吐精した直後の余韻を感じながら、雪男は燐の肩口に顔をうずめ、息が上がった燐も雪男の頭を抱きかかえるようにして身体をベッドに預けていた。たゆたうような感覚の中、全身の力が抜けきっては抱き締めるという表現もどこか不釣り合いだ。大きくはあ、と息を吐いた燐のその唇に雪男は触れるだけの口付けを落とし、その華奢な肩をぐっと抱き締める。すると、胸元にちくりと小さな痛みが走った。驚いて雪男が顔をあげると、少し恥ずかしそうに燐がその胸元に手を這わせていた。それは滅多に見せない彼なりの独占欲なのだろうか。何とも言えない気分になり、また自分の中心に熱が集まるような感覚を堪えながら、雪男もまた、燐の胸元に口付けた。

「んっ…ゆきお…?」
「僕は兄さんのだし、兄さんは僕のだよ」
「……な、なんだよいきなり」

 伸ばされた腕をそのままに受け入れ、雪男は身体を起こしてきた燐をぎゅう、と抱き締めた。燐の体温は高く、素肌同士が触れるその感覚は好きだと雪男は思う。何の隔たりもなく触れ、どこまでも相手の近くにいるのは自分だと実感することができるからだ。ぬくもりにどこまでも貪欲になってしまう自分の浅ましさだとか欲深さに思わず苦笑すら浮かべてしまうが、それでも自分は腕の中の彼を愛したいと思った。

「雪男」
「……?なに?」

 耳元で囁かれた言葉に雪男は驚きながら、それでも幸せだと思う気持ちが打ち消せない。

「ありがとう、兄さん」
「……ありがとうなんて、言ってもらうようなことは、別に」
「求めてもらえるのは、嬉しいから。そうやって、兄さんが僕を求めてくれるの、嬉しいよ」
「……う、あ…っ」

 胸元の突起を摘むようにして触ってやれば、燐は鼻にかかった声で小さく喘いだ。それがまた堪らなく愛おしくて雪男はまたその首筋、胸元に赤く紅を散らしながら燐の弱いところを責め立てる。

「あ、う……ゆき、ゆきぃ…」
「うん、かわいい」

 お願い、と強請る声に誘われて膝立ちの彼の腰をゆっくりと支えながらそのぬくもりを貪った。ひときわ高い声を出した燐の手はかたかたと震えていた。包まれる感覚にくらくらしながら、雪男は顔を上げ、自分に馬乗りになった彼の震えるまつげを目にしながら口付けた。燐の指先にも力がこもり、雪男の肩に添えられた手はもう震えてはいない。

「ひあ、あ…んう……っ」
「…、すきだよ」
「っれ、も…すき…すきだ、…」

 もっと名前を呼んで、と雪男はその胸元に触れながら強請る。もっと、もっとその甘い声で。君が欲しがるぬくもりならいくらでもあげるから、もっと欲しがって。
 そして雪男は、燐の胸元の赤い鬱痕にまた唇をよせた。


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