■ 02.It hasn't hit me.

まず言っておこう。
俺はお菓子が好きだ。大好物だ。
ゼリーだとかケーキだとかプリンだとかマフィンだとかクッキーだとか、とりあえず片っ端から作ったことがあるものを上げたらキリがないくらい大好きだ。

でもさ。いくらそんな俺でもさ。



「自分がゼリーとかプリンみたいになりたいとかは、思った事ないんだけどな・・・」

「何をブツブツ言っておるんじゃ影崎ッ!!さっさと原型を留めんかバカモノ」



ああハイハイと軽口を叩けるくらいまでは、このDIOの館の生活に馴染んだと思いたい影崎ですこんばんは。
挨拶から分かるように今は、午後・・・というよりは深夜である。
あまりの非日常的な光景っぷりにぶっ倒れて、そのまま人生迷子な俺を勧誘した友人の義兄弟だったDIO様の活動時間は専らこの時間らしいので、不本意ながら彼の部下になっていた俺含めエンヤ婆たちの活動時間も必然的にこの時間になっている。

俺のような”スタンド使い”と呼ばれるものを集めているらしい吸血鬼の考えなど理解できるはずもないが、衣食住を保障してくれるのは正直ありがたいので今ここにいる。ジョナサンとディオの関係の事はこの際考えないことにしたのは記憶に新しい。

そんな俺は、ゼリー的な能力もとい自分の”スタンド能力”とかいうものをまだイマイチ把握でなくて困っている最中であるのだが、こればっかりは完全把握するのは俺自身でしか無理らしい。
曰く、扱えることを当然と思え。認識しろ、さすれば分かる。だそうだ。さっぱり分からん。
気を抜くと今のようにゼリーだかスライムだか良く分からないモノになってしまう俺は、スタンド使い先輩のエンヤ婆の指導のもとで一応この能力の扱い方を学んでいるのだが如何せん上手くいかない。

休憩をしようと座った椅子が、ゼリーの固まる前みたいに水っぽくなったと思ったら次の瞬間には固まっていたりと、とにかく日常生活でさえままならない感じなのだが、この能力のおかげで俺が今生きているんだと思うと内心は複雑だった。

ブスリ。



「ちょっと、急にハサミで刺さないで下さいよ」

「ッチ、やっぱりお前には通じんか・・・。DIOしゃまに報告をせねば・・・」



あれデジャヴと思ったら、背後にハサミを持ったエンヤ婆が立っていて、何やらブツブツと呟いている。
この通り物理攻撃が一切効かない俺は、何故か一日一回くらいは見知らぬ女だとかエンヤ婆だとかに刺さたり殴られたりしている。
全部プルン、ブシャア、ズルル、っと何の外傷もなく終わるのだけれど、一回自分の腕が派手に吹き飛んだ時は悲鳴を上げてしまった。感覚だけはあるから怖いったらありゃしない。
一応飛んでしまった半透明のそれに触ればもとに戻るんだけど、それでも心臓に悪すぎてやばい。それを平然と見れるココの人たちも(分かっていたけれど)カタギじゃない。

まあ、ディオはジョナサンを殺してる上に首から下の肉体を奪ってるし、カタギどころか人間ですらないけどなと、俺は階段から降りてきたDIO様を不思議な気持ちで眺めていた。



実感がないんだ。
だって俺が友達だったのは死んだ後のジョナサン・ジョースターだったから。


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