■ □Natale con i tuoi,Capodanno con chi vuoi

イタリアの正月は、クリスマス(イタリア語ではナターレというらしい)と比べるとこっそり小規模で行われる事の方が多いらしい。


ドーンッ!


・・・豪勢なケーキが作られたり、街中が派手なイルミネーションで彩られるナターレとは違い、正月は年越しそばならぬ年越しレンズマメ料理を家族と共に食べて新年を祝う、というのがハルノ曰く一般的なイタリアの正月・・・らしい。


ガシャーンッ!!


らしい、というのも、家の外で鳴り響く花火(という名の爆弾)の爆発音とか向かいの家の窓から次々に落とされる洗濯機やらテレビを見ているととてもじゃないが厳かに行われる行事とは思えないのだけれどもな!!
三日も前から爆弾を爆発させているのかと錯覚するほど花火を鳴らしまくっているご近所さん(≠ギャング)にもパーティーのお誘いを頂いたりしているくらいだから、本来はとてつもなく派手に行われるモノなんじゃないかと俺は推測しているのだが、ハルノが。



「だから今年は父さんと一緒に静かに年を越したいんです」



そう言って、嬉しそうに笑うもんだから、俺もつられて「そうしようか」なんて言って笑ってしまうのだ。俺がハルノに甘いのは通常運転です。ああもう見ないうちにホントに綺麗に成長しちゃって・・・おっさんは感慨深いです。
そんな訳でハルノの家族も同然な護衛チームの面々を俺の家に招き、せめてイタリアの正月っぽくしようと、お節と共にレンティッキエと呼ばれる豆(日本語に訳すとレンズマメ)を近所のスーパーで買ってきたザンポーネという豚の足の詰め物の傍に添えていると、玄関の方でまた爆発音がした。

ああ、うん爆発音ね。はいはいよくあるよくあるねイタリアじゃ一般的だよね爆発音。
イタリアの正月、カポダンノ名物花火の打ち合いね。はいはいよくあるよくある。
年が明けた時なんてネアポリスの空が花火の打ち過ぎで真っ赤に染まるって話も聞くしねはいはいよくあるよくあ・・・。



「まあ正月なんで発砲しても誰も気がつきはしないでしょう。ミスタ、お願いします」
「いやそれはマズイだろハルノーーーッ!!」
「えっ?」



思わずキッチンから身を乗り出せば、ぼく何か悪いことしましたか?みたいな純粋な目でこちらを見るハルノぐうかわ・・・じゃなくって!!
邪心コロネロールが降臨してるぞ・・・とざわざわしていたら玄関先で人影が動いた。
目を向ければ、何故かドヤ顔で立っている変態もといド変態がいて、彼の周りには見たことがないモノがふわふわと漂っている。あ、さてはこいつスタンドの無駄遣いしたな?



「スゴク 最高に いいッ!今の爆発音といい、スタンドの状態といい・・・ン〜、ベネッ!!ディ・モールト・ベネッ!!」
「変態はお帰りくださーい」



玄関をバタンと締めれば、慌てたようにドアに嵌め込まれたガラス窓からイルーゾォがニュルンと出てきた。そして次々出て来る暗チ勢。おー、こいつらに会うのも久しぶりだなあと思いつつ元チームメイトたちを見れば、どうやらわざわざ料理を食べに来たらしい。思わず息を吐きながら目頭を少しもんだ。



「だから俺の家はレストランテじゃないんだって。それに年越し料理が食べたいんなら他行け、他。俺の家はどっちかっていうと日本式正月だからコテキーノもサルミもコントルノもないし」
「なんだ、イタリアの正月をしらない割には熟知してるじゃあないか」
「ブチャペディアに聞いた」
「なるほど。随分とゲロ感が漂う辞書だな」
「それは多分違う意味だと思うぞリゾット」



そう言いつつまた俺の家に入ろうとしたホルマジオをアバッキオがバレットM82A1で狙撃しようとしていたのでブチャラティにお願いして止めてもらう。対空火器としても使える化け物銃を人の家に持ち込むなよと言う暇もない。常識が来いというか常識人が来て下さいお願いします。と思っていたら、マジオが嬉しそうに持っていた瓶を地面にたたきつけた。おい。さてはコイツ、真昼間から酔ってやがるな?



「イタリアの正月ってのはやっぱチェノーネをするモンだろ!郷に入っては郷に従えっていう言葉がジャッポーネにはあるっつー話じゃあねェーか・・・やっぱりそこはソレに習っとかねえとなァ!どうせお前のことだから八人くらい増えたって大丈夫だろ?」
「だーかーら!大丈夫じゃないっての!それに今日は日本式正月をするって言ってるでしょうが!あと俺が知らないイタリア語を使うな分からん。ついでに人の家も汚すな。てか・・・八人?」



チェノーネって何だと思いつつ、暗殺チームのメンバーを思い出してみるが七人しか心当たりがない。暗チはリゾットにマジオ、兄貴とペッシ、イルーゾォにギアッチョ君。あとそこで伸びてる変態一名の総勢七人の筈なのだが。



「チェノーネは大夕食会という意味で、イタリアでは大晦日から正月にかけて友人知人を招いてチェノーネを行うのが一般的なんだ。・・・ふむ、だが、確かにそうだな・・・日本の正月もいいがここはイタリアなんだ。イタリア式にやっても構わないんじゃあないか?ジョルノ。今からなら準備も間に合うだろうし、何より彼らも新パッショーネの同僚になったんだ。一緒に年を越しても何の問題もないだろう」
「ブチャラティがそう言うんならいいんじゃあない?私も昔の事なんて気にしてないし」
「・・・」


あ、ハルノがふてくされた。
一見分かりにくいが、落ち込んだ様子のハルノに少し苦笑をもらして、今日はあとでプリンを作っとこうと頭のメモに書き加えておいた俺は、そのあまりにも大きな肩書きを背負った彼の息子の背中を軽く叩いた。
弱冠15歳にしてパッショーネのボス。ジョルノ・ジョバーナ。
そんな彼も俺の中ではあの館の中にいた息子同然の子であり、汐華初流乃なのだ。
やはり、というべきか器に見合った大きなものを背負ってしまったが、だからこそ、それを見守りたいと思う。
せめて彼に家族ができるまでは、彼に従う者ではなく、背中を押す者としてありたいと願っている。

俺の方を振り向いたハルノが、息を吐き出して肩を竦める。
俺は構わない。そう言えば、またハルノが溜息をはいて、頭に手をやった。



「・・・確かにブチャラティの言う通りです。彼らが『悪』であり、僕たちと敵対したのはもう『過去』の話だ―――いいでしょう。チェノーネの準備を始めましょうか」
「ンーッ!さっすがジョルノだぜ!!おーい影崎ッ!!こっち来てさっさと準備するぜーッ!!わたしが本場フランスの正月料理の数々を教えてやろうッ!!」
「八人目はお前か自走式電信柱」



だからイタリア式に変更したと言ってるだろうが。と思ったけれども俺もガレット・デ・ロワ(フランスの正月お菓子だと昔教えてもらった)は嫌いじゃないので、まあ・・・いいんじゃないの?と呆れ半分、ポルナレフの口調に懐かしさ半分の笑みを浮かべてしまう。俺もコイツも年をとったものだと、マジオとナランチャ君がバローロを競うように飲み始めたのを頬杖をつきながら見ていると(ルールはおっかな過ぎて脳内スルーしました)遠くの方でアバッキオがクリス・スーパーVのサブマシンガンを取り出していた。照準は暗殺チーム所属のイルーゾォさん(年齢不詳)。ブチャラティ以下略。

というか、さっきから各チームのリーダー以外犬猿な感じなんですが大丈夫なのか俺の家と思わずにはいられない。まあ一年前くらいまでは敵対してたチーム同士だったしな。と少しは妥協しようとしてもギャングの皆さんのおっかなさが半端じゃないので一般人にはつらい。ほら、みんな平和に行こうよ。横で俺の料理を手伝ってくれてるポルと兄貴とペッシのように。うっかりよそ見しようもんならペッシが漢を通り越して料理に毒を盛りそうな下種に成り下がりそうだけど兄貴がいるから問題ない。



「まったく、呆れるほど平和的な奴だなお前は」
「あれ、今俺口に出てたっけ?」
「・・・まあな。しかし、その無条件に人を信じようとする性格は相変わらずという訳か」
「あのさ兄貴。無条件じゃないっての。俺は自分が信じていいって思った奴しか信じない」
「その信じるって決めた奴らが悉く一般的に『悪』と呼ばれる奴なんだが・・・お前昔っから人を見る目はねーよなァ・・・」
「・・・そんなことないから。みんな個性的な奴だけどいい奴らだから」
「ただし殺人は除くって顔してんぞ影崎・・・」



ポルナレフにもっともなことを言われつつ、ザクザクとプンタレッラを切ってアンチョビドレッシングと合わせれば、イタリアならではのサラダの完成だ。
それをリビングへと持っていけば案の定修羅場っていたので、呆れてものも言えない。
大きく息を吸い込んで腹から声を出してみるが、やっぱり聞いてもらえず、せめてもう一度と俺はまた大きく息を吸い込んだ。



「あのさぁー!みんな今日くらいは仲良くしてもいいんじゃないって思うんだけどどうかなぁ!!」
「クソッ!!もういっかいだ!!っひっく、てめーさっきからずるしてんじゃあねぇのかくそむかつくぜ・・・」
「てめぇもなかなかやるじゃあねーか・・・ひっく」
「オレのグロック18Cを躱すとはな・・・いいだろうAA12で向かい撃ってやる・・・」

「・・・・・・」


はあ、と息を吐きつつ手を地面につけて、意識を集中させる。
範囲はちと広いがまあ大丈夫だろうと、俺は暫く封印していたスタンド能力を使って全員を床に縛りつけたのだった。




Buon Anno!
あけましておめでとう!




護衛チームと暗殺チーム。
カピトーネとスプマンテと共に。


(あのーハルノ、暑いんだけど)(父さんが悪いんです・・・せっかく邪魔が入らずにお節が食べれると思ったのに・・・)(あーわかったから引っ付くな。てか酒臭いな!さてはあの後また飲んだな?!)(酒を飲まずにはいられなかったんですよ・・・まったくなんの為に暗チの中にポルナレフさんを送り込んだと思ってるんですか・・・もう聞いてますかとうさん)(はいはい、酔っ払いはさっさと目ェ覚まして俺にくっつくのやめような)





ザンポーネ、コテキーノ、コントルノは全てイタリアの正月料理です。
レンズマメや葡萄も縁起がいいとかでよく食べられていて、年越しの際にはスプマンテ(発泡酒)をぽんぽんあけて祝うそうですよ。
プンタレッラはイタリアの代表的な冬野菜で、カピトーネはネアポリス地方でよく食べられるウナギ料理の事。バローロとグラッパはイタリアの酒です。

〜ちなみに〜
この話の中での影崎は元暗殺チームのメンバーで現情報分析チーム所属。
どう考えても一般人ではない自称一般人で、たまに作戦を練ったりする時はスタンド能力に比重を置かないタイプになってるという多分どうでもいい情報。
アバッキオを銃オタにしてしまって正直すまんかった。でも楽しkry。

タイトルの日本語訳は「ナターレは家族と、カポダンノはお好きな人と」。
2014年のお正月企画小話でした。


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