- ナノ -


01 物語のうらがわに記す


鴇は微妙に悩んでいた


(いや、まあ 悩みと言うほどではない)


少し腕を組んで紙面に筆を片っ端から走らせていく

1つ、2つ

3つ、4つ

サラサラと朱線と墨を塗りこみ、次々と仕上げていく

全部で20

そのなかの5つまで手をつけたが鴇はやはり眉を顰めて筆をそっと置いた

ここまでに要したのはわずか10分

立ち上がり自室の障子を少し開けば、ミンミンと蝉が五月蠅い


(どうするか …いや、どうするも何もなぁ)


少々悩んだが、鴇は溜め息をついて自室をあとにしたのであった







「山田先生 嘉神です ご在室でしょうか」

「おや、鴇か 珍しい 入りなさい」


1年の実技担当である山田伝蔵の自室へと、鴇はやってきていた

今日はまだ夏休み中だが、明々後日は登校日である

伝蔵は先週までは不在であったが登校日に備えて早めに戻ってきていると見込んでの来室であった

案の上、障子の向こうから返ってきた声に鴇は少々安堵した


「失礼します」

「お前さん、夏休みは帰らずか?」

「いえ、盆だけ帰省させていただきました」

「何だ もっとゆっくりしてらっしゃいな」

「まあ、帰ってやることも大してありませんから」


長期休暇になっても基本鴇が学園を離れないということは教師たちはよく知っていた

そもそも帰る実家というものが鴇にはもうない

大木雅之助の待つ家も、特段遠いものではないためわざわざ帰るものでもないのであろう

来年は卒業してもう此処にはいない、というのは寂しいものではあるが、それには伝蔵は触れぬようにしていた


「先生はいつお戻りに」

「昨日の夜中だ 少々家をでる時に揉めてなぁ」

「珍しいですね」

「その原因というか、お前に手紙を預かってきておる」

「?私ですか?」

「利吉からだ」


思い出したと荷物から取り出してきた手紙を受け取れば、少々厚みがあった

ただ、ここで読むと言うのは主旨に反する

それを丁重に受け取り、懐にしまえば伝蔵が溜め息交じりに呟いた


「鴇 お前さん、利吉から誘いをうけていなかったか?」

「誘い、ですか?」

「………いや、よい 思いつくものがないのであれば、またアイツの一方的なものだったのだろう」

「?はあ、」

「ところで、何か用でもあったか?」


キョトンとした表情を見せた鴇に、伝蔵はヒラヒラと手をふった


『父上、必ずですよ!必ず鴇に読めと伝えてくださいよ!!』

『ええい、五月蠅い お前また、鴇に無茶を言うんじゃなかろうな!』

『何が無茶なもんですか 全く、あの子は肝心なところが抜けている!』


脳裏に蘇るのは息子の執拗な念押しの声であった

普段は涼しい顔をしているのに鴇が絡むとどうにも感情的になりやすい

ただその一方で鴇は何の件かよくわからぬらしい

とりあえず来訪の用事を鴇は済ませることにしたようだ


「先生、不躾を承知でお尋ねするのですが」

「何だ 改まって」

「これ、なのですが」


抱えてきた巻物数本を伝蔵の前に出せば、伝蔵が意図がわからんと怪訝な表情をみせた

鴇が微妙な表情をしているからだろう、伝蔵も慎重にそれに手を伸ばす


「また学園長からの無理難題か?」

「いえ、そういうのは慣れてますので何とも思わないのですが」

「それはそれでどうかと思うがね では、これは?」

「私に出された夏休みの課題です」

「?ふむ」


開けても、という伝蔵にどうぞと鴇が頷く

中身を眺めて黙って顔をあげた伝蔵に少々気まずそうに呟いた


「その、私何か粗相をしましたでしょうか?」

「?」

「いえ、今年の夏休みの課題は個人の能力補強を、ということで先生方が練られたと聞いていたのですが」

「何だ、歯切れが悪いな」

「っ……」


腹をきめた鴇が、背筋を伸ばして正面から巻物を突き返す


「簡単すぎます」

「ほう」

「残りもできるのですが、時間の無駄ですね」


割り切った鴇が残りの巻物を返却した

ただでさえ鴇はこういった暗号解読が得意だというのにこれらは何なのか

せいぜい三年生くらいが頭を悩ますレベルのものではないだろうかというのが素直な鴇の感想である

徐々に難易度があがるのだろうかとも思ったがそうでもなく、パラパラと残りも見てみたがさして変わりそうにない

こうなってくるとこれを自分にと出してきた先生方の真意の方が気になってこうやって直接やってきた次第である


「……………」

「何か意図があったのでしたら申し訳ありません 汲み取れておりません」

「いや、…これは…」


パラパラと同様に残りの巻物を捲った伝蔵も眉間に深い皺を寄せている

少し待て、と言って伝蔵が廊下へと出ていく

数分後、戻ってきた伝蔵が難しい顔をしてこう言った


「鴇、すまんがお前も来てくれ」、と













「ん?鴇 どうした」

「いえ、ちょっと山田先生へ相談事がありまして」

「呼ぶか?」

「いえ、ここで待つように言われております」

「そうか」


職員室に訪れると、ゾロゾロと教師陣が集まっている最中であった

鴇は自分の立ち位置からこうやって先生方の緊急会議に召集されることも多々ある

生徒達への情報伝達、混乱が起きないためにも先に説明を受けることも珍しくない

伝蔵に連れられてきたとはいえ、イマイチ意図がわからず教室の入り口付近で正座して待機していれば、野村雄三が声をかけてきた


「登校日を間違ったかと思ったぞ」

「まさか 家でやることもないので、少々早めに戻ってきた次第です」

「大木雅之助はどうした」

「別にどうも 久しぶりに組手を付き合ってほしいと頼みましたが、暑いからパスだと断られました」

「ものぐさめ」

「じゃあ雄三先生に相手してもらうからいいと言いましたら、何やらムキになりまして 結果付き合ってもらえましたけどね」

「…しょーもない男だ」

「ああ あと、今年はラッキョウの出来がよかったからといくらか預かって…」

「鴇、二度は言わん 私の前でその話題はやめなさい」

「そうでした 失礼しました」


これまた苦々しい表情になった雄三に、失言だったと鴇は口を閉じた

雄三は宿敵である雅之助の情報を欲しがるが、そうなると嫌いなラッキョウの話も漏れなくついてくることにそろそろ気付いてほしいものである


「雄三先生は、何の件かご存知ないのですか?」

「詳細は知らんが、夏休みの課題がどうのという話らしい」

「…やっぱり物言いはまずかったか」

「ん?どういうことだ?」


しまったなと呟いた鴇に雄三が首を傾げて事情を問う

伝蔵は事務主任の吉野作造と何やら真剣な表情で話し込んでいる

待ち時間ということもあって鴇は事情を雄三に説明した


「…と、いうわけですが やはり何か意図があったみたいで 失言だったようです」

「いや、そうではないだろう」


やってしまった、と呟いた鴇に雄三が怪訝な表情をしながら即座に打ち消す

雄三も気休みのような仕草は見せず、事も無げに発したためそこは信じてもよさそうである


「…と、言いますと?」

「お前への課題は暗号文の解読ではなかったはずだ」

「?」

「五年生以上は実技というか、忍務ばかりにした 今さら座学というほど未熟ではなかろう」


雄三いわく、五年・六年の課題はある程度の難易度がありながら、あまりリスクの高すぎないものにするため教師陣で慎重に決めたという

何だったかと考え込む雄三の横に、ヌッと黒い影がさす


「嘉神への課題はオシロイシメジ城の城紋の入った燭台を持ち帰れ、だったはずだが」

「…それはまた、なかなか厄介なものを…」

「容易なものだと課題の意味がない」

「しかもそれなら、準備と往来含めて10日ほど欲しいですけどね」

「それなりの課題だからな お前、こんなギリギリに課題をあけたのか?」

「いえ、早々に確認はしてたのですが、内容的にまあ1日あれば終わるかと 後回しにしなければよかった」

「片手間にではなく、それなりに真剣に取り組んでほしいところではあるがな」


五年い組実技担当の木下鉄丸がどかりと鴇の隣へと腰を落ち着け、会話へと加わる

学級委員長委員会には五年生が尾浜勘右衛門・鉢屋三郎と2名所属しており、また久々知兵助も鴇とは関わりが深い

その故か、木下とも鴇はよく話をする

鴇の課題内容を正確に記憶していた鉄丸の言葉に、鴇自身は口元を引き攣らせていたが、先生方はあっけらかんとしたものである


「ただ、そんな課題じゃなかったんですよね」

「しかし、それで了承もだした お前、何をやったんだ?」

「私のところに届いたのは暗号文の解読ですね」

「…それは三年生に出した課題ではな」



「「宿題が入れ替わっている!!?」」


怪訝そうな表情をみせた鉄丸が鴇の課題を問うたのと同時に一際大きな声が室内に響いて

皆が一斉に声の方へと視線を向けたのであった





事の始まりは、今朝、吉野作造が事務室の棚の下から1枚の半紙を見つけたことから始まった


(ん?何ですかね これは…)


事務室は物が多い

備品やら過去の資料やらが多く、この棚にもかなりの量の書類が詰め込まれている

半紙の角数ミリがなんとか見えていたため気付いたが、この棚に用がなければ到底気付かなかったであろう


(…まーた 小松田君でしょうかね…)


作造自体は年度別に仕分けたりときっちり管理をしているが、ここにはもう一人事務員、それもへっぽこ事務員がいる

名を小松田秀作という

いつもの彼の起こす騒動に巻き込まれることに慣れてしまっているといえば慣れているが、毎度こう胸というか胃をきりきりと締め付けるような真似はやめてほしい

事務仕事なんてのは、期限厳守・正確でしっかりとした管理を求められるものばかりである

大きく溜め息をついて作造はその半紙をずるりと棚の下から引きずり出した

いっそこのまま見なかったことにしようか、という考えが過ぎったのは内緒である

紙に書かれていたのは指示書であった


『オシロイシメジ城の城紋の入った燭台を持ち帰れ』

(これは、)


これは夏休みに入る前に耳にしたことのあるものである


(そう、これは確か生徒に出した夏休みの課題だ)


そこからの作造の動きは早かった

それはもう、無駄なことは何一つしていない

少し早めに学園に戻ってきていた土井半助に声をかけ、通りすがった厚木太逸にも手伝ってもらい、まずは学園のどこかでうろついている小松田秀作の確保へと走った




「なんと……!」

「面目次第もありません…!!」


時は重なり、山田伝蔵が作造を訪ねてきたのと大体の起きた事柄を作造が把握したのはほぼ同時であった

ただし、この時点では作造は起きた事柄がもっと極小的なものだと勘違いをしていた


「嘉神君に配布した課題の封筒が、空だったと思われます」


この課題は六年ろ組嘉神鴇に出されたもので、恐らく彼の手元には空の封筒が配られてしまったのだろう、と

だから作造は、鴇の課題が何だったかを伝蔵が確認しに来たのと同時にこちらの不備を速やかに謝罪することにした


「私から嘉神君に謝罪をします 彼の宿題提出が滞ることについては、ご配慮いた…」

「…吉野先生、落ち着いて確認をしてほしいのですが」


何か察するものがあったのだろう、伝蔵もまた額に脂汗を浮かべて申し訳なさそうに口を開いた

そして気付けば、後方では少し困った表情で嘉神鴇が静かに待機しているではないか

言い方が悪いが、これがもう少し厄介な生徒が相手であれば、揉めたであろう

やれ、宿題免除だ そちらの不備に付き合う必要はないだと宿題から逃れようとする足掻きがあるかもしれないがここは穏やかで定評のある嘉神鴇が相手だ

そういう意味では大分作造の胃痛はマシになったが、伝蔵の様子が何ともおかしい

いまひとつピンとこずに作造は首を傾げた


「課題が、入れ替わっているかもしれません」

「は?」


実はと話を切り出した伝蔵の言葉は、作造の想定を上回っていたのである

パラパラと、資料を捲り先ほどの話に紐づくものを探す

暗号解読、三年生程度のものではないかという鴇の言葉を頼りに確認すれば、それは三年生の富松作兵衛に出された課題であった

どちらかというと座学や情報解析が苦手な富松に集中的に頭を使わせたいと出されたソレは、最高学年であり常日頃からガッツリ難解な暗号解読を学園長から任されている鴇にとっては何てことなかっただろう

愕然とする作造の肩をポンポンと慰めるように山田伝蔵が叩き、次に始まったのは小松田秀作への取り調べであった


「実は、転んだ表紙に中身をぶちまけてしまいましてぇ」


すみませぇん、と間延びした声で謝った秀作に周囲がシン、と静まる

もともと、作造が課題が棚の下から出てくるコレに心当たりがないかと聞いた時、秀作は落としてしまったのだと答えている

作造としては、課題を学年と名前を照らして封筒に詰めていった

ここを小松田秀作にやらせたところで内容を理解してないこのへっぽこ事務員がとちることは目に見えていたからである


(配達さえも、ままならぬかっ…!!)


しかも事務室内で転んだということは、外にすらでていない第一歩で転んだのではないか

確かに落とした、という言葉も間違いではないし、嘘ではないのだろうが正確に物事を伝えるということを知ってますかコラと言いたくもなる

怒りと絶望で顔色がおかしくなってきた作造が、震える声で尋ねる


「そ、それで君はどうしたのです?」

「ほぇ?」

「ぶちまけた後です…!」


一言、一言弁解させてもらえるなら吉野作造はとても穏やかな教師である

日々、小松田秀作の事務ミスに耐え、後始末を一手に担い、再発防止に日々頭を悩ませるとても忍耐強い教師である

その穏やかさは表情から滲み出ており、仏の吉野とまで生徒達が影で呼んでいる

それほど定評があるのだが、鴇は知っている

仏の顔は三度までであり、小松田秀作はその三度をとうの昔に使い切っているということを


「こう…扇の形にずざぁっ、と広がってしまったのでぇ このままズズズっとまっすぐ入れていけばすぐ戻せるなぁっと」

「…………それで?」

「はじめはぁ、上手くいったんですけどぉ 広がってしまったところはうまく戻らなくて」

「………それで?」

「あ、でも結構いい感じに戻せたと思うので、大丈夫だと」

「思えるわけないでしょう!!」

「ひえっ!?」

「吉野先生、落ち着いてください!!」

(聞けば聞くほど、泥沼だなぁ)


聞いていて沸々と込み上げた怒りが頂点に達したらしい作造と完全に怒らさえないと事態を重くとらえない秀作のやり取りはある意味いつもどおりである

あまり見慣れてないらしい光景に慌てる木下達を横に、鴇が小さく溜め息をついて吉野の横に移動する


「吉野先生、あまりイライラされては身体に障りますよ」

「止めないでください 嘉神くん 私はねぇ、本当に君には常日頃申し訳ないと思っているんですよ…!」

「そのお気持ちだけで十分です 先生が心を痛めるような話ではありません」

「生徒にそのような気遣いをさせるということ自体が恥です 大体、君達学級委員長委員会はいつも被害者だ…」


鴇が優しく背を擦ったからか、作造の情緒が不安定になっているのかはよくわからないが、ううっ、と呻き作造が鴇へと低く頭を下げる


「学園長からの無理難題を押し付けられ、生徒達の揉め事に巻き込まれ、その上事務のひとつも満足にこなせない我々の尻拭いまで…私が君ならブチ切れて辞表を叩きつけます」

「いえいえ もう、慣れたものですよ」

「それ!それですよ 嘉神君 不遇を君は受容しすぎです 君のその懐の深さは美徳であるが、その一方で心労というものは…!」

「先生、吉野先生 大丈夫ですから まずは取り急ぎの確認をしましょう ね?」


ああ、これは開けてはならない心の扉を開けてしまったと鴇は反省した

鴇としては言葉のとおり、作造には何も怒りはないし、むしろいつもどおりで気の毒にさえ思っている

ただ、作造の方がどうも自責の念が思った以上に強かったらしい

涙声半分と、下手すると小松田秀作を殺して自分も死ぬとまで言い出しかねない雰囲気になってきたと思っていたら、鴇の肩をポンと背後から叩くものがいた

土井半助

苦労人の苦労は、また苦労人が知るものである

言葉なく、チェンジのジェスチャーを見せられて鴇は再び入り口付近に戻った

半助もまたいろいろと心労を抱えているというのはよく知られているからか、よろよろと作造が半助に肩を支えられながら状況整理の場へと戻る


「鴇」

「……何でしょう」


静々と戻った鴇を隣に座った雄三が呼び止める

鴇はギクリと肩を震わせ、雄三と目を合わせられずにいた


「お前、また事務の仕事を手伝っていたな」

「……少しですよ」

「鴇 私に嘘をつくな」

「……吉野先生の胃に穴が開かないようにというのと、吉野先生の怒りが頂点に達して小松田さんの腹に穴が開かないようにというのを気にかけると、お手伝いは必須でして」

「それは生徒の領分を超えているだろう」

「ほら、人間、得意分野というものがあるんで 我々学級委員長委員会はある意味事務はがっつり得意分野で、」

「鴇 そこからどう取り繕う」

「…返す言葉もございません」


ははは、と困ったように笑う鴇の横顔を雄三は盗み見た

何も悪いことをしてるわけではない

鴇はこうして時々教師たちの悩み相談にものっているし、手伝いもそこそこしている

これが嘉神鴇という忍たまの良いところなのだろう

静かに傾聴するそれは、とても穏やかな空気を纏い

いつの間にやら愚痴るつもりがなかったところまで愚痴ってしまう

鴇がこういった情報をまた本当に誰にも漏らさないから信用度はさらにあがる

数年間、学級委員長委員会委員長の役を担ってきた男は少々のごたつきなど慣れたものだ

鴇にしてみれば、本当に大した労力ではないのだろう

ただ、それは鴇をいい意味でも悪い意味でも大人にしてしまったと雄三は思っている

少なくとも学園にいるうちは生徒として過ごさせたいと思っている雄三からしてみると、この状況はあまり好ましくないのだ


(と、言いつつ 私も鴇に愚痴を零している輩の一人だが)


「雄三先生?」

「鴇、ここでは野村先生と呼びなさい」

「…失礼しました」


こほん、と咳払いをして鴇が背筋を真っ直ぐに伸ばす

多分我々は、鴇との距離が近すぎるのだ

自分の半分ほどの背の頃から見てきた彼に情が移ってしまっている

それが駄目だということは断じてない

雄三としては鴇に自分のもてる愛情を惜しまず注いできた自覚はあるし、そこに誤ちがあったなんてのは一切思っていない

ただ、鴇が抱える苦労の半分以上はこの距離感が生み出したものである

学園長の我儘然り、教師陣が困った時にまず鴇を呼び出し相談するのも然り、

本来彼が抱えるべきものではないものが多いのもそのためだ


「山田先生、これからのことを決めましょう」

「そうですな それでは、」


気を引き締め直した雄三の言葉に我に返り、伝蔵がぐるりと部屋を見渡す

教師はそろっており、皆分担すれば動ける状態である

それを見た伝蔵が次々と役割を告げていく

そして、


「鴇 お前にも仕事を頼みたいが、構わないかね?」

「問題ありません 何なりと」

「それでは、」


山田伝蔵が告げた言葉に、鴇も了承の意を返すのであった





>