■ 21.What is inherited, and the thing which tells it.

「少し昔話をしよっかハルノ」



ほらほらこっちにおいでーと緩む頬を隠さずに手を叩けば、おもちゃで遊んでいたハルノが嬉しそうにこちらを向いた。
ああもう本当にかわいいんだから!!
思わず床をごろごろしたくなる衝動を抑えて・・・ちなみにこれはハルノの悩殺フェイスを見ると大体の人がなる症状なので俺が異常な訳じゃないんです本当に!!
だってヴァニラもやってたよーピッチピチレオタードもやってたよー・・・。ああ、いかん。いらん記憶まで思い出してしまったと頭を振った俺は、脳内のレオタードを追い出してからひょいとハルノを持ち上げた。そのまま彼を自分の足の間に座らせると、俺の顔を覗き込むように見上げたハルノは好奇心旺盛の塊のような顔をしてうずうずしている。

普通の子供がどのくらいの歳で物事を理解し話すようになるのかは知らないが、ハルノは幼いながらも既にそれを実行しているように思う。
赤ん坊の天才スタンド使いもいるくらいなので、この世界の子供のIQ基準は俺のいた世界よりも高いのだろう。

まあ色々思っても、ようはうちの子が一番かわいいと、結局はそこに落ち着くのだけれど。



「―――パ!パパ!!」
「え?ああごめんハルノ!」



ぼーっとしていたらプウッと頬を膨らませているハルノがいて、怒られているというのに頬が緩む。もうだめだこの人・・・と思われてもまあしょうがないかなあと最近は開き直っているので無問題。ノープロノープロ。
とそんな事を考えていたからだろうか。



「じかんをムダにしちゃだめですよパパ」



彼が口にした言葉に俺はその場でビシリと固まった。
誰だてめえハルノにこんな言葉を教えやがったのはッ!!
っく!まさかDIO遺伝子・・・DIO遺伝子の仕業か!!ジョナサン遺伝子が来い!!と内心大荒れの天気になった俺がギリギリと歯を鳴らしていると、ハルノにペチペチと顔を触られた。
ハッとしてハルノを見るといつになく不機嫌そうな顔。
しまったやらかした。
そしてどうやら彼はこの仕草があまり好きではない様だ。


ああそうだったそうだよな。俺はハルノに話をするんだったよ、と本来の目的を見失っていた、とようやく気が付いた俺は、そんな自分に苦笑しながらフウと息をはき出した。
そうだな、とハルノに返して、目線を彼の星形の痣へと移す。

とても懐かしくて、同時にもう一度会って馬鹿をやりたいなあなんて、その星に願いを託して。俺は口を開いた。

これは奇妙な物語。俺が聞いた、彼の生涯の物語。
世の中の人々には決して知られることのない影の歴史の、ハルノのもう一人の父親の実話。



「俺の友人、ジョナサン・ジョースターの話をしよう」



俺の友人は、君の父親は確かに居たんだと、そう知ってもらいたかったから。
そして、息子に会う事もその身体を抱く事さえ出来なかった彼のせめてもの手向けに。



受け継がれるものとそれを伝えるもの。



一つの厳しく険しい道を進んだ男の生き様を、俺の心にもまた刻むように。
そんな彼の話をすることで、俺にも勇気が湧いてくるようにと。

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