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思い、想い、オモイ
くらい、くらいお部屋が、びっくりするくらいまぶしくなりました。ホコリっぽいにおいのする空気が、さあっと澄んでゆくのを、ぼくは感じました。なんだろう、なにがあったんだろう、少し不安になったぼくでしたが、次に聞こえたなつかしい声に、とってもうれしくなったのです。
「……あれ? くまたろー? わっ、くまたろーじゃん! なっつかしー!」
その声の主は少しランボウにぼくを抱き上げると、からだについていたホコリをぱんぱんとはらってくれました。きらきらのおめめが、ぼくの真っ黒なおめめをのぞきこみます。
それは、何年も、何年も会えていなかった、ぼくの大好きなおともだちでした。さきちゃんです。ずっと、だれよりも、ぼくが会いたいと望んでいたその人でした。
さきちゃんはなつかしむように目を細めてぼくを見ると、嬉しそうに頭をなでてくれました。かのじょはぼくの知っているときよりも、ずっとずっと、おとなっぽくなっていました。着ているお洋服も、かわいいものからきれいなものへと移り変わっていました。それがなんだか、とても、さみしく感ぜられました。
「うわー、生地がだいぶ古いからぼろぼろだ。本当懐かしいなあ。どこに行ったかと思っていたけど、まさか押し入れのこんな深くから出てくるなんてねえ」
かのじょは、ぎゅっとぼくを抱きしめてくれました。かのじょの体温はやさしくて、なつかしくて、ぼくの大好きなそれでした。ぼくは、はっきりここだと言えないアイマイなところがぎゅっと痛くなるのを感じました。
「昔はくまたろーがいないと眠れなかったのにねえ。……久しぶりに、一緒に寝ようかな」
うん、ぼくもさきちゃんと一緒にねたい! そう言いたいのに、ぼくには声がありません。伝えるすべが、ありません。だからぼくは、抱きしめてくるかのじょを受け入れて、ココロの中でそっとつぶやくのです。
『さきちゃん、どんなに時間がたったってね、ぼくはさきちゃんのことが大好きだよ』
思い、想い、オモイ
どんなにきみが変わっても、たとえきみがぼくを忘れてしまっても。
(フォロワーさんのイメージss。おしんさんをイメージして書かせて頂きました)
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