■ 22. An unconscious resistance declaration.

「くくくくくけッ!!影崎テメーついにここで会ったが100年目よォッ!左から回って蹴り殺してやるぜッ!!」
「うわっあぶね」


とても気持ち悪い笑い方をして突撃してきた奴の攻撃を避ければ、そいつは俺の後ろの壁に突き刺さって、なんかビヨヨーンという文字が見えたするけど気のせいだよね。うん気のせい気のせい。
きっと誰かがキスとかしちゃった日にはズキュウウウウンとかいう文字が見えちゃったりするんだぜあーやだやだ。と少々寝不足気味の目をこすった俺は、驚きが混じる後方からの声に溜息をはいた。



「・・・な、何でオレが左から蹴りをキメるって分かったんだ」
「お前絶対あだ名ヌケサクだろ・・・さっき自分で言ってたのに気づいてないのか・・・」
「ハッ!!そ、そうかッ!気づかなかった・・・ってそんな事より『不死の影崎』とか言われて調子乗ってんのか知らねえけどなあッ!!オレをヌケサクなんぞと呼ぶんじゃあねェぞ!!」
「ちょっと待て何だよその恥ずかしすぎる二つ名!!初耳だよ!!お前のヌケサク度合いにもビックリだけどそっちの方にもビックリだよ!!」



ちゃんみおもビックリのツッコミを全力で叫んだ俺はちょっと息が切れてます。
いやだって何、不死って。てかそもそも二つ名とか何それ恥ずかしすぎる。
まあ確かに『亜空の瘴気ヴァニラ・アイス』とか『地獄の門番ペット・ショップ』とかはホルホル君のところの下っ端さん達が話してたのは知ってるけどさー。
DIOの館にいる人達が「キャー見て不死の影崎様よー!」とか言う種類の方々ならともかく「おいアイツ噂の不死の影崎だぜ。弱そうだから一狩り行ってたんまり金をグヘヘ」的な輩がほぼ十割を占めていると思うと・・・ね。もう不幸な未来しか見えないですよね。
それにこの館の顔面偏差値が異常に高いので万が一にも前者がありえないのがツライ。
モブ顔な俺にもどうか慈悲を・・・ま、まあハルノがいれば俺はそれでいいですけどね!!ハルノ天使だし!
最近ちょっとツンデレこじらせてるけど俺のかわいいかわいい子だから!!と一人劇場を繰り広げていた(そこ寂しいとか言わないでください)俺は未だに壁に突き刺さったままの・・・名前知らないからコイツを仮にヌケサクと呼ばせてもらうが、を見た。

いつまでも壁に刺さったままじゃ流石に不憫なので仕方なく引っこ抜いてやると、顔を真っ赤にさせたヌケサクが俺に向かって指を突き刺す。
あの、刺さってる。刺さってます。
今にも唾が飛びそうな剣幕のヌケサクは気が付いてないようだけど。



「俺だって不死だ!DIO様と同じ吸血鬼だぜーッ!!なのになんでテメーがその二つ名をもらってやがるんだよォ!俺の方がふさわしいだろーがッ!!いくらテメーがオレを半殺しにした事があるとはいえ、あれはアヌビス神の力であってテメーの力じゃねえんだよ!!・・・まあそのおかげでオレは吸血鬼になれたワケだがそれとこれとは別問題だぜえッ!!だから・・・」
「待って、お前今なんて言った?」
「ああ?だから俺は吸血鬼だから・・・」
「そこじゃなくて!!その前!」
「んだよッ!!だからオレを半殺しにしたのはお前じゃなくてアヌビス神だって言ってんだろッ!」



ぱちん、とパズルのピースのはまる音がして、俺は思わず顔を手で覆った。なんてこった。まさか俺の記憶喪失(仮)にアヌビス神がかかわってんのか?ああ、まじか…と思わず顔を引きつらせながら、意味もなくそのまま髪の毛をかきあげる。ぐ、うん。ああ、慌てているし、焦っている。こんなばかな話信じたくはないが、こいつに嘘をつくメリットがあるとは思えない。
俺がここに来てからハルノが生まれる前までの間の記憶にない空白の記憶。その記憶の断片がこれか。ろくな記憶じゃないとは思っていたが、もろスタンド絡み。最悪だ…。

俺が壁に同化してこっそり得たアヌビス神の情報によると、奴は剣に宿るスタンドで、本体がいないから宿主となる本体を必要とする。で、さっきのこいつの話によると・・・俺はいつの間にかその宿主になっていたらしい。それはつまりDIOに利用されてたという訳で。それもかなり初期段階にかあ。まあ今更印象があまり良くないDIOに利用されていたという事実を知ってもDIOの印象は変わらないわけだけど。

だが、つまりそれは俺の意識外で色々とやらかしてくれちゃってた事を意味するわけで、はあ…もう泣きそう。ハルノー、俺は、俺は。

半殺しの単語を脳内削除しようとしたけど、残念ながらそれは出来なくて、俺は恐る恐るヌケサクに声をかけた。



「あのさ、半殺しってことは俺はお前を殺さなかったんだよな・・・?いいか、これ真面目に答えてくれよな。俺にとってはとても大事なことだから。主に倫理面的な問題で」
「はァ?殺すも何も、テメーがアヌビス神に捨てられたのはどんな奴が相手だろーとトドメをさせなかったからだろォ?まったくアヌビス神も影崎ごときの身体を乗っ取りきれないとは情けねー奴だぜ」



おお・・・なんかよく分かんないけど、大丈夫っぽい。セーフというかセウトな感じだけどこの際贅沢は言うまい。
俺の無意識GJ。と心の中で安堵した俺は、とりあえず後でアヌビス神に話を聞きに行こうと決心した後、まずは目の前のヌケサクをどうあしらおうか、と考えを巡らせたのだった。



無意識の反抗声明





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