- ナノ -


はじめに


忍術学園には食堂がある

主は食堂のおばちゃんであるが、彼女は住み込みの職員ではなく、近隣から通ってもらっている

朝と昼だけ食堂は開かれているのは実はここ数年から始まったものである

実は昔は朝昼晩と3食提供いただいていたが、学年があがるにつれ、生徒も職員も忍務なり委員会なりとなかなか都合がつかず

いつまでも片付けれない上におばちゃんの私生活にまで影響が出だしたため、晩は生徒達で自炊する制度を取り入れたのである

さてさて、この食事当番 どうやって決めているかというと



「おーい、今月の食事当番が貼りだされるぞー」

「…先月は偉い目にあったからなぁ」


ガヤガヤと、食堂前の廊下に貼られた当番表に人が集まるのが月末の習慣であった

生徒・そして教師皆にとって死活問題であるこの食事当番は毎月ある種のイベント感がある

何せこの当番表、基本は無作為に抽出されたメンバーによるものなのだ


方法はこうだ

生徒達の名前が書かれた用紙の入った箱が2箱

片方は下級生だけ

もう片方には上級生だけが入っている

そこから1日分として2人ずつ、計4名の忍たまがクジのように引かれる

教師も含めて約50名ほどの夕食を作る人数としては妥当かは微妙だが、あまり人数を投じすぎるのもということでこの人数らしい

下級生は下準備等を中心に、上級生は献立やら分量計測を中心にその日の夕飯を作るのである

ちなみにだが、下準備と一言で言っても50名分の料理、となるとそれなりの量が必要だ

下級生については、手が足りない時は各自の伝手で補充するのであれば、そこは臨機応変にやっていいことになっている



「もう月末か」

「あっという間ですねぇ」


バタバタと、生徒達が廊下の貼り紙目掛けて走り出すのを横目で見ながら、鴇が小さく欠伸をした

ここしばらく、徹夜が続いたこともあり、目の下にはうっすらと隈が出来ているが、仕事としては無事納品が終わった

昼飯でも食べるかと手伝ってくれていた三郎と連れだって食堂へとやってくれば、何やら騒がしく、月末であることを思いだした


「毎度思うんですが、何だってこの食事当番のクジ、1年生の持ち回りなんですか」

「きちんと考えて選出したら、一部のメンバーに集中するだろ」

「まあ、そうですが」

「あと、外では美味いものばかり食えるとは限らんからな 当たりもハズレも慣れておけという話」


昔は1年から6年で持ち回りでクジを引いていたが、学年があがるにつれ、いわゆる「ハズレ」がない当番表ができる傾向にあった

生徒達だって、自身の口に入れるものは美味いにこしたことはないからだ

帳尻合わせがされたその当番表は、料理ができる忍たま達の負荷が高く、これは不公平だという声があがった


「まあ、負担というほどでもないけどな」

「そうですか?組み合わせによりません?」

「それはごもっとも」


鴇も三郎も、いわゆる「当たり」枠の忍たまであるからか、別に当番自体は苦ではない

そう、この食事当番で重要なのは「組み合わせ」である


廊下に当番表が貼りだされた瞬間、わっ、と歓声や叫びがあがった

今月はいつにも増して騒がしい

顔を見合わせて三郎と鴇も背後から当番表を覗き込むのであった




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