ピエロの成り方



飼い鳥

 羽根についた座長の血が取れずに不愉快な日々が続いた。
 サーカスにいたせいで、自分で食べ物を得る手段も、何が食べれるかの判別もつかないい。

 しかし、死ぬわけにはいかない。
 サーカスを作るんだ。
 こんなところで死ねない。

 所詮飼われていた身、毎日与えられていた餌を食べていたからか、数日食べていないから体に力が入らない。

 どうにか自分が今まで食べていた物を見ていた記憶を頼りに探すけど、やっぱり何が口にしていいものか分からない。

 死ぬわけにはいかないのに…

 こんなところで…

 死への恐怖はないが、死ぬわけにはいかない。
 ここで、まだ何もしていないのに。


 判断力も虚ろになってきたまま飛んでいた。

 その時、いきなり強風が吹いた。
 風に抵抗する体力なんて残されているはずもなく、吹かれるまま流されていった。

 流れるその先には大木があった。避けきれずにまともに当たってしまった。全身に激痛が走った。

 ああ、まだ痛みを感じるんだ…

 なんてよくわからない事を思った次の瞬間、視界は泡につつまれた。湖に落ちたんだ。羽根が動かせず、息が出来ずに口から息が泡となって出ていく。

 焦る。焦ってもがいて余計沈んでいく。

 もう駄目だと思った。水面が遠ざかっていくばかりで、あそこまで上がっていける気がしない。

 生きる事を諦めた。

 だけど、サーカスは諦めなかった。

 サーカスは作る。
 笑顔を作るサーカスを作る。
 作り手と客が笑顔になるサーカスを。

 自分にしか作れないサーカスを作るんだ。

 生きていたいわけじゃない。サーカスを作りたい。


 すごく苦しくて、意識が遠のいていく中でその事だけを強く想い続けた。


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