- ナノ -

たった6年、されど6年

その長いようで短い年月に、私はたくさんの人と出会った

厳しくも優しい学園長と先生方、頼れる先輩、唯一無二の友、慕ってくれる後輩、そして私を支え続けてくれた雅之助

幅広い教養と、自身を守る術を学園は与えてくれた

それなのに、私はそんな学園を危険に晒そうとしている


私の軽率な行動で

私の勝手な泣き言で


「本当に、申し訳ありません」


深く、深く頭を垂れた鴇に学園長が静かに口を開く


「初めから、説明をせよ」と















頭を低く沈めたまま、鴇が重い口を開く

しばらくの葛藤はあったが、ここまで来たら白状するしかない

事の始まりは、皆が推測したとおり仙蔵との忍務であった


「いつも通りの忍務のはずでした」


1人で城内に潜入し、違和感に肌がピリと反応した

異常事態に気付くのに、そう時間はかからなかった

城主の部屋に進むにつれて濃くなる血の匂いと、廊下に斬り伏せられていた男達の姿

淀む空気には覚えがある

伏した男達の傷口を確認した時点で既に嫌な汗をかいていた

むせ返るような死臭に吐き気を覚えたが、こんなことで忍になれるかと自身を叱咤して歩を進めた

妙な緊張感と、酷い既視感に眩暈がしそうだ

込み上げてくる過去の恐怖を振り払うように扉を開けば、そこはあの夜の再来であった


「どこかで、もう忘れようと思っていました」


復讐を考えていたかと問われると、少なくとも在学中は考えていなかったとしか答えられない

鴇は自身の気持ちがわからなかったのだ

憎いかと問われれば憎いと答えよう

恨んでいるかと問われれば恨んでいると答えよう

大切にしていた者、生まれ育った家、全てを奪われたのだから


しかし、2度と関わりたくない、忘れたいという気持ちも確かにあったのだ

未来を生きろと雅之助は何度も私に言った

名も知らぬ敵をいつまでも追ってどうするのかと、

お前はまだ過去にしがみつくのかと


何度も何度も、繰り返すように私を諭す雅之助をお節介だと感じた覚えはない

雅之助が私を大切にしてくれいることは痛いくらいに感じていたし、私の目が揺れれば雅之助も傷つくことはわかっていたから

過去は捨てられない、あれだって私を象るもので、私の一部だ

それでいい、少しずつ


(未来を、みよう)


少なくとも、そんな気持ちはちゃんと持てていた

進路に悩んではいたが、決して自暴自棄になどなっていなかった

それなのに、

忍務で見た光景は、全く同じといっていいほど、あの夜のそれだった

どくりと心臓が嫌な音をたてて、その場に縫い付けられたように立ち尽くした

視界を赤く染め上げて、老若男女問わず無差別な死が転がっていて

圧倒的な暴力が、嵐のように訪れて、全てを薙ぎ払い、全てを奪った後だった

倒れる人達の顔が全て、私の記憶の人達に書き換わる

その場で一番幼かった者の表情を見た瞬間、込み上げた吐き気が押さえられず過去の記憶と共に零れ落ちる


「感じたのは、怒りではなく恐怖でした」










忍務から戻り、日常に戻って

委員会の仕事に友との会話、後輩達と時間を過ごす


(……………?)


6年間繰り返してきた生活なのに、何か違和感を感じた

笑っている自分をどこか遠くから見ている自分がいる

後輩達との会話が頭に入ってこない

友と視線を交えられない

感覚が鈍い

永遠と麻痺している、そんな感じ


"何か"が私を巣くった

"何か"が私を捉えた


その違和感の正体がわからないまま、自室に戻って眠りにつく

灯りを落として真っ暗になった部屋の中

訪れるはずの静寂は姿を見せず、私はその時ようやっと気付いた

自分の鼓動が、異常な音を立てていたことに

頭の中の警鐘が、鳴りっぱなしであったことに


目蓋の裏に焼き付いた赤が離れない

最後に見た幼き死者の顔がいつまでも過ぎる

喉を上ろうとしているのは恐怖だ

あの夜と同じ、恐ろしくてたまらなくて、それなのに喉にべったりと張りついくそれが、私に声のひとつもださせない

1人の夜が恐ろしくて、その日から眠れなくなった

誰かと添い寝など、できるような年でもなく

そんなことをしようがものなら、2度と立ち上がれなくなると思った

うつらうつらと微睡めば、あの夜ばかりが追いかけてくる

胃の中を常にグルグルと不安と恐怖が渦巻くようになり、食事は喉を通らなくなった

少量の食べ物さえ、これ以上の異物は要らぬだろうと身体が押し戻す

何とか活動するだけの熱量を欲して、兵糧丸を薬のように飲み干すのがやっとで、

飢えているのに私の身体は何も受け付けない


「あんな景色を2度も目の当たりにした瞬間、私の脳内は危険信号で満たされていた」


"3度目が来ないと、どうして言えるのか"


吐き捨てるように震えた鴇の声と、固く握られた拳が語る

鴇は恐れたのだ

この6年間で得た生活を、築いた人間関係を、全てまた根こそぎ奪われるのではないかと


「他人事ではなくなってしまった こんな近くで、こんな同じ惨状が私の近くで起こっている それが堪えられなかった」


気付いた時には行動に出ていた

過去から現在に至るまで、似たような事例がなかったかを調べ、自身の忌々しい記憶を引っ張り出して元凶を探る

過去の災厄を、掘り返すのは恐ろしかった

知りたいという気持ちよりも、恐怖の方が大きく上回っていたから

当時の自分が相手の実力をどれほど測れたのかは知らない

それでも、一族殲滅をされたのだ 知れた力ではないはずだ


町に繰り出して、情報をかき集め

なりふり構わず情報を漁る私は、酷く滑稽であっただろう

それはあまりにも衝動的だったと理解していたし、安易な行動は味方を危険に晒すと承知していたはずだった

それでも、止められなかった


「奪われるくらいなら、私が奪う」


何が正しくて、何が間違っているかなんて考えるのはやめにした

考えることから逃げたと言われても否定しない

だって苦しいのだ、あんな理不尽な暴力がまかり通るなんて

堪えられるわけがないのだ、大好きな人達が、私の周りからもう一度消えてしまうなんて


「私はもう2度と、大切な人を失いたくない」


失ったあの時の胸の痛みは、いつまでもいつまでも私に降り注ぐ

これ以上の痛みは、もう要らない

3度目の夜なんて、どう考えても私には乗り越えられない


「だから、お願いがあるのです」


震えの止まった鴇の声に、何か嫌なものを感じる

その気配を察したのか、学園長も何だと問う

大きく息を吸って、鴇が告げた


「満月の夜、この学園に私1人を残してください」


ざわつく部屋を無視して、鴇が告げる


「これはどう考えても、私がケリをつけるべき問題なのです」と













たすけて、という言葉の意味を、私達ははき違えていたのだろうか


「鴇」


鴇の後ろで並んで聞いていた小平太は思わず立ち上がっていた

呆然と鴇を見つめる小平太を、鴇がじっと見つめ返す


「鴇、私達が、信じられないのか?」

「違う、そうじゃない」


その言葉を想定していたかのように、鴇は今度はしっかりと小平太を見つめ返してそう答えた

それでも小平太には通じていない

悲しそうに揺れた瞳を、鴇は正面から受け止めた

そこに迷いはない、それにまた小平太がぎゅっと眉根を寄せる


「私、言ったぞ 頼れって 鴇も言った、たすけてって」

「そうだ」

「だったら!」


まだ1人で戦うという鴇に小平太が怒鳴る

沸々と込み上げる怒りと、背中を伝う冷たい汗が不快だった

鴇の目が定まっていることが恐ろしかった

まだ悩んで揺れている方がマシだった


鴇は覚悟をきめてしまっている

それは最悪さえも考えたもの

今の鴇は何だってする


(まるで、特攻でもするような)


気持ちは皆同じであった

現に仙蔵や文次郎達も険しい表情で鴇を見ている

今鴇が吐いた言葉は、友の信頼に対する裏切りにも思えるものであったのだ

そんな友の視線を一身に受け、鴇がゆっくりと口を開く


「後輩を、守ってほしい」


その鴇の言い分を、瞬時で理解した仙蔵がまた一層深く眉間に皺を寄せる

馬鹿めと舌打ちし、皆の代弁を兼ねて口を開く


「鴇、お前、それは酷く勝手な話ではないか」

「わかってる それでも、頼みたい」


要するに、鴇は学園の者を立ち会わせるつもりがないのだ

最前線には鴇自ら1人だけが残り、決着をつけるというのだ

たしかに襲撃相手である我々が事前に退避していれば、被害はないだろう

何て無謀で、何て恐ろしいことを口にしたのか

相手が何人で、どこから攻めてくるか何もわからないのに、鴇はそれでいいというのだ

どうして、横に並ぶことを拒むのか

口下手な小平太には頼らず、仙蔵は問い続ける

目の前の阿呆は、何故こんな結論にいたるのか


「私達は、友ではないのか?」

「友だ 友だから、頼まずにはいられぬのだ」


誤魔化しの利かない視線を正面から受け止めて、鴇は頑なに拒む


「私は忘れていない あの夜、あの男達が振るった太刀筋を、かなりの手練れであることを」

「お前なら勝てるというのか?」

「わからない でも、お前達が後ろにいるのなら、私は決して奴らを通しやしない」


鴇にとって、恐ろしいのは状況がわからないことだった

自分の知らないところで、大事なものが消えていくのは堪えられなかった

少なくとも、自分の信じる友が自分の大事なものを守っていてくれるのなら、自分はありったけの力で奴らを排除するだけなのだ

この学園には、友には、後輩達には指1本だって触れさせやしない

何か言いたげな友に何も言わせず、ただただ鴇は頭を深くさげる


「たとえ、この身が果てようと、」

「そんな我が儘、聞く道理ありません」


鴇の願い全てを否定するような言葉が、突然空気を裂いた

ガラリ、と扉が開いて、ズカズカと入って来たのは綾部喜八郎であった

その後ろで庄左ヱ門と彦四郎が睨むように鴇を見つめて立っている

学園長室の外で待機していたのは、四年生と下級生たちの忍たまであった

綾部喜八郎が不服そうに言葉を投げた


「私達は、籠の中の鳥じゃない」

「綾部、」

「愛でられるだけなんて、まっぴらごめんです」


ズンズンと部屋に踏み入る喜八郎を誰も止めない

先輩に対して何て物言いだといつもなら怒る滝夜叉丸も、強く鴇を睨んでいる

突然現れた喜八郎たちに、鴇は思ったより動揺していた


「私達、いつまで除け者扱いなのですか?」


ぐっと鴇の胸ぐらを掴みあげて喜八郎が問う


「下級生は、下級生には、下級生だから、そんな言葉、聞き飽きました」


まあ私達上級生の四年生ですけど、と綾部が間延びした声で加える


「五年生、六年生の先輩方は沈黙を守るのばかりがお上手で、私達はいつも蚊帳の外」


言葉では笑っていながらも、喜八郎の目は珍しく感情がこもっていた

ギシリと鈍い歯ぎしりが耳に届いて、仙蔵はあの感情に疎い後輩が怒っていることに気付いた


「私達、貴方を心配してはいけないの?貴方はあんなに私達を大事にしてくれたのに」


この十日間、五年、六年生は事情を把握しながら鴇の様子をうかがえていたが、四年生以下は全くの蚊帳の外であったのだ

取り残されている疎外感、鴇に会えない寂しさは簡単に募っていっただろう

そのなかでもあれほどべったりと鴇に甘えていた喜八郎の怒りは、小平太のそれをも上回っているのかもしれない

必要以上の言葉を紡がない喜八郎の口から、次々と溜まっていた怒りが零れ出る


「先輩が私達が大事と言うように、私達だって貴方が大事 貴方を奪おうという奴がいるなら、私は絶対許さない」

「……………」

「それなのに事情さえ説明してもらえない こんなの納得いくわけない」

「それ、は」

「しかも貴方はまた1人で消えようとしてる」


ぐん、とさらに強く胸ぐらを引き寄せて、喜八郎が鴇を睨む

またギシリと歯が鳴って、喜八郎が呻くように言葉を放つ


「死んで、花実が咲くものか」


その言葉に、鴇の目が大きく見開かれた


貴方の笑顔が好きだ

貴方の優しい声が好きだ

そっと撫でてくれる、その温かい指先が好きだ

私の話に静かに耳を傾けてくれる貴方が大好きだ


「私達を好きだと言ってくれるなら、貴方も傷つかないことを考えて」


たった十日間、貴方と離れただけで寂しくて仕方がなくて

貴方の姿が見えないと何もかもがつまらなくて


「私達はまだ子どもかもしれない、それでも忍のたまごです」


敵を欺いて、自身の身を守る術だって少しくらいもってる

ただ貴方が傷つくのをボケッと見てられるほど鈍感じゃない

ただ怯えて守ってもらいたいだけの腑抜けじゃない


「戦場に出る覚悟くらい、もう自分で決められる」

「あや、べ」


貴方から笑顔を奪った相手が憎い

貴方を傷つけた相手が、憎くてたまらない

気付いて、それはきっと私に限った話じゃないことを

気付いて、それは此処にいる誰もが思っていることだということに


「1人で納得しないで 私達の気持ちをおいていかないで」


普段は感情に乏しい喜八郎の眉がぎゅっと寄る

怒ったような、泣き出しそうな声が鴇を叱咤する


「命を、投げ出さないで」






喜八郎のその言葉に鴇は酷く狼狽えた

ゆっくりと押し返そうとしていた腕がピタリと止まり、途惑いに揺れている

鴇はズルズルと座り込み、自分の首に抱きついた喜八郎を抱きしめていいのか迷っているようだった


「私、まだ貴方と3年しか過ごせてないです」

「綾部、私は、」

「まだまだ、甘えたいです」

「私は、ね 綾部」


震える声で鴇が紡ぐ

それは喜八郎だけでなく、皆に伝えたい言葉


「お前達が、大好きだよ」


共にたくさん笑った

共にたくさん泣いた

それでもまだ足りないと、貪欲な私は叫んでいる

此処で終わりだなんて、私も思ってはいない


「残り1年、まだまだお前達と一緒に過ごしたいんだ」


屈託のない笑顔を見ていたい

キラキラと輝く目が眩しくて愛おしい

慕ってくれるお前達が、可愛くて仕方がない


(だからこそ思った)


お前達にあの景色を見せたくないと

忍を目指すこの道は、綺麗なものばかりではないと知っている


「ちゃんと戻ってくる、約束するよ だから」

(お前達は、あんな世界に触れないで)


数年もすれば、お前達も誰かを殺めるだろう

情報をもたらす忍は、誰かの血肉の上に立つことも珍しくないのだから

暴力と血と涙と、言葉にもできない酷い世界だってあるだろう

世界には綺麗なものとそうでないものがある

そして私達は綺麗ではないものを見ることの方が多いはずなのだから


(それでも、今がその時だなんて思いたくない)


まだ笑っていて

まだその目を輝かせていて

お前達の夢を、私に聞かせて

お前達が笑うだけで、私は心に確かな温かさをもらえるのだ

それは確かに、私を救ってくれるのだ


鴇に迷いはなかった

そして、もう一度喜八郎の肩を押し返そうと彼の肩に手をかけようとした時だ


「鴇」


学園長の静かな一声がそれを止めた


「お主の要望、受け入れるわけにはいかん」

「学、園長先生」


その返答への途惑いを一瞬見せたが、挑むような、感情を殺した声で問う


「何故、」

「何故?そんなことを言わせるのか」


随分間抜けな質問じゃと学園長が小さく笑う

それでも、鴇の目は真剣であった

曖昧な答えを、この忍たまは求めてなんかいなかった

それに応えるように学園長もゆっくりと口を開く


「お主の後輩達への気持ちを、そのままお主に贈ろう」


そう告げれば鴇の眉がぎゅっと寄った

駄目だそんなの、と小さく首を横に振る


「無関係な皆を巻き込めば、私きっと後悔する」

「お前1人の話では、最早ないことは理解しておるだろうに」


それでも嫌だと頑なに首を振る鴇に学園長がやれやれと溜め息をつく

昔からそうだった、この子は大人なようで子どものように酷く意固地になる時がある

そしてそれが時折見せる我が儘で、可愛らしいものだと思ったことだって覚えている


「皆は、巻き込まれたがっておるぞ 鴇」

「やめてください、」

「先生方だって、お主を放っておくつもりはこれっぽっちもないぞ」

「学園長先生、お願いだからやめて」


鴇だって痛いくらいに皆の気持ちが届いている

皆が上辺だけであんな言葉を放っていないことくらいわかっている

小平太の想いだって、綾部の怒りだって、ちゃんと届いている

それでも気持ちの整理がつかない

どうしても失いたくない

大事な、大事な人達ばかりなのだ

私には勿体ないくらい、素敵な者ばかりなのだ


「馬鹿息子」


溜め息混じりの声が降ってくる

視線をあげれば、いつも心配してくれていた2番目の父


「雅、之助」

「子を見捨てるような親に、儂はなった覚えないぞ」

「違う、いいんだ 本当に」

「鴇」


次、駄目だと言ったら拳骨だ、と雅之助がからりと笑う


「我が子を守るのに、許可なんて要らんはずだ」


友だって同じだ、と諭すような優しい声がモヤモヤとする心のなかにストンと落ちる

6年間、私を導いてくれた声

この声が、いつでも正しかったことを私は知っている


「困っている時くらい、素直に甘えてこい 馬鹿息子」

「……馬鹿なのは、貴方に似たんだ」

「そうだな いつの間に似たのやら」


大きな手が鴇の頭にポンと乗る


「助けを求めて、何が悪い 助けを求められて、応えたいと思ってお前は何を困る」

「それ、でも」

「お前はどこまで難しく考えるのだか」


ぐしゃぐしゃと髪を撫でられて、絡まっている気持ちもごちゃまぜになる

昔からそうだ、この子は誰よりも優しくて、頑固であった


「背負いきれぬから苦しいのだろう、お前が受け止めきれぬものを、代わりに儂らが受けてもいいではないか」

「それ、で」

「それで負う傷を、お前が責任を感じる必要はない そんなこと、儂らは望んでおらんよ」


お前が思っているよりも、儂らは頑丈でしぶとくできている

お前に心配されるほど、腕だって落ちてはいない

まだまだお前達よりは動けるさ、と雅之助が豪快に笑う

そんな言葉ばかりが温かく降ってきて、どうしようもなく涙腺が緩んで

抱きついたままの喜八郎の肩に隠れるように埋もれれば雅之助がからかうようにニヤリと口角をあげる


「今日は、出るもの全部出てるな 鴇」

「うる、さい」

「出してしまえ、涙も、不安も、恐怖も何もかも」


それからな、鴇


「それから、未来を生きる話をしよう」


そう真剣な声で放った雅之助の言葉に、鴇が今度こそ確かに頷いた

21_譲れぬもの



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