■ ◇とある幽霊の日常のひとコマ

今日は俺の誕生日という事で、ただいま俺の家に居候中の幽霊ジョナサンさん享年(20)に料理をふるまってもらう予定だったのですが、が・・・。



「ジョナサン・・・き、気持ちだけはありがたく頂いたから!頼むからそれ以上危ない事はしないでくれ!頼むから!!!」
「だ、大丈夫だよ影崎!僕はまだ諦めないッ!あの味が出せるまで諦める事はしないッ!!」
「いやいやそういう事じゃなくて・・・っておいいいいいいいいいいいいいいいいいいジョナサン!!!コンロ!!!!!フッ素樹脂のフライパンの空焚きは禁止!!!!!毒ガス出る出ちゃう!!!!!あと包丁は危ないから平面においてくれよな!!!!!そして、その・・・手元にあるとぐろを巻いている黒い物体はなにかなー・・・・?」



ぜーぜーと、何故か運動もしていないのに息が切れてるし、そしてちょっと涙目なのはしょうがない。鉄フライパンをダメにされなかっただけでも運がよかったかもしれないと自分を納得させた俺は、ハラハラしながら見守り続けたキッチン周辺を見た。落ちている食材をホイホイと拾って、ゴミ箱に捨てていく。カンカン、とお玉でフライパンの中のモノをお皿に盛りつけたジョナサンは、申し訳なさそうにしながらも、どこか誇らしげな様子で俺を椅子に座らせた。



「ごめんね・・・すごく時間がかかっちゃって・・・」
「ソコジャナーイ俺がダメージ受けてるのソコジャナイヨー」
「でもちゃんとエリナの味を再現できたよ!普段お世話になってる影崎に何かお礼したくて、それで僕がエリナに食べさせてもらった料理の中で一番おいしかった料理を影崎に振舞いたかったんだ!100年くらい前に食べさせてもらった料理だから上手く再現できるか心配だったけど、無事に作れてよかったよ!!!」



ものすごいやりきった感を見せてくれたキラキラしたジョナサンに俺が何も言える筈もなく。いやまあ・・・気持ちはとてもありがたいし、さっきからいい匂いも確かにする。
する、のだが・・・。



「あのー・・・見た目が、すごく・・・その、前衛的だね・・・」
「味は大丈夫だから!ほら一口どうぞ」



結局この料理はなんという名前なのか聞く暇もないまま、黒い謎の物体とまともな料理をミックスしたようなものを口に放り込まれた俺はもぐもぐと口を動かす。
恐る恐る味わってみると、あれ・・・意外に・・・。



「おいしい・・・」
「よかった!」



ジョナサンに犬のしっぽがついてたらブンブン振ってるんだろうなと思うくらいにはとても素敵な笑顔をくれた彼の料理を俺は次々口に運んだ。
もぐもぐと咀嚼しながら、空中をふわふわと浮かぶジョナサンに顔を向ける。



「いやあ・・・一時はどうなることかと思ったけど普通にすごく美味しいわ・・・ぶっ倒れる事を覚悟してたから本当に驚いてる・・・」
「まさか!料理で人が倒れるわけないじゃあないか!影崎は心配性だね」



ふふ、と上品に微笑んでいるジョナサンの顔が・・・あれ・・・なんか歪みはじめt・・・。



「―――――――」



口をパクパクさせて、ばったーんと倒れた俺。
そしてブラックアウトする視界。おいジョナサンおい。
最後にそう思いながら俺の意識は遥か彼方へと飛んでいったのでした。えええ。



とある幽霊の日常のひとコマ



(ジョナサンの料理まじ凶器)(いやあ・・・本当にごめんね。でも、そういえば僕もエリナの料理食べた時の記憶が途中からないような・・・?)(意外ッ!!それはエリナさんッ!!!)



ミドリムシ様リクエストありがとうございました!

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