旧夢 | ナノ

▼承太郎:降服宣言

冗談で済まさない人種がいることくらいは知ってる。
私はてっきり『冗談で済まされない人種を装った冗談で済ます人種だ』が承太郎なんだと勘違いしていた。

「ナマエ、お前に拒否権はないぜ」
空条邸の承太郎の部屋。純和風のつくりの部屋にハーフがどっかりと鎮座しているのは、見慣れるまでは違和感があった。
承太郎にも花京院にも、それこそ皆に言って来た冗談は数多いが
「全員と結婚したい」くらいはどっからどう考えても冗談にしか捉えられないと思っていた。
言ったことすら忘れていた。
それを承太郎は旅も終わった今、なんでもない今日に蒸し返して
「その全員のうち冗談だと思わなかった俺だけが付き合いたいと思ってるんだ。それでいいだろ」とか言い出した。
承太郎の返事は嬉しいけど、別に求めて言ったわけではなしに、一体どうしたのだ、と当惑するばかりだ。

部屋の角に追い詰められて、もう本当に逃げ場がない。
承太郎の膝が私の足の間にあるもんだから貞操の危機すら感じる。
「旅をしている間はずっと我慢してたんだぜ」
私を逃がさないようにと壁についていた手はいつの間にか腰に回っている。
承太郎の端正な顔がどんどん近づいてくる。う、嘘だろ承太郎!

「じょっ承太郎!」
「何だ?」
「で、デートから始めるのがいいと思います!」

承太郎は喉で笑ってから立ち上がった。
その表情で理解する。承太郎は冗談だとちゃんとわかっていた。で、本気の振りをした。
そりゃそうだ。あの承太郎なんだから、ハッタリもフェイクもお見通しの筈だ。
とにかく承太郎から開放された私は
こんな簡単に切り抜けちゃっていいのー?と思うほどあっさりと自由を得て拍子抜けしてしまう。
承太郎は机の財布をズボンのポケットに突っ込みながら
「じゃあ水族館に連れてってやる。行くぞ」と言ってずんずん行ってしまう。
な、なんかご機嫌じゃん承太郎…。くそ、やっぱからかわれたんだ。

私は承太郎を追って承太郎の部屋を出た。


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