ピエロの成り方
口封じ
「警察へ行くべきです!時間が経たないうちに!」
「誰が信じてくれるって言うんだ!人間が鳥になって金を盗んでいっただと?寝言は寝て言えと話しなんて聞いてくれるわけがない!」
現実味がないから警察へ行くのをためらっていたようだ。
「そうですよ。警察なんて行かない方がいいですよ」
そう笑顔で言いながら二人の前に出て行った。
「お前…っ」
「警察どころか、誰にも言わない方が良いですって。変人扱いされるのが目に見えてます」
「てめえっ、返せ!」
次期社長が捕まえようと、襲いかかってくる。
「返せと言われても今持ってませんし」
次期社長は拳をあげる。左からくる拳にとっさに、手に持っていた鉄の棒を振り上げる。
「ひっ」
息を詰めるような声が聞こえた。ゆっくりと、拳が飛んでくるであろう左に視線をずらす。
「あっ」
思わず自分の口からも声が漏れた。振り上げた鉄の棒は拳の腕を串刺しにしていた。どうして良いか分からず、鉄の棒を引いた。棒が抜けた腕からは大量の血がボタボタと流れ落ちた。激痛のあまり次期社長はその場に蹲る。
自分が何をしたか、理解できずにそれを見ていたが、我に返った。この二人をどうにかしなければサーカスは作れない。
「あんなところを見られなければこんなことせずに済んだのに…」
棒を持ったままバルトロに近ずく。
「お前…最初からこのつもりだったのか!」
「違いますよ。良い金づるになれば良いなと思ってたんですから。盗むなんて、一度で終わりでしょう。でも、自由がなかったから。私はすべきことがあるから。」
「くっ来るな!」
「ならば逃げれば良い」
「…っ来るな!」
「ああ、逃げられませんか。毒を盛ってますからね。どんな毒か詳しく知らないんですけど、どうですか?」
「どっ…そうか、最近の調子悪いのはっ」
「多分そうでしょうね。私、暇じゃないんでそろそろお喋りいいですか?」
「来るなっ、やめっ…うぅっぐっ」
「えっ?」
バルトロは胸をかきむしる様にもがきだした。毒が本格的に回ってきたのか。なんともタイミングの良い。毒を買った時、バイヤーから言われた致死量ってやつをはるかに超えた量を盛ったから何もせずとも息絶えるだろう。
「じゃあ、あとはお前か」
振り向く先には腕を抱えて蹲り呻き声を出している次期社長。
「はっ、くっる…なぁぐ…」
「来るなと言って来ないと思いますか?そんな風に苦しむところ、見るの好きじゃないんで、あまり苦しまないで終わりにしてあげますね」
鉄の棒を持ち替える。髪の毛を掴んで上に引っ張り、首を晒せる。腕の激痛と腕からドクドクと血液が流れ出るため貧血状態というところだろうか、抵抗はしない。できないのか。
「やっ…め…」
「目を瞑ってください」
自分と反対側の次期社長の首の頸動脈を切った。
「はあっ…」
最期、叫びさえも上げなかった。あ、上げられなかったらしい。首から勢いよく血飛沫が舞う。
「まだか」
サーカスの団長は首だけではしばらく意識があり苦しんでいた。あいつはそれでいいが、こいつは苦しめる必要がない。
鉄の棒を再び握り直す。そして一気に頭部の左から右に貫通させた。痛みを感じる脳をやってしまえば痛みは感じない。ただ、痛みを感じる部分を刺せなきゃ意味がないけど。そこまではわからないからとりあえずこれで良い。今度機会があったら勉強でもしようか。
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