■ 30.A friend of a friend is friend.

仕事さえちゃんとすればDIOは俺たちに対して基本放任主義である事に気がついたのはつい最近の事ではない。
彼は、俺たちを本当に駒としか見てないというか、むしろ何かの生贄の為に飼い殺しにしているといった方が納得できるくらい初期と比べて俺たちには干渉してこなくなった。

つまり何が言いたいのかというと、今回のプッチの件で俺におとがめは何もなく、そのまま放置されているのだけれど・・・。



「(これは流石に困るわ・・・)」



かこーんと何かしら衝撃を受ける度に頭からすっぱ抜けそうになるDISCに毎度青筋を浮かべそうになっちゃうのはしょうがないと思う。頭からCDみたいなディスクがちょっと覗いてるとかそれどこのビックリショーだよ。俺まだ人間完全にやめたくない。ハルノの授業参観だって見に行ってないのに人間やめたくないんだけどさ、とブツブツ言いながらどっこいしょ、とおっさんくさい掛け声を出して、頭の中にDISCを戻した。
プッチと戦った後からこれだ。
そしてプッチと戦った後からこの攻撃の嵐だと、肩を落としたら、その肩すれすれにナイフが飛んできて壁にささる。



「(こええええええええ)」



俺を殺せば何でも手に入るらしいと、どこの誰かが言ったらしく、ここに来た当初のように物陰から何者かの奇襲を受ける生活に逆戻りと言う俺的には大変いただけない状況が出来上がってしまっている訳で、ただいま絶賛逃げ回り中。
ええ。そうです。戦闘狂の方やら殺し屋の方やらが俺の命を狙ってくるわけです。俺とプッチが対面して戦って、でも俺はスパーンとやられて、ジョナサンが彼を倒してくれてですね。そして後には結果だけが残って、プッチに負けた俺がプッチに勝ったことになってるらしい。

そこからどうしてそうなるのよとツッコミたいがなってしまったものはしょうがない。ヴァニラに相談したら「皆殺しにすればいい」の一言で解決してしまったが、そんな事を俺が出来る筈もなく。さすがブルマさんまじブルマさん。考え方マジキチ。

まあ俺としても狙われるのは勘弁なので、今どうしようかなと頭を悩ませている最中だ。多分ほとぼりが冷めまで待つしかないんだろうなーとは思うけれども、いつまでも狙われ続けるのも俺の精神安定上いただけない。事実、今現在で結構いっぱいいっぱいだ。ハルノに心配されるくらい。ああそう言えば今日はプリンをリクエストされていたんだった。最近のハルノはプリンがお気に入りの様で事あるごとにプリンをリクエストしてくれる。

今日はごまプリンを作ってみようかと、思わず現実逃避しながら再度落ちかけたDISCを頭に収めなおした俺は、床をゲル化させて下の階へと逃げた。というか落下した。戦闘離脱も慣れたもので、ちょっとドヤ顔である。慣れたくなかったけど。大事なことだから二回言うが、慣れたくなかったけど!!!

はあ・・・と溜息をはきながら、俯いていた顔を上げる。
いつもはこれでよっぽど敵を撒けるのだが、たまーに下の階にいる人と鉢合わせしてしまう訳で、今回はまさにそれだった。目と目が合う。明らかにイッちゃってる人の目に、思わず俺の表情筋が引きつった。・・・うわあ。



「貴様・・・今、どこから・・・」



あれ?とイッちゃった目をした割には思ったよりも話せる男の様子を見る。
紅茶色の髪に、チェリーのような赤いピアス。緑色の学生服をきっちりと着込んでいる。背後にはメロンのように筋が入ったスタンドがふわふわと浮いていて、そして・・・珍しい。



「日本語・・・だ」



学生服を着ているという事は学生なのだろう。胸板の厚さと堀の深い顔立ちのせいかイマイチ学生には見えないけれど、着ているものは長ランだし、日本語を話していることから彼はもしかしなくても日本人らしい。汐華様以外にも日本人がいたんだなとちょっと感動していると、彼とまた目があった。気のせいか、目がさっきよりも濁ってないような・・・気がする。というよりも正気に戻ったような顔色の変わりように内心首を傾げた俺は、次の瞬間めっちゃ頭をシャッフルされた。ちょ、肩持って俺を揺するな!!!DISCとれる。



「もしかして、あなたもスタンド使いなんですか?!」



頬を上気させてこちらを見る彼は、さっきとは打って変わって年相応に見えました。おいおいどうなってるんだコレ。ついに俺の目がおかしくなっちゃったのか?いやいやでもさっきまで彼の目はこんなにキラキラしてなかったし、今は濁ってないしイッちゃった目もしてない。
そして口調も変わってるよ。どういうことなのーという言葉を口の中でモグモグ咀嚼した俺は、とりあえずスタンド使いであることを肯定する。するとさっきまでの面影はどこへ行ったのやら、彼はとても嬉しそうに笑った。あれ、何この子笑顔がとっても爽やか。さっきまでのヤバイ感じはどうしたと、俺はまた内心首を傾げたのだった。



友達の友達は友達。

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