妻の不機嫌さ溢れる言葉て静寂が破られた。 「何なのよ!!手品だかなんだかやってる暇はないのよ!!ふざけないで!!」 「暇はない?20年ほったらかしで?」 「………っ」 全くどんな思考回路してんのか。 「そう…あなたは20年ほったらかしにされたんだよね。」 女性の頭を再び撫でる。 女性は混乱した表情で私を見てくる。 説明しなくては。 「ここはあなたを描いた人と同じ世界。この世界からいつもあなたを描いていたの。聞きたいことがあってこっちに来てもらった……」 そこまで言って、こんな説明でわかるのかなと思って言葉がつまった。 しかし、女性は理解出来たようで、物凄い勢いで両手で私の両腕を掴み、縋るように言った。 「あの人はどこ!!あの人はどこにいるの!?ねぇ!!早く会わせて!!」 いきなりで驚いたが、あぁ、とすぐ理解できた。 “あの人”とは画家のこと。 「落ち着いて、あなたの知りたいこと全部教えるから。」 宥めると落ち着きを取り戻す。 お貴族様たちとは正反対、なんてどうでもいいことを思う。 「まずね、あなたの絵を手に入れた人が不幸になってるのはあなたが原因だよね?」 「はい。」 「人が不幸になるのは良いことではないよ。どんな理由があったの?」 女性は震えた声で言う。 「話…長くなりますよ。」 「いいよ。何時間でも聞く。」 躊躇いながら女性は口を開く。 [*前] | [次#] ページ: topへ |