憎しみ


「…そうだったんだ。」

うつむく女性に私は言う。

「全て話してくれたから、こっちからも全てを言うよ。」

女性はゆっくり顔を上げる。

そして私の後ろを見て目を見張った。
次の瞬間には怒りに目の色を変えた。

「あの人はいつも周りに振り回された!!あの人はいつだって周りに大切なものを取られた!!……あんたたちに!!」

立ち上がり叫んだ。


先程は動揺していたためか、気付かなかったのだろう。
冷静になり、気付いてしまった。
画家を苦しめ、利用し続けた家族や親族たちに。

「許さない。絶対許さないわ!!あの人から絵も自由も希望も奪って自分達はのうのうと生きて!!」

お貴族様たちは普段声を荒げて責められることがないからか、完成にビビっている。
この場で女性を止められるのは立場的に私だけだろう。
だけど止めない。画家と女性の何十年にも渡って抱き続けた想いなのだから。

お貴族様たちには全てぶつけさせてあげる。
これくらいで済むことではないけれど。




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