旧夢 | ナノ

▼仗助:体調不良

HRで担任が連絡事項を伝える。
いかにも事務的な内容をアナウンスした後、退屈なHRが終わった。

「ねぇだれかミョウジの家にコレを届けてくれる人居ないかなー!?」
クラス中に聞こえるように声を張り上げている。
ミョウジ ナマエ。クラスでも地味な女子だ。中学も一緒だから良く知っている。
一度も話したことねーけどよ。

億安も今日は用事があるーとか言っていたし暇だから、行ってやるか。
「ミョウジなら俺、家近いぜェー」
「ホントッ!?良かった!私これから塾だからどうしても今日は時間がなかったの!東方君オットコ前ねー!」

ああ、そういや明日小テストがあったな。
ノートとプリントを渡し、ヨロシクね!と言って走り去っていく。
元気だなーあいつ。

俺は渡された物を鞄に入れて真っ直ぐ向かうことにした。
途中仏頂面の露伴がドゥ・マゴで寂しくコーヒーを飲んでいたから気づかれねー様に足を早めた。

ミョウジを最近は殆どちゃんと見ていない。話もそういえばしたこともなかったな。
どんな顔だったっけなーと思いながら家だけはしっかりと知っている。
高校入学前に、家の近くの安いアパートに引っ越しているのを見たから、なんとなく印象に残っている。

インターホンを鳴らしてから鞄からノートとプリントを取り出しておく。
薄いアパートのドア越しに足音が聞こえてきて玄関がかちゃりと開いた。
あぶねーな、確認くらいしねーと殺人鬼だったらどうすんだ、と思ったすぐ後に思考が停止する。

制服だし、いつもの学校にいるような格好だが、赤く染まった目元とか、
ついさっきまで泣いていた潤んだ瞳がいつもの学校で見かける女子とは違う。
俺の中で何かが痺れた。

ミョウジはミョウジでボーッと突っ立っている。
何か言わねーと

「と、友達が…ミョウジの友達用事があるって言うからさ。
俺が届けに来たってわけで、明日数学小テストだから、ホラ、俺家ちけぇからさ」

矢継ぎ早に言葉を並べながら、無反応なミョウジが心配になった。

「何かあったのか?」

ナマエが小さく首を振る。その姿が男の本能って奴を刺激する。
俺じゃなかったら本当にあぶねーぞコイツ。
心配は心配だけど、ミョウジをよく知らねぇ俺が出来ることも少ない。

「そっか。なんかあったら言えよ。家、ちけぇからさ」

ああくそ、もう少しマシなこと言えねーのかよー!
俺はその場をすぐに離れようと思った。そのまま別れの挨拶をして家路に着く。
帰りながらミョウジの顔を思い出す。
妙に胸が締め付けられる。

あいつあんなに可愛かったッけか?それとも俺って泣き顔フェチってやつか!?
明日学校に来たらもう一度確認しよう、と思った。


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