

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