ピエロの成り方



進路確定

 こうして、“もうひとつの世界”に金と荷物を持ちこみ、身軽になった。

 ひとつ不便なことは、“もうひとつの世界”から戻るのは行く前にいた場所。戻る場所を選べないことだ。何が不便かって、戻る時、その場所は今どのような状況かわからないこと。昼が夜になっているかもしれないし、行く時は人がいなくても戻った時は人がいて見られるかもしれないこと。

 この“もうひとつの世界”は一体何なのかわからない。パラレルワールドかもしれないし、あの世に近いものかもしれないし、そもそも自分は湖に落ちたのだからもう死んでるのかもしれない。

 考えても答えが出ないことは考えるだけ損だ。ともかく、サーカスを作る準備が大きく進んだことには間違いない。

 これから、この国を出て、動物を扱うサーカスのショーを観て回る。そしてサーカスの団員にスカウトする。人間じゃなくて、動物を。人間なんて入れたところでどうせまた動物を物として扱うに決まってる。

 そして、副業も探さなくては。サーカスとして機能するのはまだ先だろうし、いろいろ用意しなければいけないし、自分の生活費もあるし、サーカスのショーを観るのだからかなりの額が必要だ。バルトロの金だけではすぐ底を尽きる。

 副業としては、暗殺なんてどうだろう?既に3人殺めてるし、暗殺される者はそれなりに悪行を重ねているはず。自分にはサーカスの次に適職だと思う。それに、どこかに勤務するわけじゃないから好きなように好きなところへ行けるし、単価が高い。

 明日は朝から鷹になって国境を超えるから早めに寝て体力付けておこう。長距離を飛ぶのは初めてだ。サーカスでショーの間飛び回るといってもたかが知れてる。天候も心配だし、他の鳥のテリトリーなんかに入らない様にしなければ。

 全てはサーカスを作るため。
 観る側も見せる側も笑顔になるサーカスを、作るんだ…

 観る者と創る者のサーカスを。
prev / next

[ top ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -