- ナノ -

小平太は暗闇のなかを駆けていた


ガサガサと、動くと葉が揺れそれなりの物音を立てたが、そこは気にすることなくただ駆ける


何度か人の気配を察知し、相まみえる度に容赦なく地に沈めた


どいつもこいつも粗暴な風体と雑な言動、これは良くないものだと小平太の勘は素直に告げ、それに従うように相手を排除する


此処に情は必要ない、小平太の判断は瞬きをするよりも速かった


少しでも迷って手を緩めようがものならば、それは少しずつ積もって最終的に自身の身の危険を招くだろう


それが自分にだけならまだしも、学園に残された後輩、そして鴇へと向かうのであれば絶対に逃すわけにはいかなかった


苦無に纏わりついた血と脂を布で拭い、更に低く姿勢を保って木々をかいくぐる


また1人地へと沈めた小平太は小さく息を吐いて口布を外した


自分の身体に、血の匂いが纏わり付く


鼻のよい小平太はそれに少し眉を潜めながら、遠い学園を振り返った



(鴇、)


ほう、と息を吐いて学園で待つ友へと想いを馳せる


最後に見た鴇の表情は、迷いこそなかったが、小平太自身の不安は拭えていなかった


頼りないなんて思ったことはない


鴇は強い


あの細腕から繰り出される技の数々は俊敏でキレがあり、その強さはよく知っている


六年間、ずっと真横で見てきたし、その身を以って納得しているのだ


あれは強い


私が捉えきれないスピードで攻撃を繰り出してくるのは鴇だけなのだ


そんじょそこらの野良犬風情があれを受け流せれるわけがない


しかし、鴇は優しい


優しすぎるその性格は、敵に対すれば容赦こそないが、仲間が絡めばグラリと揺れる



(それは、とても鴇らしい それでも、だ)



小平太は恐れていた


この戦いにおいて、一番優先してほしいと願うのは鴇の命だ


しかし、きっと鴇はそれは二の次なのだ


鴇が願うのは、仲間達の安否であり、安寧である


それを鴇は願い続けるだろう、己の身も振り返らずに


鴇は自分に価値を持たない


誰よりも魅力的で、誰よりも能力が高いと思うのに、鴇はそんなことを歯牙にもかけない


鴇は自分の周りだけを見る


それが絶対の理だと、鴇は信じているのだから


(そんな理屈で、私はお前を諦めたくないんだ)


別れ際に、鴇にぎゅっと握られた腕は未だに熱をもつ


この熱は、この熱だけは奪われたくない


だから小平太は今回も先陣をきることに拘った


鴇が自分を二の次にするのであれば、自分が鴇よりも前に出て、全てを薙ぎ払えばいい


鴇のところになんて、行かせるものか


あの穏やかな表情を、歪ませる存在なんて私が全て地に沈めてやる


耳を澄まして学園の方の気配を探れば、まだかなり静かなものである


どうやら三方に散らばった文次郎や留三郎も誰も学園への侵入を許していないらしい


やはり、敵が現時点で最も多いのはこの森だろう


罠も随分発動し、所々に断末魔に近い叫び声があがっていた


普段の訓練や委員会でもよく通るこの森が、今はまるっと一軍団を飲み込もうとしている


そんなざわめく森に不気味さを覚えないのは、小平太の信念に揺らぎがないからである


自身と森中に仕掛けた罠、そして竹谷の従える動物達


これらが、小平太が守備を任されたこの森の武力である


(まだ、敵の主格は見当たらない)


一息ついて周囲の気配を確認すれば、覚えのある気配がひとつ

張りつめていた殺気を解いてやれば、気配の正体が顔を覗かせる

灰色の山犬、竹谷の従える若い山犬だ


「お前も、足が速いな」


笑いながら手招けば、山犬が小平太を見て小さく鼻を鳴らす

それに小平太も笑って山犬の額を撫でた


「どうした、竹谷に私について行けと命じられたのか?」


問うて人の言葉がわかるのか、よくわからないが低い声を返した山犬を小平太がなで回す

獰猛な山犬も、小平太が相手では子犬のようである


「私なら問題ない、お前は竹谷を手伝ってやれ」

「………………」

「私は死なん 鴇と約束したんだ、絶対だ」


その自信の出所はわからないが、力強く自分を撫でる小平太に安心したのだろうか、山犬がぐるると喉を鳴らして低く頭を下げた

そして小平太からの指示を受け、踵を返そうとしたその時である

山犬の耳がピクリと動いたのと、暗闇に向けて小平太が苦無を素早く投げたのは








キンッ!

金属同士がぶつかる鈍い音が聞こえた後、地面に叩き落とされた小平太の苦無が柔らかい土にぐさりと突き刺さる

それに動じることなく、小平太は懐から新たな苦無を手に忍ばせる

目を凝らすまでもない、影は2つ 前方の木の上にある


「ひゃぁ、危ねぇ危ねぇ、千鶴、お前よくあんなの見えるなぁ」

「………………」


共に忍装束のようなものを纏っているが、背丈は随分と差がある

若い男と、一見するとまだ幼い少女

しかし、少女の方が落ち着きがあり、戦場に馴染んでいた


「油断、禁物」

「わーかってるっつーの 少しくらい遊ばせろぃ」


少女が小さな声で呟いたのを掻き消すように、色素の薄い髪の男が小平太を見てペロリと唇を舐める

外側へ跳ねた髪と、細身の体躯

どこか軽薄な印象を与えるその男は、見かけのとおり軽い口調で小平太に問うた


「よう、この先か?忍術学園ってのは」

「…………………」


歯を剥きだして唸る山犬を落ち着かせ、小平太はじっと男を見返した

小平太が音を発さないことに対し、男がノリが悪い奴とつまらなさそうにぼやく


「お前だろ?さっきからそこらへんの奴らの首切ってってんの いい腕じゃん、俺の相手しろよ」

「…お前は、鵺の仲間か?」

「あ?ああ、そうだよ 鵺の爺様の、」

「猿楽(えんらく)」

「はいはい、ごめんなさーい」


小平太の問いに答えようとした男を傍らの少女が押しとどめる

男が肩をすくめておどけて見せれば、少女は不満そうに溜め息をついてから続けて小平太に問うた


「嘉神鴇、何処?」

「聞いてどうする」

「………………」

「あー、ちょっと呼び出しってーの?鵺の爺様が」

「猿楽」


少女は聞きたいことだけを聞き、答えたくないものは口を閉ざすらしい

それは小平太だって同じだが、互いに得たいものが得られないわけでピリ、と空気が強ばる

それでも少女は譲る気がないと言わんばかりに小平太を見据えていた

しかし小平太だって答える気はない

小平太も黙って少女を見つめ返せば、少女がまた溜め息をついた


「黙秘 私、他、聞く」

「私は此処を通すつもりはないぞ」

「はいはい、だから殺り合った方が早いって コイツ捕まえて締め上げればいいじゃん」


手っ取り早く武力行使に出たいらしい男が木の上から地面に降り立ち、何かを腰から取り出した

暗闇の中、ジャラリと鎖の音が聞こえて、地面を叩く

ひゅん、と空気を斬る音が突如近くで鳴った

小平太が咄嗟に躱せば、地面に幾本もの鎖の後がくっきりと印付く


「猿楽」

「千鶴は手ぇ出すなよ コレは俺の遊び相手」

「………………」

「お前、返事くらいしろよな」


ひゅんひゅん、と鎖が風を何度も切る

挑発的に笑った男に小平太も視線を向ける


「さあ、楽しい夜の幕開けだ」


声高らかに上がった声に誘われるように、小平太も身を低くして苦無を構えるのであった

















ガキン、ガキンと金属同士の鈍い音が弾けあい、ビリビリと腕に振動がくる


「ほら、次行くぜ!」


その声に反応するかのように風を切るソレから身を逸らせば、やるじゃないかと男が口笛を鳴らす

ジャラジャラと、男の手には既に3本の鎖

まるで長次の縄標のように風を切って投げつけてくるソレは、当たっただけで致命傷を負う代物だ


「!」


正面からの攻撃を躱したものの、背後から戻ってきたソレに小平太が落ち着いて身を躱せば、再び男は嬉しそうに笑った


「良い反応!久しぶりじゃねぇの、こんだけ躱せる奴!」


手裏剣や苦無とは違い、縄標や鎖武器は根は敵の手元にある

1度放った男の鎖も、腕を引けば持ち主の元に戻ることは普段からの長次との鍛錬で慣れてはいるが、長次の縄標はあくまで相手の動きを封じるのが主目的であり、破壊ではない

ましてや、縄標であれば武器に繋がる縄を切るという選択肢も取りえるが、男のソレは鎖である

よほど狙って叩かなければ軌道が変わって予想のつかない方に跳ねるし、男のもつ鎖の先には分銅がついている

それは5年の尾浜勘右衛門がもつ万力鎖と同質のものであり、当たれば骨くらい簡単に砕けるのは容易に想像ができた

パラパラと、木の太い幹が抉れる様を一瞥して、小平太はまた男を睨んだ


「鵺の爺様もいい仕事くれたよな!そこらの道場や城を襲うより、忍者の学校の方が面白そうじゃん!」

「猿楽、無駄口、駄目」

「あー 五月蠅い五月蠅い 仕事はするんだから、放っておいてくれよ」


先ほどから聞いていると、少女の方は「鵺」の名を出されるのが嫌らしく、他の会話には口だしをしないが、猿楽が主の名を出せば強い口調で黙らせようとする

気が昂ぶってきたのを無理矢理鎮められるのは好かないのか、男は2度目は少女の言葉を取り合わなかった


「なあ、嘉神鴇って、どんな奴よ?」

「お前達に渡すような情報はない」

「固いこと言うなって、鵺の爺様から特徴だけは聞いてて知ってんだ 灰色の髪と、なかなかの美人だって」

「黙れ」


しばらく武器を交えていたこともあり、小休止のような間ができれば、男が小平太に問うてきた

鴇に興味をもとうとする猿楽の言葉はただただ小平太の不快を買うばかりであった

小平太が強く黙らせようとすれば、猿楽が何かに気付いたようにニヤリと笑う


「へぇ?本当にそんな美人なわけ?鵺の爺様のご執心とあれば、やっぱ」

「猿楽」

「…だぁからぁ!そう目くじら立てんなよぉ お前が爺様大好きなのわかったって」


また鋭く黙らせようとした少女にいい加減飽きたと返そうとした猿楽であったが、いきなり背筋を襲った寒気に驚いて鎖を顔の前に構える

一瞬で音もなく距離を詰めてきた小平太の苦無が、そこにはあった


ギンッ!!

「あっ…ぶね…!」

「なんで、鴇を狙う」


ギチギチと、鎖と苦無が押し合い軋むような音が鳴る

力押しは小平太の得意とするところだが、押し切れないところを見ると自分とこの男の筋力は意外と拮抗しているらしい

笑っていた猿楽も、今度は殺気を剥きだしにしてきた小平太に口元を引き攣らせながら問いに答える


「俺は鵺の爺様が何で嘉神鴇を連れてこいって言ったかは知らねぇし、知りたくもねぇよ」

「…だったら、」

「知らないから余計むかつくな あの他人に興味を抱かない爺様が、1人の男に興味をもった」

「………………」

「6年前の芽が、ようやく実を成らすと言ってなぁ! だけど、俺達は思うのさ」

「!!」


鎖と苦無が弾かれた一瞬の隙をついて、足下に垂れていた分銅を猿楽が蹴り上げれば、勢いのついたソレが小平太の側頭部に直撃する

その反動にぐらりと揺れた小平太の身体を猿楽の鎖が追う


「嘉神鴇とやらはどれほどの人間かとな!爺様に本当に会わせる必要があるのかどうか!」


力任せに小平太が腕を振れば、鈍い音を立てて鎖が跳ねる

勢いを失った鎖が、また猿楽の手に戻るのを男と距離を取りながら小平太はじっと見ていた


「見せてくれよ!爺様が執心するほどの価値が、嘉神鴇にはあるのかを!」

「勝手な言い分だな お前達はただ鴇を巻き込んでるだけだ」

「はは、そうだな それでも爺様の願いは絶対だ!」


男は真剣であった

知りもしない鴇を求めている、それが奴らの中心人物、鵺の要求だと言って

ボタボタと、小平太の側頭部から血が滴る

じっと相手を見つめ、一番聞きたかったことを小平太は問うた


「お前達は、鴇をどうするつもりだ」

「爺様の前に引きずり出す」

「それから?」

「それからは爺様の判断さ 用無しと判断すれば、」

「…判断、すれば?」

「殺すわな 普通」


冷たく放たれた言葉に小平太の瞳孔が大きく開く

そんな小平太の様子を見ながらも、猿楽は興味なさそうに言葉を続ける


「そりゃそうだろ 爺様は孤高の人だ あの人にとって意味のないものは不要なものだ」

「不要、だと?」

「そもそも、あの人が誰かに固執するなんて姿、俺達は見たくもないね」


肩をすくめた猿楽の言葉を、少女も黙って聞いている

それは同意か、判断はつかなかったが、大して意見に相違はないように見える


「だから、さっさと嘉神鴇の居場所を教えろよ 黙って差し出せば、お前達は見逃してやってもいいから、さっ!」


会話の終わりと同時に、猿楽の手から鎖が解き放たれる

再び放たれた鎖分銅が小平太に迫ったその瞬間、小平太は素早く3本の苦無を掌の中に取り出した

垂直に、そしてありったけの力でそれを振り下ろすように小平太が投げた途端、目の前に迫っていた鎖がかなりの勢いで落下した

よく見れば、苦無は鎖の穴をそれぞれ通しており、地面に縫い付けられている

それに猿楽は驚いた

あれだけのスピードで投げた鎖に、苦無の先端を通してきた小平太の常人離れした技量と胆の据わり方に

普通は躱すしかないそれを、正面から突破されたのだ

暗闇の中、目の前の忍のタマゴとやらが纏う空気は、そこらの忍びよりもずっと張り詰めていた


「お前達なんかに、鴇は絶対に渡さん」


瞳孔の開いた獣が、宣告する

それは絶対を促すほどの力強さを纏っていた


「鴇は逃げも隠れもしない それでも、私はお前達に鴇を会わせるつもりはない」

「へえ、何で?」

「お前が知る必要はないだろう」


一瞬で目の前の小平太が姿を消す

猿楽が驚いて鎖を手繰りよせようとしたが、鎖は地面に縫われ動かない

ちっ、と舌打ちした猿楽に、鋭い声が上がる


「猿楽!!右!!」

「!!」


突然上がった千鶴の声と猿楽が腕を上げたのは同時であった

周囲の木の幹を利用して、勢いよく距離を詰めてきた小平太の蹴りが猿楽の腕へと伸ばされる

反射的に抑えることなんてできるような勢いではなく、もろに食らいふっとんだ猿楽をそのまま小平太が追随する


「…っの野郎っ!」


倒れた先で無理矢理身体を捻って、間一髪で小平太が落とした踵から逃れれば、地面が割れた

その威力を間近で感じて嫌な汗が猿楽の額に滲む

気を一瞬そちらに取られれば、再び小平太の腕が猿楽へと降り注ぐ


「全部、私が駆逐する お前も、そこの女も、鵺も」

「は?」

「安心しろ お前達の理屈としても合ってるはずだ お前達は鴇には"不要"なものだ」

(…コイツ!)


小平太はすんなりと理解した

これは要らないものだ、と

鴇があれだけ心を痛め、自分を傷つけたというのに、こいつらはそんなことお構いなしだ

弄ぶように 嬲るように

鴇を苦しませたこれらには、何の価値もない

鴇があんなにも理解に苦しんだ元凶は、理解する必要がないものなのだ


(鴇 やはり、お前が優しすぎるんだ)


あの夜の真相なんて知ったことではない

あの夜の正しい答えを鴇は求め続けるが、そんな必要はない

こいつらに意思はない

これらはただ、自分の主の欲望を満たすためだけに動いている


(お前が、命を賭けるほどの価値なんて どこにもない)


それは小平太にとっては安堵できる答えであった

これならば、鴇が迷うようなことはない

あの夜のことは天災のように、忘れて鴇は前を向けばいい

鴇が大事なものを、何一つ差し出す必要はない

そうと決まれば小平太のやることは明確である

いや、初めから何も変わってはいない


「てめっ…」

「鴇の顔も知らないお前達が、鴇の何を理解できる」


まっすぐ突き立てようとした苦無を男がなんとか押し返す

小平太は強く短い息を吐いて、両手に力をこめた

ボタボタと、猿楽の顔に血と殺気が降り注ぐ


「お前達にくれてやれるような代物ではない あれは、私のものだ」 

「…これまた、随分御執心なことで」


冷や汗を掻きながらも軽口を続ける猿楽に、表情を緩ませず小平太が口を開く

松葉の装束を纏った小平太は、もはや一匹の獣であった

縄張りと、自らの信条を侵されることを絶対に許さぬ獣であった


「鴇は誰にも渡さない」


一切手を抜くことなく、小平太は苦無を握った手を真横に引くのであった














(くそっ!!)


竹谷八左ヱ門は焦っていた

次から次へと湧いてくる敵が、捌けなくなってきたのだ

力量的には何ら問題がない、ただ如何せん数が多すぎる


(一体、どんだけいんだよっ!)


空からは、鳥たちから敵の情報が山のように入ってくる

ガラガラと、鳴子も鳴っているし、敵を駆ってきた山犬達が次の指示を待って低い遠吠えを繰り返す

撃退も指示も伝達も一人で担うには限界がきていた


(七松先輩を呼び戻すか?)


ふと過った考えに、阿呆かと首を横に振る

もう随分先へと駆けてしまった小平太の先にも敵はいるだろうし、こんな小物達を相手にさせるには勿体ない

それは竹谷も重々承知しているのだが、そんな考えがちらつくほどには余裕がなかった

竹谷自身ももう随分敵を倒している、それなのに


「待て、桜、待て」


唸る山犬の首根っこを名を呼びながらほぐしつつ、竹谷はどうしたものかと唸っていた

じわじわと、防衛線が後ろへ、つまり学園の方へと押しやられている

相手にした数としては、1人で捌いていたことを考慮してもらえると十分すぎるものだが、結論から言うと押されてしまっている


(一度、立て直すか?)


犬笛を使えば一時撤退は容易だ

しかし、それを使うと相手が此方の居場所を辿ることも可能となる

考えたいのに周囲のざわめきはそれを許してくれない

そもそも、竹谷は戦術をたてることはあまり得意ではない

どちらかというと手足となってのびのびとやらせてもらう方が多いのだ

その時だ


「!桜っ!」


一瞬で竹谷の腕をすり抜け、桜が何かに飛び掛かった

竹谷がそれを目で追う前に、パン!と火縄銃の弾が目の前で弾ける

反射的に目を瞑れば、人が地面に臥す音と血の匂い

そして


「手が足りないなら、貸してやるぞ 竹谷」


ニヤリと笑った立花仙蔵が、竹谷の前に現れたのであった









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(立花、先輩)

(小平太は何処だ 竹谷)

(……地平線の彼方っす)

(やはりな まあ、こうなるのはわかっていた話だが)

(だったら、最初からもう少し人員割いてくださいよっ…!)

(そうがなるな 情報を全部よこせ もう一度、立て直すぞ)


33_貴方のための牙でありたい



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