■ 03.The vow that was not able never to be kept was done.

日本人の適応力って物凄いよね。ばーいジョナサン・ジョースター。





いやお前の適応力のがすげーよと言いながら目覚めた時の空しさと言ったらないです。あ、こんばんは。
いつもはお月さんと開眼一番目を合わせて、俺の一日が始まったりするのだが、今日は何故か違った。
いやさ。起こしてくれるのはありがたいよ?

ありがたいけどさ。





「正直朝ブルマはきつかった」

「なんの話だよ影崎・・・」





一緒にご飯を食べてた自称殺し屋さんに変な目で見られました。
ご飯を全部プルンプルンにして歯ごたえ無くしときましたフハハハざまあいえーい。
・・・はは、空し。

伊達に一人孤独と戦いながら一か月スタンド修行やってないぜーとごちりながら(殺し屋とかいうワードを脳内消去しつつ)俺はヴァニラ・アイスに言われた通り、食堂を出てすぐの階段を上がって右手の部屋のドアをノックした。すぐに「入れ」という声がしたので、「失礼します」と返事をして、ドアノブに手をかける。


深呼吸をして、ゆっくりと開ければ、何の軋む音もせずに開いたドアの向こうに、月を背にして座る吸血鬼の姿が見えた。
ああ、今日もイケメンですね帰っていいですか、と言いそうになった口を噤んで、見た目上はちゃんとすることにする。
ヴァニラ・アイスの口振りから予想するに、今日のこの話し合いで、俺のこれからの身の振り方が決まるのだろう。
さすがに、何もしないのに衣食住完備の豪邸暮らしはない。
何かしらの要求はされるだろう。
ココの人たちの事だから、倫理上問題がありまくりな事を要求されるに違いないし、強要されるだろう。脅される事も考えられる。

俺が来た当初ならまだしも、今の彼の手元にはヴァニラ・アイスというスタンド使いがいるのだ。

彼がその気になれば、スタンドしか取り柄のない俺なんて三秒もかからず暗黒世界行きだろうしな・・・うわ自分で言っといて怖くなってきた・・・。ブルマまじブルマ・・・。

とにかく俺を脅せる手駒がそろったから、このタイミングでの対談なんだろうなと思いながら、ふっかふかのソファに促されるまま腰かけた。





「やあ、影崎。漸くゆっくりと話ができるな」





胡散臭い、顔に張り付けたような笑み。

俺は出来れば話したくなかったよ、とは思っても、口には出さない。
相手にとって自分は被食者に過ぎないのだから、俺は自ら死に急ぐようなことはしないし、例え何があっても俺はこんなところで死ぬようなマネはしないつもりだ。
というかするつもりなど毛頭ない。俺も命は惜しい。

が、誰かを殺せとか言われたら俺は・・・どうするのだろう。

そんな覚悟は、将来パティシエ希望の俺にはいらない覚悟だったし、向こうの世界の住人にはいらないものなんだよなあと心の中でぼやいた俺の髪を、生ぬるい風がヒュルリと掬っていった。


相変わらず実感はない。
このぼやっとした考えは砂糖より甘いと思ったけれど。

[ prev / top / next ]