旧夢 | ナノ

▼テレンス:ゲームをしよう

「このゲームに負けたら貴女、私の人形になりませんか」
「嫌。」

となりで画面から目を離さずに不気味な冗談を言うテレンスはちょっと頭どーかしてるんじゃないの。
だから対戦相手がいないのよきっとそうよ。

「可愛く着飾ってあげますよ。」
「いやいやいや…」

音ゲー、レースゲー、シュミレーションをやりこなすテレンスは、最初は無心でやっていたくせに段々発言に比例してマジになってきてるらしい。

「ナマエが欲しいんです。」
「人形の私でしょ?」
「毎日お話してあげますよ。」
「嫌。」

スタンドを持ってなくても頭の中が「NO!」で埋め尽くされているのがわかるだろう。

「貴女ジズお好きでしょう。」

ジズはこの音ゲーに出てくる人形好きの幽霊キャラだ。
人形が好きだっていう設定を見て何処をどう勘違いしているのか私と共通点!とか考えているんだろう。
頭の悪いテレンス。馬鹿テレンス。思い上がり野郎。
音ゲーの対戦は普通に一人プレイするよりもやけに難しい。
苦戦しながら画面がBADを示して青く光ってばかりいる。私は負けるだろう。

「好きだけどテレンスはジズじゃないでしょ。」
「イケメンですよ。」
「いつからイケメンだと錯覚していた。」そもそもジズはイケメンなのか。
「兄の顔を見た時ですかね。私とアレではレベルが違う。」
「兄貴の方が好み。」

テレンスは画面を黄色で埋め尽していたのに、一瞬だけ青が走った。
ずっと高得点を出していたのにbadを出してしまい、彼のコンボが途切れてしまう。
けれど腕前は確かなもので妨害するシステムを使わない約束にも関わらず、やっぱり負けてしまう。
結構悔しい。

「ねえ普通にプレイしようよ。同じ曲で得点競うの。」
「いいでしょう。」
「そのうちアーケードもやろうよ。」
「いいでしょう。では明日デートに行きましょうね。」
「おっけー」

傍から見たら恋人のように見えるけれど、今まで何度と交わされた冗談だ。
少なくともそう思っていた。翌日花束を持ってテレンスが私の部屋へ来るまでは。


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