■ 25.Birds of a feather flock together.

逃げるようにこの場を後にするアヌビス神(と宿主の男)を見送ってから、俺はふうと一息ついた。結果だけを言うと、アヌビス神は俺の事なんて何も知らなかった。記憶の事も、ハルノの事も、まったく何も知らなかった。DIOの事だって、あまりよく知らないようだったし、まったくもって取り越し苦労・・・それにしても何て奴だよアヌビス神・・・と壁に背を向けて、俺はずるずるとその場に座り込んだ。

ああああ、こわかったー・・・。

首だけを上に向けて長く細く息を吐き出す。うん、まじこわかった。なにあれ。なんなのあの刀。下手したらハルノが・・・殺されていたかもしれないなんて、そんな危機的状況今までなかったのに。そういえば最近やけにDIOの館の中が騒がしくなってきたし、アヌビス神が俺みたいな宿主を探していたのにも訳があったはずだ。何らかの原因で今までよりDIOの館の中が殺気立っているのは間違いないと思う。では、何故か。

・・・考えてもわかんないな。

と頭を振った俺は、そのままの状態で固まる。

いや、だって何か視線を感じる。

ガシガシと頭をかいた俺は、どうするべきかなと迷った後、ゆっくりと口を開いた。




「あの、なにか俺に用ですか」
「いえ。ただあのような行いはあまり感心しませんね」



俺が声をかけると、「神父を目指すものとして、余計に」と会話を続けた青少年が通路の曲がり角からひょっこりと顔を出した。
剃りこみ坊主というこの時代にしては斬新な髪型をしている青少年は、先程の言葉から推測するに神父さんになりたい聖職者関係の方のようで、俺としては正直首を傾げざるを得ない。
神父が吸血鬼の館に居ていいもんなの?いやいや、実はこっちの世界の神父さんは居ても大丈夫だったり・・・しないか・・・、ないな。ないない。

ゆっくりとした足取りでこちらに近づいてくる彼は、どう考えたってここにいるには不釣り合いな肩書をもっている。しかも、今、俺とアヌビス神を見ていたという事は、多分、この人は・・・スタンド使いの確率が高い。

肩に手を置かれる。いつも思うのだけれど、この世界の人、いちいち話す時の距離が近いよ近い。



「―――先程は、何を考えていましたか?」



びくっと思わず肩が揺れた。なにこの青少年こわい。笑顔なんだけど、仮面一枚剥がしたら絶対笑ってない。
こう、寒気がするというか、DIOとはまた違ったヤバさを感じるというか。
ヤバい奴独特の言葉で言い表せ切れない感じがプンプンしてる。

いえ、ナニモ。と引きつったままの顔で彼の質問に応えながら思う。

あ、こいつ、あの矢を売ってきたピンク頭と同類だわ、と。


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