- ナノ -


二つの心臓を滲ませて(長次)


その日、鴇はいつも通り長屋の廊下を歩いていた

季節は真冬

自室に戻るための廊下は凍えるくらい冷たくて、鴇が吐く息も真っ白に融ける


(今年は、暖冬を期待してたのだけどなぁ)


夏が想像以上に暑かったのだ、冬は多少手を緩めてくれたっていいのにと1人愚痴って歩を進める

足袋を履いてはいるものの、キンキンに冷やされた廊下は布越しでも痛いくらいに冷たい

今日は早々に学園長先生からの依頼も片付けた

あの人は時折突拍子もないおつかいを言いつけてくるものだが、今日はいくつかの手紙の返信を頼まれたくらいで大したものはなかった

もっとも、手紙なんてのは当人同士でやるべきだと鴇は思うのだが、学園長ほどにもなると社交辞令での手紙のやり取りも多いらしい

どうせ相手方も本人が書いていまいて、と声高らかに笑った学園長にそれではお互い面倒だからやめてはどうかと進言というか本音がポロリと出そうになったのは言うまでもない

大人とはこういった形式ばったものが好きなのだ

本音と建て前、形だけのお付き合い

ただ、それに巻き込まれる側としては少々煩わしいものである

まあ、こんなものは1時間もあれば片付くか、と小さく溜め息をついて鴇は自室へと向かった

その時である


「!」

「長次」


静かに開いた障子とそこから出てきた忍たまに鴇は反射的に声をかけた

同級生の中在家長次だ

鴇の部屋は六年長屋の一番奥で、小平太と長次の部屋を過ぎたところにある

丁度出かけるところだったのか、何やらぐっしょり濡れた忍服を抱えた長次に声をかけながらも鴇は首をかしげた


「…鴇」

「どこか行くのか?…何だ、それ?」

「…小平太が、」


長次が出てきた部屋の奥をひょいと覗いてみたが、どうも小平太はいないらしい

長次の言いたいことがよくわからず再びじっと長次を見つめれば、長次もモソモソと口を開く


「雪中訓練、だ と」

「…この寒いのに、アイツ何やってんだ」

「流石、に風邪を引く」

「から風呂に行かせた?」

「うむ……」

「…で?それは?」

「小平太の抜け殻、だ」

「…片付けくらい一緒にできんもんかね」


要するに小平太が寒中訓練をやってきて、雪に塗れたためグッショリと濡れた制服を部屋に脱ぎ捨てていったらしい

小平太は気にしないのかもしれないが、同室の長次には耐えられなかったのだろう

図書委員会委員長である長次の机周りには蔵書が多い

湿気は厳禁であるし、そもそも床板や畳の腐食にも繋がる

相変わらずかと鴇が溜め息をつけば、長次もそっと肩をすくめた


「それ、風呂場に放り込めばいいよ 子どもじゃないんだ、小平太に洗わせればいい」

「…そう、したいのはやまやま、だが」


小さく笑って言葉を濁した長次に鴇は小さく眉を顰めた

こう告げても何だかんだと長次が洗濯をするはめになるのだろう

自分も長次のことは言えないのかもしれないが、長次は小平太に甘い

それにしたって折角の休日を何だって長次が潰さねばならぬのか、やはり本人にやらせるよう再度釘を打つかと思った時である


「?」


通り抜けようとする長次の横顔を見て、何かが引っかかった鴇は思わず動きを止めた

すっと鼻筋が通り、伏し目がちな視線はただただ静かだ

そんなのは見慣れているし、おかしくも何ともないのだが、


「待った」


条件反射のように長次の手首を捉えて鴇は彼を呼び止めた

どうした、とこちらを振り返った長次の目を鴇はじっと見つめる

長次は何に呼び止められたのかわかっていないのだろう

小さく小首を傾げ、眉を潜めて、そして


「どうし、」

「どうしたはこっちの台詞だよ 長次」

「?」

「自覚、ないの?」

「…何の、」

「長次!!」


長次に何かを告げようとした鴇であったが、バタバタと遠くから走ってくる足音に思わず舌打ちをした

声の主はわかりきっていて、長次と同室の小平太である

遠くから大声で名を呼ぶそれにも鴇は苛立ったし、何よりあいつは


「小平太、うるさ…いっ……何て恰好してるんだ」

「おお、鴇!いいところにいるな!」

「…いろいろ、言いたいことはあるが、お前は先に服を整えろ」

「私はいい!それより鴇、長次を看てくれ!」


駆けてきた小平太は何故か半裸に近い状態であった

半裸というと語弊はあるが、風呂上がりのせいなのか髪はずぶ濡れだし、着物だって整っておらずグチャグチャだ

見ているコチラが身震いしたくなるような寒々しい恰好でやってきたくせ、小平太はそんなことはお構いなしのようすで

ただ、発せられた言葉に意外だと鴇は目を丸くした


「……何だ、気付いてるのか」

「?もちろんだ」


叱りつけるつもりでいた鴇は小平太の開口一番の言葉に少し拍子抜けした気分であった

その様子にどうしたと小平太も首を傾げたが、長次が手にした自分の汚れた制服に気付いて、あ!と声をあげる


「長次 こんなものさわらなくていい」

「…しかし、」

「お前、熱あるんだから寝てろ」

「?」

「やっぱり気付いてないのか 鴇っ!」

「あー…わかったから」


どうにも噛み合わない会話を続ける小平太と長次の間で鴇がパン、と手を叩き


「とりあえず、部屋に入れ」


有無を言わさず自分の部屋へと招待したのであった
















パチパチと、木が柔らかく爆ぜる音がする

部屋の床板の一角を外して小さな囲炉裏に火を灯せば、少しずつ温かい空気へと塗り替わる

難しい表情で仰向けに寝る長次を見て、鴇がそっと笑った


「もっと力を抜いてしまえ」

「……自分の部屋で、寝てれば治る」

「小平太に看病をまかせろって?それは却下だなぁ」

「そうだぞ長次 自慢じゃないが、私はそういうの得意ではない」

「胸を張るような話じゃない」


わはは、と笑った小平太を横目に、鴇が長次の額に乗せた手拭を取り換える

風邪のような咳や鼻炎の症状こそないものの、熱が高い

身体に籠った熱を上手く逃がせない状態の長次は意識がはっきりしているものの具合が悪そうであった

生温い手拭を桶に浸し、ギュッと絞って水を切る

それを何度か繰り返せばまた冷たい手拭いへと戻ってそれを静かに長次の額へと戻す

その冷たさを身震いすることなく静かに需要して、長次が小さく安堵の息を吐いた


「少し、寝てたらいいよ」

「…?」

「身体があったまるものでも作るからさ」


小さく笑って鴇が長次にかかる毛布をポンポンと優しくたたいた

安堵したのか長次がそっと目を閉じれば、それを目にした鴇がさてとと腰をあげた

どこか行くのかとの言わんばかりの視線の小平太に鴇が問う


「小平太、生姜湯作るがお前も飲むか?」

「何、私もいいのか?」

「1人分も2人分もかわらんよ 私も飲む」

「なら飲む 鴇の生姜湯は美味い」

「お前の舌は意外と肥えてるからな そう言ってもらえると自信がつく」

「?鴇の作るものは全部美味い」

「はは、褒めてもこれ以上はでんよ」


自室に備えている小さな戸棚へと足を運んで、鴇がいくつか乾燥させた材料を吟味する

普段から整理整頓ができているからだろう、さっさと選んだそれらを小刀で刻み、すり鉢へと放り込まれるソレは手慣れたものである

長次のために少し灯りを落としているため、囲炉裏の火が主な光源で

その薄暗い室内で見える鴇を小平太はじっと見つめた

静かに作業を進める鴇は大人びた横顔になっていた

男にしては少し長い睫毛と、すっと通った鼻立ち

摺り下ろした生姜と少量の薬草、それらを親指に少し乗せ、ペロリと舐める

赤い舌が少しだけ覗き、それがどうにも艶めいて見えて小平太の心臓が大きく揺れた


「辛っ、蜜いれんの忘れてた …いや、でもこれはこれでアリか?」

「鴇 私甘いのがいい」

「…言うと思った はいはい ちょっと待て」


眉を顰めた鴇とバチリと目が合った小平太は、その抱えた疚しい気持ちから逃げるように鴇に話しかけた

鴇も小平太がこんなことでそんな感情をもったとは思いもしていないのだろう

特に違和感をもつことなく戸棚の中の蜂蜜が入った小瓶を探している

目当てのものを見つけ、トロリと蜜をすり鉢のなかに流してまた鴇がゴリゴリと材料を混ぜ込む


「これを作る時は、いつもこんな感じだな」


何かを思い出したように鴇が小さく笑った

鴇が言っているのは看病の都度、作るからだろう

笑う鴇に対して小平太も口を開いた


「それが飲みたくて、よく鴇に喉がいたいのだとアピールしたもんだ」

「まだ低学年の頃は蜜もなかなか調達できなくて、貴重品だったのにな」

「鴇が作る材料がないと言って、私が山に蜜をとりにいった」

「そしたら蜂に刺されまくって?私はお前に事情を説明したのを後悔したもんだ」


そうだったそうだった、と笑う小平太を鴇は見た

この数年で、私達の手足は伸びた

蜂の巣ひとつ、こうした個室ひとつ簡単に手に入るような環境になって

自分のペースで過ごせるようになった

あの次から次へと押し寄せる嵐のような日々は少しずつ穏やかになり、心臓が痛いくらに鳴るような日々からも解放された

それがいいのかどうかはわからない

力がついたが故の収束なのか、それともあの頃のような感受性の波が穏やかになってしまったからなのか

振り返る過去の日々はとても色鮮やかで、見るもの得るもの全てが鮮烈であった

あの無茶ばかりしていた小平太もすっかり最上級生らしい貫禄が備わった

まだまだ読めないところもあるが、無謀なことはしなくなった

時折見せる真剣な眼差しは、鴇の心臓をざわりと撫ぜていく

真正面から見返すことが年々難しくなっていき、他の忙しさの裏に無理やり押し込む日々が増えた


(かといって、今更これを紐解く元気はないけれど)


湯呑に煉り合せた材料を掬い入れ、その上から湯を注ぎ込む

少しとろみがついた湯と、生姜の香りが柔らかく薫った


「小平太、長次の身体起こしてやって」

「おう」

「大…じょ」

「遠慮するような間柄じゃないだろうに 任せといたら?」


まだ少しの抵抗を見せる長次に、鴇が呆れたように笑う

その表情が下級生達にみせるソレとは違い、屈託のないもので長次は目を細めた


「小平太 そっとだぞ」

「わかっている」

「ああ、ほら そんな腕だけ引っ張るやつがあるか 背中を支えろ」


力強く引かれた腕にスピードがついていけず脳が軽く揺らされた

それに少し眉根をよせれば、鴇が慌てて長次の背に腕を添えた

3人の中でとりわけ線の細い鴇だが、力は男のソレで何ら心配するところはない


「…すま、ない」

「やだな 謝るような話ではないよ」


ポツリと呟かれた言葉に少し驚いて、そして鴇が困ったように笑う

それから生姜湯を飲ませ、薬を飲ませ、着々と準備を進める鴇の動きは早かった

風呂は既に済ませていたからそういった面倒はかけずに済んだが、それでも忙しいことで有名な親友の時間を割くのは心苦しかった


「…鴇、ありがとう」

「ん?ああ、困った時はお互い様だよ」

「…もう、大丈夫だ 部屋で 静かに寝ている」


そう言って、身を起こそうとすれば鴇の動きがピタリと止まった

そして、信じられないものを見るような目で長次を見る鴇に長次も思わず動きを止めた


「………………」

「………………」


鴇は何も言葉を発さないが、視線を逸らさなかった

それに長次もどうしたらよいかわからず固まったままである

それが数秒続いたなか、ゴロリと寝転んでいた小平太が声を発した


「馬鹿だなぁ 長次 鴇が大人しく返すと思っているのか?」


さも不思議そうに、そして当然のように呟いた小平太の言葉を耳にしながらも、長次は鴇から視線をそらせずにいた


「諦めろ 長次 鴇がキレるのは見たくないだろう?」

「………………」

「鴇に任せてゆっくり休め 何かあれば私も鴇もいる」

「…だ、が」

「何が不満だ なかなか快適だと思うんだがなぁ」

「ちょっと、雪集めてくる 氷のうを少し多めに作りたい」


小平太と長次の会話をこれ以上聞くつもりがないのだろう、鴇が何もなかったように立ち上がり、障子に手をかける

おう、行ってこいと言う小平太に鴇がヒラリと手を振って、静かに退室すればその場には長次と小平太だけになる


「長次、大人しくしてろ 鴇の機嫌が悪くなる」

「…鴇も、忙しい」

「お前はどう思ってるのか知らんが、鴇のなかではお前の看病は最優先事項だぞ このまま返すなんて選択肢、鴇には一切ない」

「…………し、かし」

「お前も私も、滅多に体調を崩さんが、崩せば鴇がつきっきりで看病してきただろう」

「……………」

「鴇の気持ちを揺さぶるな アレは思っているよりも怖がりだ」


ふわぁ、と欠伸をして、小平太が長次の近くに座って額の手拭をやり替える

他の看病は下手だが、握力だけは人一倍ある小平太は手拭に一切の余分な水分を残さずやり替えに成功した

よしよし、と満足そうに呟いて小平太が笑う


「自分の知らないところで私達が苦しむのを鴇は酷く嫌がる 特に長次、お前はそういうの隠したがるから余計だ」

「…………私、は」

「私達だって鴇に心配かけまいと思えばそうなるが、アレはそれに寂しさを感じるんだ」


鴇は猫のようだ

普段は特別ベッタリするようなことはなく、時折気まぐれのように戯れて寂しさなどないように凛としている

しかし自身の側から離れようとすることには敏感で、手を貸すことが当たり前のように思っているからそれを拒めばショックがひとしおでかいのだろう

ましてや鴇は長次が好きだ、大好きだ

自分に向ける感情とはまた別に、長次を鴇は特別視している箇所がある

鴇が全力で看病する気なのは言わなくとも知っている

長次は黙ってそれを受けてやるべきなのだ


「特等席なんだぞ 長次 お前だけのために鴇は一夜を共にしてくれる」

「……なん、だか 誤解、を生みそうな発言、だ」

「誤解なものか 私はお前が酷く羨ましい お前のことで頭がいっぱいの鴇を私は見ているしかないのだ」


長次の隣で胡坐をかく小平太が、小さく笑って頬杖をかく

それは普段のような屈託のないものではなく、少し複雑そうな表情であった


「私だってお前が大事で、心配だ 鴇を頼ったのだって心底お前を案じているからだ」

「……………」

「だが、お前と鴇を2人きりにするのが口惜しくてな 悪いが今夜は私もここに残る」

「………なに、も 心配することなど」

「そうだ お前と鴇の間にあるのは親愛のソレで、互いに純粋な感情しかない それでも私は嫉妬するのだ」


小平太の、目に映るそれは強い恋慕のソレであった

別段、長次に何か憎悪や悪意をもっているようなものでは断じてない

ただ、小平太の鴇に対する執着や欲が気を抜けば見えてしまいそうであった

小平太もはっきり自覚しているのだろう ふー、と大きく息を吐くが目に映る色は薄まる気配がない


「おかしいだろ?長次、親友のお前に何てことを言うのだと、私はちゃんと理解している」

「……小平太、」

「それでも、それ以上に私は鴇が好きなのだ」


祈るように、額の前で指を絡めた小平太の表情は見えない

ただ、その声は切実であった

私達は、6年間ずっと共に過ごしていた

恰好の悪いところも、見せたくないもの全て曝け出したこともあった

軽蔑するようなこともなく、気持ちにあったのは相手を想う感情ばかりであった

友が苦しめば寄り添い、手を差し出したし、時にはあえて見えてないふりをした

それが正しい私達の距離の取り方であったし、均衡を保つやり方であったから

いつからか、小平太が気持ちを隠せなくなってきたのは

普段から鴇を好きだと豪語するその一方で、小平太は吐いてはいけない感情のようにこうやって唸るように思慕を口にする

わかっているのだ

鴇が正面から小平太の気持ちを受けない可能性があることを

それは照れや純粋にそういった対象として見れないが故のものではなく、鴇がそういった感情に時折はっきりと蓋をするからだ

やり方を間違えれば、鴇は簡単に姿を消してしまいそうで

それでも鴇が欲しくて堪らない小平太はこうやって強い思慕の念を吐き出すように長次に告げるのだ

ただ、それに対してどうしてやればいいのか

今日の長次にはそれを考える余裕と体力がない

ぼうっと眉間に皺を寄せる小平太をウトウトと見つめていれば、ガラリと障子が開いた


「お、山盛りだな」

「まあ、いくらでも雪積もってるから溶ける心配はないのだけど 何度も離れるのもなぁ、って」

「鴇、私も布団もってきていいか?」

「そこに私のがあるだろ それでいいよ」

「…………」

「?小平太?」

「あ、いや お前は寝ないのか?」

「ん?うーん、まあ、適当に」


先ほどまでの様子を露ほども感じさせず、屈託なく笑う小平太を長次はぼんやりと見ていた

いつからこの友は、こんなにも感情を隠すのが上手くなったのだろう

そう思っていれば、ヒヤリとした氷嚢が長次の額にあてられた


「ゆっくり、寝なよ 何も心配しなくていいし、何も焦ることもない」

「……鴇」

「お前に遠慮されるのは、寂しいよ 長次」


少し困ったように、笑う鴇は長次へ気持ちをまっすぐと向けていた

小平太がいう、自分は今日は二の次というのがはっきりとわかるソレに長次は躊躇ってはいけないことを先ほど小平太から言われたばかりだ

小平太はああ言ったが、鴇はちゃんと小平太を想ってる

しかし、もうそんな柔らかいものばかりでは小平太は満たされないのだろう

鴇が自分の布団を使えと言ったことに対して、小平太が戸惑ったそれを鴇は気づかない

まるで拷問だと長次は思った

想い人のソレを纏いながら、穏やかになんて小平太は眠れないだろうから

鴇自身は小平太が言ったように自分の看病に徹するつもりだから布団を使う予定がないのだろう

些細なことのように言った鴇はとんでもない発言を小平太にしたということに気付かずに

ただただ、親友たちの難しいバランスで成り立っている関係を長次は憂う

しかし、見守るしかないのだろうし、今夜の自分はそれが課題ではない

心配そうに自分を見つめる鴇の頬に手を伸ばす


「…寒かった、ろう」

「はは、温かい」


抵抗することなくそれを気持ちよさそうに享受した鴇に長次は静かに目を閉じた

あと1年、どこまで進むのか拗れるかわからぬこれを一晩で解決なんてできやしないのだ


「……すまん、が 世話、になる」

「もちろん 次でてくとか言ったら、縛り付けるからな」


安心したように笑った鴇の笑顔だけを焼き付けて、長次は今度こそ深い眠りに入った

せめて自分のことをきっかけに、小平太が鴇と静かな時を過ごせればいい、そう願いながら






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