■ □思考しないことには恐怖をも抱かない

ハルノはこのDIOの事を父と呼び、影崎の事も父と呼ぶ。

流石は息子といったところか、大方影崎からジョナサンの気でも感じたのだろう。
俺とジョジョは二人で一人。その片割れと同じ呼ばれ方なのは正直悪くはないが、だがその呼称が問題だった。

だからそれを訂正する為に、俺はハルノに会いに行った事がある。
何故会いに行ったのかと聞かれれば、それは気まぐれだと答えるしかない。事実、気まぐれだったのだから。

影崎の相手をテレンスに任せてハルノと単独で会える時間を作らせた俺は、コチラをきょとんとした目で見る息子を見た。
緑色の目に黒髪。そして星形の痣。
ジョジョの遺伝子を継ぐジョースター家の息子と呼んでも差し支えないくらいにこの息子は俺に似ていない。。
他の息子は見た目は似ていなくとも雰囲気はこの俺そっくりだというのに、その雰囲気でさえも似ていない。

どちらかといえばジョジョに似ていると思った。



「ぱーぱ!」
「・・・なんだ」



返事を返せば、危なっかしい足取りでコチラに近づいてくるそれに戸惑う。
かつての自分はどう扱われていただろうか。
あの忌々しい奴は言わずもがな、だったら母は?覚えている訳がなかった。もう100年も昔の事なのだ。
コチラに駆け寄ってきたハルノは、何かをねだる様にこちらに手を向けている。・・・訳が分からない。
ここに来た目的を忘れてただ困惑した。その口は俺を表す言葉を吐くことを止めず、手もこちらに向けられたままだ。俺は困った。
どうすればいいかまるで分からなかったからだ。まさか締め殺すわけにもいかない。



「・・・金か?」



首を傾げられる。



「・・・地位か?」



ぺしぺしと足を叩かれる。



「・・・女か」
「ブフォッ」



懐から取り出したナイフで部屋のドアを貫通させると、腹を押さえた影崎とそれを引きずるテレンスがいた。後はその一歩後ろにこのハルノの母親か。



「ぱぱ!まま!てれんす!」
「ちょっと影崎!あんたハルノに自分の事をパパとか呼ばせてるわけ?!冗談じゃないわよ!!私とアンタが夫婦みたいじゃない!!DIO様と私に失礼よ!謝りなさいよォ!」
「いやそれはハルノが勝手に言っただけですよ・・・。てか・・・子供に向かって女って・・・ぐぇッ」
「大変失礼いたしましたDIO様。直ぐに下がらせますので・・・」
「いや、いい。それよりも影崎。やはり貴様に言いつけた方が早いな」
「・・・なんでしょう?」



真っ黒な目をこちらに向けた影崎はハルノの色とは似ても似つかない色だがやはりどこか似ていると思った。
あの忌々しくも尊敬に値する精神を持ったあの男に、ほんの少しだけだが。



「二度とハルノに俺を”父親”などとは呼ばせるな。いいか、絶対にだッ!それは俺があのクズと同じと認める事になるからだッ!!いいか分かったか!!このDIOの事は名前で呼ばせろ」



途端に耳を劈く不快な音が聞こえてきて、ハルノが泣いたのだと理解したが放っておくことにする。
どうせ俺が出来る事などないのだ。時間は永久にあるとはいえ無駄なことはしたくない。



何故ハルノが泣いたのか、その意味は決して俺には理解できないのだから構うだけ無駄なのだと。





思考しないことには恐怖をも抱かない。





楸様リクエストありがとうございました!

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