ピエロの成り方



プロローグ

 最初はサーカスの鷹だった。躾けられて、人間様の言う事を全うに聞いて動く人形だった。
 演目ごとに決められたルートで飛び回る。時には命がけで火の輪を潜る事もあった。
 毎日希望なんてなかった。最初のうちは脅えていたけど、もう脅える事にも疲れて、いつしか死ぬかもしれない恐怖も失っていた。
 自分はなんのために、自分は本当はどうしたいか、なんて考えもしなかった。
 そんな考え方すら知らなかったから。


 ショーが終わればすぐ檻に入れられ、他の動物たちなんて見えない。ただ、狭い檻で身動きできずに過ごす。視界には間近にある檻だけ。実際、自分がどんな姿をしているかも知らない。
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