旧夢 | ナノ

▼ポル連載後

初めてのチュウとかデートだとか、エジプトでの旅で色々吹っ飛ばしていたことに気がついた。
ポルナレフはもっともっと前から気がついていたようで、
ホリィさんに会って、暫く厄介になった後、じゃあフランス行く前に出かけるか、
という案に賛成してついていくと完璧なデートコースを組まれていた。
私でも良く知らないデートスポットへエスコートされる始末に
あんた本当にフランス人?と聞くとばーかお前の為にやってんだぜと返ってくる。
カップルの多い道、ムーディなレストラン、そして宿泊のためのホテル。
これからフランスへ行くことも考えるとソワソワしてしまう。
こんな関係じゃなかった。

「お前、ホント大人しいな。」
ポルナレフは上着をハンガーにかけながら、少しして思い出し笑いを始めた。
笑われることといったら今日はたくさんある。
デート始めのバラの花や、記念写真の取り方。
とくにレストランでポルナレフがドラマや映画でよくあるセリフで乾杯したものだから
私の調子は狂いっぱなしだった。それが面白かったのだろう。

ポルナレフのせいじゃないが、何かとてもフェアーじゃない感じがする。
ほんのちょっと前まで、私とポルナレフは友達だった。
シモネタでからかったり、意地悪されたり仕返したり、決して恋人らしくはなかった。
だからこんなにいきなり恋人扱いされても置いてきぼりをくらうだけだ。

「ナマエ、ほら落ち着けって。リラックスしろ」
ポルナレフは二つあるベッドのうち、片方に座り込む私の隣に座って、私の背中を撫でる。
個室、二人、ベッドの上。状況が整いすぎている。緊張がほぐれるなんてありはしない。
さっきよりも強張る私の肩を、赤ん坊を寝かしつけるみたいに優しく叩きながら、テレビをつけた。
ポルナレフはテレビをボーッと見ながら、ずっと私の肩を叩き続ける。

「俺もお前が緊張してると調子狂っちまうぜ。」
ポルナレフは続ける。
「お前が大人しいと意識しちまうんだよ。
俺達、旅が終わってから、承太郎達と居ない時はこんな感じだろ?」

言われてみればそうなのかもしれない。
妙に緊張してお互いがお互いを緊張させているのは事実だ。
かといっていきなり治るものでもない。

「じゃ、じゃあさ、どっか出かけよーよ。」
「馬鹿ヤローそれじゃ今までと変わんねーだろ。二人っきりでの会話に慣れりゃいいんだ。」
ポルナレフは思案する顔をしている。
私はポルナレフの腕の中で邪魔をしないように、彼の次の言葉を待った。
「それともあれだ、一発恋人としていくとこまでいっちまうか?」

ポルナレフの言葉に慌てて首を振る。一発って何よ一発って。
それでも冗談だとはわかっているので、ポルナレフの気遣いだったのだろう。
よくよく考えると、ベッドが二つある意味に気がつくべきだった。
ポルナレフがその気だったら、ダブルベッドの部屋にしただろう。そういうことだ。
別に貞操の心配をしていたわけじゃない。けれどその事実が妙に私を安心させた。
「ダブルベッドじゃないんだ。」
よかった、と言いかけた。
「なんだよ傷つくじゃねーか。」
「そのうちしようね。そのうち。」
「あんまり待てねーからな。」

ポルナレフはテレビのチャンネルを変えながら、寝転がった。
私はポルナレフを背もたれにして座りなおす。ぐえ、と声がしたのでもっと体重をかけた。


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