笑顔の裏にはいつだって犠牲があることを

シオンに教えたのは紛れもないあの人


今となっては顔さえ思い出せないけれど。

違う。

思い出したくないから思い出せないんだ。

これから先ずっと思い出さなくて良い顔だと自分の何処かが認識してる

最低な人間だったあの人

客が喜ぶ顔が好き

と、言いながら腹の内ではどうすれば金がより多く舞い込んで来るかばかりを考えていたあの人

話題を作り、稼ぐためならばどんなことだってやったんだ

そう、サーカスを支える動物の命までをも賭けて

命が売り物にされていくのを見てられなかった
耐えられなかったから、あの人を殺した
あの人の喉をくちばしを刺して。

そして逃げた
サーカスは楽しいものだ
なのに、楽しくなかった
辛かった

そんなの見ても誰も笑顔にならない

ならば自分で笑顔になるサーカスを作れば良い



悲しいことに、あんな過去があったからこそ、この仲間に出会った
絶対にあの人に感謝なんてしないし、出会えてよかったなんて思わない
だけど、無駄ではなかったんだと言える


犠牲の上にしか幸は成り立たないのか

いつか、幸の上に幸が成り立つようになればいい




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