- ナノ -


03


夜の帳が下りて、辺りはすっかり暗くなった

裏山には鬱蒼と木々が生い茂り、梟の声が時折耳に届く

先ほど、山に入る前に1つ、ルールが追加された


『今回、逃げる側の鴇からも反撃を認める なお、戦闘不能とみなされたものはその場で失格とする』


追加ルールを足した山田伝蔵が小さく咳払いをして説明をする

その新規ルールに六年生達は顔を見合わせて笑った


『それは先生方からの提案ですか?』

『そうだ 鴇からはいらん、と言われたがね ちょっとばかし理不尽が続く これは我々からの鴇へのささやかな謝罪だ』

『やはりそうですか 鴇の口からは絶対にでない案だったもので』

『ハンデに思えるか?』

『まさか よってたかって追い回すなんて、趣味が悪くてどうしたものかと思ってました その方が我々としてもやりやすい』


学園長はご不満でしょうが、と仙蔵が呟けば、山田伝蔵が苦々しく視線を逸らした

様子を見るに、学園長から苦言はでたらしいがそこは教師陣も責任をとったらしい

学園長を止められなかった責任は自分達にもあるのだという自覚のもとだ


『逃走時間が長い そして、実践であれば当然反撃を認められる 理不尽な話でも鴇が有利な話でも断じてない』


皆、異論はないかという山田の言葉に全員が頷いた

鴇は鈴を奪われたら終わりという明確な基準があるのに対し、自分達にはリスクがなかったのだ

それは公平ではないし、何より自分達だって負い目があった

気を引き締めるのにもいい条件であったし、納得のできる話である


『審判は我々教師が務めよう 以降は中立である』


それでははじめ、そう告げられた開始の合図とともに、全員夜の山へと入るのであった








「で、どうする?」


鴇が山に入るために設けられた時間で少し休憩もとれた

身の回りを整え直した五年生達は山に入る前に方針を決めることにした

ちなみに、六年生達は開始早々いつもの組別に分かれての行動をとることにしたらしい

特に話し合うこともなく自然と分かれたのは、彼らにとってそれが最も動きやすいからだ

六年生達は我が強すぎる

それゆえ全員そろってなんてのは基本しない

単独で追うことも十分できるだろうが、相手は鴇である

相対であれば個人戦だろうが、捕獲となればペアを組んでの方が何かとやりやすい

あのややこしい六年生を一人で二人も相手にせねばならない鴇は単純に気の毒であった


(まあ、僕らだってそうも言ってられないんだけど)


そんなことを思いながら、雷蔵は話を振ってきた勘右衛門に視線を戻した

あまり時間をここでかけすぎるのもよくない

とりあえず皆の意見に耳を傾ける


「昼間みたいに足止め役と追う役分かれるか?」

「いや、足止め役は今回は要らない」

「?どうして」


八左ヱ門の提案をすぐさま却下した三郎に視線を移せば、ガリガリと髪を掻いて三郎が溜め息をつく

三郎は今回の追加演習の件、乗り気でないというのははっきりと見てとれる

それはそうだろう、鴇が怒ったことに対しては三郎も、そして勘右衛門も自分達に非があると思っているのだから

ましてや正論を展開する鴇から勝ちを奪いにいく話だ 気が乗らないのも当然である


「認めたくはないが、どうにも六年生の足止めは上手くいかない 大きな効果を期待できないなら、委員長を探す方に専念した方がいい」

「六年生を迎え撃つ準備するのもそれなりに時間かかるし、空振る可能性の方が高いしなぁ」

「下手すると逆に利用されかねない そんなのは御免だね」


やはり一学年の差というべきなのか、十分な前準備ができないなかの突貫の作戦は付け焼き刃に近かった

昼間の苦い記憶は奥底に押し込んで、なるほどねと雷蔵は頷いた

恐らくそういった奇襲を成功させれるのは三郎と勘右衛門くらいだろう

自分も兵助も突発的な作戦実行はあまり好みじゃないし、八左ヱ門も得意ではない


「お前らはさ、嘉神先輩がどう動くと思ってんの?」


そんななか、ズバリと問うた八左ヱ門の声が妙に響く

それは雷蔵も聞きたいことであった

鴇の行方を闇雲に追うつもりは毛頭なく、それは委員会の後輩でこういった実践を鴇とよく共にした勘右衛門と三郎の意見を仰ぐべきなのだ

言うならば三郎と勘右衛門は嘉神鴇の後継者である

彼の行動原理や癖をよく知っている

八左ヱ門の言葉に、三郎と勘右衛門がチラリと視線を交わす

どちらから、と探り合っているのか少しの間を開けて、それじゃと勘右衛門が口を開く

足りないところの補足よろしく、と言えば三郎も心得たとひらりと手をあげる

やはりこの2人、もう目途は立っているようだ


「山全体を探る必要はない 鴇先輩が入った一時間弱分だけ、まず山を登る」

「何で?」

「裏山は五年生も六年生もよく知り尽くしている それに鴇先輩は今回は追われる側だ 低地よりは様子の掴みやすい高地を好む」

「進めるだけ進んで、そこからきっとある程度の罠を張る いくら委員長が追われる側と言ってもあの人はただ息を潜めてやり過ごすようなことはしない」

「?交戦するメリットなんて鴇先輩にはないのに?」

「そうだ 私達相手に逃げの一手なんて絶対にとらない」


はあ、とため息をついて乾いた笑みを勘右衛門が浮かべる

とりあえず俺たちも進もうかと山を指さし、駆けながら話は続く


「まず、この鬼ごっこをしていることを庄左エ門と彦四郎が知っている」

「?何でそこで庄左エ門達がでてくるんだ?」

「あの二人の前では、鴇先輩は絶対に負ける姿を見せない」

「なら尚更逃げの一手の方がいいじゃん」

「馬っ鹿だな あの人がそんなせせこましい作戦とると思ってんの?」

「せせこましいって…」

「今回の発端は学園長が鴇先輩を煽ったことによるけれど、鴇先輩だってそれを利用して何かを得ようとしている」

「?うん」

「それには鴇先輩自身が何か能動的な行動をとった方が学園長にもとやかく言われない」

「それって、交戦もしなかったならそりゃお前が勝つだろう、って言われるのを避けたいってこと?」

「忍の世界では危険を回避することの方が評価高いけどね」

「…そもそも、委員長は殲滅戦が得意だ」


黙って勘右衛門の話を聞いていた三郎が不意に口を開いた

駆けながらもどこか周囲を気にしている三郎は少し視線を遠くに送っている


「追手がくるならやり過ごすより迎撃する あの人は単身ならそういう選択肢を普通にとる」

「俺たちが同行する時は基本やり過ごすことが多いんだけどね より安全な策をとるから」

「もともと、委員長はそんなに気が長い方じゃない 煩わしいものはさっさと片付けてしまう人だ」


突然三郎が周囲に止まるよう片手をあげた

ピタリと息が揃うように止まった集団は三郎の挙動を見守る


チリ―ン―………


進む先の右手側、ずっとまだ奥の方からだが、かすかに鈴の音が聞こえる

あっちか、と歩を進めようとした八左ヱ門に三郎がまだ止まれと掌を差し出す


「…どう思う、三郎」

「微妙」

「だよなぁ」

「微妙って?」


むむ、と足を止めた学級委員長コンビに雷蔵が尋ねる

姿こそ見えないが、鴇の首に巻かれた鈴の音がするのだ、あちらに行くしかないのではないだろうか


「まだ山に入って30分程度、鴇先輩の鈴の音が聞こえるにはちょっと早い」

「委員長がいろいろ仕掛けながら動いていたら妥当な頃合いな気もするし、誘い込まれてるような気もする」

「…悩んだって仕方ないんじゃないか?手がかりはあの音くらいしかないんだし」

「それはそうなんだがなぁ」

「…勘右衛門も三郎も、何をそんなに躊躇してるの?」


普段の三郎達に比べれば大分歯切れが悪いことに気付いた雷蔵が思い切って口にする

その言葉に気まずそうに互いを見合わせた2人が隠しても仕方がないかと小さく溜め息をついた


「今日の鴇先輩、かなりマジなんだと思うんだよね」

「?よくわかんないんだけど」

「気を抜いたら全滅させられる それくらいには今日はキレてるって話」


そこにあったのは、普段の飄々とした様子の2人ではなく、じわりと冷や汗をかいている勘右衛門と三郎であった


「こんな言い方、自分達でしたくないが私達の相手は片手間くらいにしか考えてないだろうよ」

「片手間って…」

「六年生全部敵に回して、それでも勝ちを狙ってる 完全に目が据わってたし、私達相手に体力を使うつもりなんてさらさらないな」

「…ちょっと、侮られすぎじゃないの?」

「そう思うだろう?でも、今日の委員長はヤバい」

「へぇ、お前からそれだけ評価してもらえるというのは、なんとも光栄だね 鉢屋」

「!しまっ…」


リンっ!


上空から降っておりた声を確認する前に、突如背後に降り立った気配に三郎が慌てて振り返った

五年生が固まっていたその真後ろに突然現れた鴇がニッと笑って右手を前に出す

鴇の細くて長い五本の指の間に見えたのは煙玉のようなものであった

ただ、それが煙玉とは限らない

勢いよくソレを振りかぶる様を見て、三郎は思わず声をあげた


「離れろっ!!」

「!!」


その声を機に五人が咄嗟に後ろへと跳躍した

どちらにしろ距離を取らねば至近距離での被弾になる

良い方向に転ばぬことは明白であった

ところが、


「びっくりし………うわぁっ!!」

「雷蔵、大丈夫かっ……うおっ!?」


立ち込める白煙のなか、雷蔵と八左ヱ門の悲鳴に近い声があがった

状況は見えないが、何かが起きているのははっきりしていた

どうする、と悩む三郎がハッと何かに気付き、咄嗟にしゃがみこめばかなりの勢いで頭上を何かが過ぎった


「やあ、これは躱されたか」

「…!貴方って人は!」


ブンっ、と苦無を握った腕を大きくふるえば、真近にあった気配が少し離れた

リン、リン、リン

短く、小さく鳴るその音が少し上空へと遠ざかるのを確認して三郎は声をあげた


「勘!いるか!」

「もっち、ろん!」


ガキン!と鈴の音の行く先で刃物が鈍く交錯する音が聞こえた

白煙が少しずつ晴れて、目が馴染む

木の上、その場から離脱を試みたと思われる鴇とすぐさま攻撃に転じた勘右衛門が相対していた


「仲が良いことは咎めはしないが、井戸端会議よろしく話に没頭するのはいかがかと思うよ」

「やーな予感はしてたんですけどねぇ こんなに早く接触してくるのは想定外で」

「こちとら余裕がないものでね 早めに嫌なものは片付けようかと」

「そこまでは予想できてましたー」

「なら尚更悪いんじゃないの?まあ、こちらも少ししか取れなかったけど」

「初っ端から3人狩ろうなんて、欲張りですよ」

「3?」

「?」

「ふふ、鉢屋はやっぱとれなかった お前の言う通り、狸の皮算用はいかんね」


じゃれ合うような会話が続いているが、両者手は一切緩めていない

隙あれば鴇の首の鈴に手を伸ばそうとする勘右衛門を笑顔で躱す鴇の動きは流れるソレである

先ほどだって三郎が躱さねば頭部に鴇の蹴りが入って脳を揺らされただろう

一撃必殺で沈めにかかってきたその動きに今更寒気がする


「さて、そろそろお暇するよ」

「えー、もっと構ってくださいよぉ」

「やだね お前達はもっと嫌なものを呼び寄せる」

「へ?」


一瞬の隙をついて勘右衛門の腕を掴んだ鴇に、しまったと勘右衛門の顔が引き攣る


「着地、気をつけろよ 尾浜」


ブン、と放り投げられて勘右衛門は慌てて身を捩った

投げられた先には三郎がいる

その横にでも降りて仕切りなおすかと思っていた勘右衛門であったが


「!な?三郎?」

「やられた!」


その場から離れるように自分に向かって跳躍してきた三郎に勘右衛門が驚けば、じっとしてろと三郎が勘右衛門を抱えて前へと飛んだ

深い、実に深いため息をついて着地した三郎に抱えられて、勘右衛門は眉を潜めた


「おい、三郎 鴇先輩追わないとまた、」

「駄目だ 仕切りなおさないと簡単に返り討ちに遭う」


白煙が、晴れていく

鴇の気配はもう完全に消えて、残された現状だけが露わになっていく


「ごめーん、三郎 勘右衛門っ…」

「くっそー…!」


まず目に入ったのは吊り上げられた雷蔵と地面に縫いつけられた八左ヱ門

雷蔵は右足に括りつけられた縄に引き上げられて逆さづり状態である


「全部、委員長の読みどおりだ あそこでまず我々が足を止めることを前提に、周囲に罠を張った」

「…咄嗟に躱すために跳ねる距離と方角 俺たちの真後ろに降り立って距離をとらせようと動けば、自然と距離は予測できる」


人間の跳ねる距離なんてのはおおよその目安が立つ

まず一人、その着地点に吊り輪の原理を使った罠をしかけておけば、簡単に捕獲できる

そこに運悪くかかったのは雷蔵であった

勢いよく跳ね上げた罠に空へと連れていかれれば、近くにいた八左ヱ門が咄嗟に解除へと動く


「二重とは思わねぇじゃん、普通さぁ!」

「委員長の罠なんて、何手先も読んだものしかない」


雷蔵の足を吊り上げた縄を、飛んで追った八左ヱ門がざくりと切ったのだろう

それが2つ目の罠を発動であった

雷蔵の足の輪は二重で、ひとつは目立つ太い縄のもの

もう一つはよく見ると鉄線を使ったものである

1つ切ったところで解除なんんてできず、雷蔵は吊り上げられたまま

そして、


「上へと飛んだ八左ヱ門に対して、真下に落とす罠なんて 趣味悪いよね…」

「逃げようがないしなぁ」


真上から網を落とし、四方には外れぬよう重しのついた杭まで落とすという念の入れよう

吊り上がった雷蔵と、地面に縫い付けられた八左ヱ門は対極的であった

ブチっ、と鉄線を三郎が切って雷蔵を降ろせば、雷蔵が申し訳なさそうにアリガトウと礼を言った

八左ヱ門に纏わりつく網を勘右衛門が引っこ抜きながら周囲を見渡す


「兵助は?」

「さあ、委員長追ったか?」

「おい、5年」


1人足りないと見渡せば、ガサガサと茂みから人の気配

思わず身構えた三郎達の前に出てきたのは、潮江文次郎と立花仙蔵の6のいコンビであった


「立花先輩」

「鴇が来たな」

「……いや、その」

「これ、落ちてたぞ」

「!兵助っ」


そう言って文次郎がドサリと三郎達の前におろしたのは、気を失った兵助であった

目立った外傷はないが、ユサユサと揺らせど兵助が起きる気配を見せない

思わず何をしたと見上げれば、仙蔵が肩を竦めて答える


「そこの木の陰に寝かせてあった それだけ揺らしても起きんのだ 薬でもかがされたんだろう」

「おいおい…5年は学級委員長委員会コンビが残ってるだけか?」

「…やられたっ…」


文次郎達の問いにも応えず、勘右衛門が悔しそうに空を仰ぐ

先ほどの交戦、少し妙であったのだ


『初っ端から3人狩ろうなんて、欲張りですよ』

『3?』


勘右衛門が言ったその言葉の、何かにきょとりとした鴇のアレは


「鴇先輩めっ…!」


既に雷蔵・八左ヱ門・兵助と5年の過半数を沈めた後だったのだ

そして三郎を次に狙っていたのだ

鴇としては「3」ではなく、「4人目」で失敗したということだ


「鴇は殲滅戦が得意だからな 2人残っただけでもまだマシだ」

「全っ然嬉しくないですけどね」

「…それで?漁夫の利を狙いに立花先輩達は来られたというわけですか?」


険しい表情で黙っていた三郎が、ポツリと呟く

その言葉にはっ、と勘右衛門が顔をあげれば、仙蔵が静かに笑う


「あわよくば、くらいにしか思ってなかったがな」

「まず狙うならお前達からだろう 俺たちだってそうする」


要するに、この6のいコンビは5年を囮に使ったのだ

追手を減らせば明らかに自分の負担が減ることがわかっている鴇は、まず手始めに自分達を狙う

それを見越していた仙蔵たちは鴇ではなく多く目立つ自分達を探していたのだろう


「まあ、一足遅かった 鴇に勘づかれたな」

「もっと奥まで来ると思ってたんだがな お前達がこんなに手前にいるとは予想外だった」

「大方、5人集まって討議しながら進んだのだろう 狙いやすいから次からはやめておけ」


その会話の果てに、唐突にフラッシュバックする

突然打ち切られた戦闘の、最後の言葉はこうだった


『やだね お前達はもっと嫌なものを呼び寄せる』


カッ、と身体の血が熱くなる

鴇は全て読んでいたのだ

6年の誰かが鴇自身でなく、5年の跡を追って探索の手間を省こうとすることを

だから入山して大分手前で自分達を仕留めにきたのだ

本来進むべき距離の手前、まだ山の地形を把握しきらない距離

自分達5年生の行動パターンを読んで、一気に殲滅を狙って

鴇が気にかけていたのは自分達ではない

自分達の後ろに控える6年生達の存在で、自分達は前段くらいにしか見ていないのだろう

流れるような罠も、あわよくば三郎まで狩っていこうとしたその動きはそうとしか思えない

ザクザクと、八左ヱ門の罠を切りながら勘右衛門の目が据わっていく

仙蔵と文次郎が去り、潜んでいた土井半助が雷蔵たちの失格を告げるなか、勘右衛門が三郎の隣に静かに立つ


「あのさぁ」

「…なんだ」

「ちょっと本気でやりたいんだけど」

「………………」


ちらりと三郎が勘右衛門を見遣れば、そこには委員会で見慣れた勘右衛門がいた

目が据わり、愛想のひとつもなくなったその表情は、遠慮のなくなったソレである


「俺、なんか勘違いしてた 鴇先輩は学園長に怒ってたんじゃなくて、俺たちにも怒ってた」

「…そうさ、委員長は私達にお灸を据えるつもりだ」

「端から完全に殺りにきてた そりゃこうなるわ」


周囲の鴇が仕掛けたであろう罠を全て暴けば、鴇の本気度がうかがえる

先ほど勘右衛門は鴇が3人ではなく4人、狩っていこうとしてたと思っていた

しかし、そうではない

勘右衛門が投げられた先にも罠があり

それに気づいた三郎が勘右衛門を助けたのだ

三郎を仕留めきれなかった、それだけが鴇の誤算だった

罠ではなく、直接仕留めにきたのもそういう意図だったのだろう

それだけ鴇は三郎を評価していたのだ


「私を仕留め終えた前提であれば、勘右衛門も封殺できてた」

「総狩りだなんて、舐められるにもほどがある」

「しかし、委員長にはそれができる力がある それは事実だ」


自分達は嘉神鴇の力量を甘く見ていたわけではない

ただ、そこまで本気でくるとは思っていなかったのは自分達の油断だ

鴇が目指すのは完全勝利だ

覚悟のない奴はさっさと消えろと言わんばかりの戦法が、今になって込み上げてくる

口布を当て、三郎と二言三言と取り決めを交わす

委員会の任務でしかやらない本気のソレを三郎も黙って交わす


「今回は鴇先輩が全面的に正しい それはわかってる」

「ああ」

「でも、簡単にとられるのは御免だ」

「もちろんだ」


再開を命じられて残ったのは三郎と勘右衛門の2人

再び静かになった山の中、音もなく2人はその場から静かに消えたのであった






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