旧夢 | ナノ

▼ジョセフ:ポル連載ヒロイン

その日は日本のホテルに居た。たまたま、仕事でだ。
ジョースターさんもホリィさんに会うために丁度日本へ来ていたので、どうせだからホテルへお呼びした。
スージーさんはお友達とイギリスへ旅行へ行ったそうだ。いいなぁ。

夜になってやってきたジョースターさんはビデオを数本持って来ていた。
後で受験勉強中の承太郎も来るだろう。


午前へ差し掛かる時間。
二本目の映画に突入した頃にはポップコーンも尽きて、私はハーゲンダッツを食べている。
ジョースターさんは新しいコーラの瓶を開けた。
映画はターミネーター2。大ヒットしているし、私も何度も見た。
しかしもうビデオになってたなんて。


「わしは若い頃に、人造人間に会ったことがあるぞ」
「本当に?」
液体金属のターミネーターを見て、ジョースターさんがぽつりと言った。
私はジョン頑張れ逃げろ逃げろと思いながら、またいつもの冗談だろうと思って適当に聞いていた。
「ナチスの軍人でな、最初はは生身じゃった。」
「ふーん、あの鳥人間と戦った時の話?」
「そうだ。出会ったのは、シーザーが生きていた頃だ。」

シーザー。時々出てくる親友の名前だ。
私はその人のことも半分は嘘だと思っている。
一番信用していないのは究極生命体と、今の人造人間のところだ。
吸血鬼だってぎりぎりの範疇だろうに、見たこともない究極生命体なんて信じられるだろうか。
DIOだって滅茶苦茶強かった(らしい)のに、ジョセフじいちゃん一人で戦ったなんて想像もつかない。
若い頃はもっと強かったとか?スタンドもなしに。しかしそれでも元になった人物は居たのだろうか?

「その人造人間は1000と800とどっちに似てるの?」
「ナチスも流石に液体は無理じゃろ」
「その人今何してるの?ノルマンディーとかには参加したのかな。」
「さあのぅ。カーズと戦って以降あいつを見ていないからなぁ。」

「会ってみたい?」
私の問いに、ジョースターさんは考えているようだった。
T-1000がパトカーを追いかける所を眺めながら、私もそれなりに考えた。
その人はナチスの崩壊を見たのだろうか?

「ねぇこのT-1000ってさ、凄く格好良いよね。」
「何を。T-800の方が格好良いだろう」
「逆の話を見てみたいな。T-800が追跡者で、T-1000に守ってもらうの。」

私はこの映画の最後を考えた。この映画は何度も見た。
殆ど映像ごと覚えている。思い出すだけで熱いものがこみ上げてくる。
「でもT-800みたいに理解されたりしたりしないの。…じゃなきゃ」
「な、なんじゃもうお前泣いているのか」
ジョースターさんが手元のタオルを渡してくれた。
私が髪を拭いていたタオルだ。

私は話を続けようと震える声を正した。
「じゃなきゃ感情移入しないですむじゃない。」
「それじゃあヒットせんじゃろ」
「悲しすぎるよぅ…いっそ感情というものが確立されていない1000の方が気が楽ってものよ。
ところで、承太郎遅いね」

「承太郎は来んぞ?」
ジョースターさんはどうして?と言う様な顔でそう言った。
私は涙も引っ込んで同じくどうして?となる。
「いやいやいや、承太郎が来ないと私達二人っきりでしょ、スージーさん怒るでしょ」
「何、言っていないから平気じゃろ」
「秘密にしてきたの!?」
驚愕だ。だってそれじゃあ不倫みたいじゃない。所帯持ちのゴタゴタに巻き込まれるのはごめんだ。
「秘密と言う程でもないが」
ジョースターさんは笑いながらコーラをゴクリとやった。

「変に疑われても知らないからね。」
「エジプトへ行った仲じゃろうが。今更今更」

だから承太郎がいるか居ないかの違いが大きいんだってば。
ヒラヒラ手を振るジョースターさんに頭が痛くなる。

「お前さんこそポルナレフは来ないのか」
「ポルポルはフランスだよー。もういっそ秘密で通そうか。」
「秘密なのに通すとは変な話じゃの」

笑うジョースターさんに脱力しつつ、何も言い返さないことにした。
クレジットを眺めながら、結局見終わってしまったと思った。
まだまだ眠くはないし、この爺さんは良作を見終えた後の高揚感に浮かれている。

「よし、朝まで見るか!」とジョースターさんが
ゴーストバスターズとポーキーズ、ビートルジュースと娯楽映画を出してきた時点で承太郎に電話した。
わけを説明しても承太郎は「ウルセーぞこっちは忙しいんだ」の一言。
それから深夜に電話してきた事に文句を言って切られてしまった。

諦めて二人っきりで夜を更かしたけれど、ジョースターさんは朝になると飛行機に乗って帰って行った。
スタミナのあるじーさんである。


| novel top |


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -